難病の父「医療費払えない」2500円→80万円に 生活困窮外国人に医療相談会 在留資格打ち切り「氷山の一角」

外国人の相談を受ける長沢正隆さん(右から3人目)と大沢優真さん(右)=2日、群馬県内

 「在留資格が突然打ち切られ、重い難病を抱えた父の医療費が保険適用で月2500円だったのが80万円を請求された。払えない」。2日、群馬県でNPO北関東医療相談会・アミーゴス(後藤裕一郎理事長)主催の外国人向け無料医療相談会があり、埼玉県東部に住むパキスタン人の家族がこう訴えた。同会は「在留資格を打ち切れば、就労禁止で保険もない仮放免の外国人がこうなることは分かっているのになぜ。入管の措置を問いただし、改善を求めたい」と、抗議の声を上げた。

 同会は川口市や東京都清瀬市内など関東各地で外国人など生活困窮者の支援を行っている。相談会は、1997年6月の第1回から今回で67回目。この日、関東各地からスリランカ、バングラデシュ、パキスタンやアフリカのカメルーン、ナイジェリアなどの外国人約80人が相談に訪れた。

 迎えたスタッフは医師と歯科医師11人、看護師、英語やフランス語など7カ国語の通訳など。全員がボランティアで総勢約100人。

 相談に訪れた外国人の多くは難民認定申請中で、入管の拘束を一時的に解かれた仮放免の人たち。就労禁止で国民健康保険もなく、県境を移動する場合は入管の許可が必要だ。

 50代の父が難病のパキスタン人一家は2019年10月、家族6人で成田から入国。難民認定を申請しながら関東各地の支援者を頼って転々と移動し生活。これまでは就労が可能なビザ(特定活動ビザ、6カ月で更新が必要)があり、国保が利用できたため、消化器の難病の父親は病院で治療を受けてきた。

 その費用は自己負担なら月に80万円だが、指定難病で国保も利用し所得も考慮された結果、自己負担分は月2500円だったという。

 ところが23年10月、突然特定活動ビザの更新が打ち切られたことから全額自己負担となり、医療費が巨額になった。今年1月以来、病院に行っていないと訴えた。

 相談を受けたアミーゴスは、生活困窮者支援を行っている川口市内の総合病院に紹介状を書き、治療を託すことになった。しかし、1回35万円の注射代など高額な医療費をどうするかなど不安材料がある。

 アミーゴスの事務局長を務める長沢正隆さん(70)は「このようなケースは氷山の一角だ。仮放免などの困窮外国人の実態は、民間支援の限度を超えている。国が動いてほしい」と訴える。

 理事で生活相談担当の大沢優真さん(31)は「在留資格を打ち切れば、こうなると分かっているのに、入管が打ち切ったのは人権問題だと思う」と入管処分を批判する。長沢さんは「入管がどういう判断をしているのか問いただしていきたい」としている。

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