たった一晩で25万円がパー オンラインカジノにはまり勤務中もスマホに手が・・・ギャンブル依存症の相談急増

スマートフォンを手にギャンブル漬けだった日々を振り返る男性

 インターネットで金銭を賭ける「オンラインカジノ」にのめり込み、ギャンブル依存症の支援団体への相談が急増している。スマートフォンでいつでも手軽に利用できるため、20~30代を中心に多額の借金を抱えるなど深刻なケースも目立つ。支援団体からは、依存症対策を求める声が上がる。

 「やればやるほど興奮状態になっていく。負ける気がしなくなった」。広島県西部に住む会社員男性(38)は振り返る。

 きっかけは、新型コロナウイルス流行中の2020年のこと。妻は第2子の出産で里帰り中で、しばらく幼い長男と2人暮らしだった。「妻には内緒にしていた独身時代の借金があった。競馬とかスロットで約130万円。それを早く返さなきゃと思って」。スマホで借金返済法を探していてオンラインカジノが目に付いた。

 「登録するだけ50ドルボーナスゲット」などの魅惑的な文字。最初のプレーが無料になるものも。男性はバカラやルーレットなどができる複数のサイトに登録した。攻略法動画でユーチューバーが大金を手にする様子を目の当たりにすると「自分もできる」と錯覚した。

 子どもを寝かしつけるとすぐに没頭した。最初に賭けたのはわずか0・02ドル(約3円)だった。負けると取り返したくなる。賭ける額も徐々に増えていく。「勝負は1回30秒とか1分。どんどんエスカレートしていく」。気付くと朝4時。「もうけの25万円を一晩でパーにしたこともあった」という。

 勤務中にもスマホに手が伸びるようになり、体は疲弊していった。そして約1年後、妻に打ち明けた。「なんとかしないとやばい」。県の相談窓口や専門医を受診し、自助グループにもつながった。

 オンラインカジノなどでできた約70万円の借金を返済しながら、今も回復プログラムに取り組んでいる。「一日一日、今日もギャンブルをしなかったという経験を積み重ねるしかない」と自分に言い聞かせる。「一度はまると歯止めが利かない。それを知っておいて」と話していた。

 公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会(東京)によると、23年の相談件数は97件に上った。19、20年は10件に満たなかったが、21年に23件、22年には52件と急増。23年はオンラインカジノ以外のギャンブルも含めて479件あった。その約8割は、当事者が20~30代の若者で家族からの相談も多いという。

 米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手の元通訳水原一平容疑者の事件でもあらためてギャンブル依存が注目を集めており、考える会の田中紀子代表は「多くの人が正しい知識を持たないまま、24時間365日、いつでもギャンブルができる状態。国の啓発が全く足りていない」と危機感を募らせる。

オンラインカジノ
 日本ではオンラインカジノサイトにアクセスして金銭を賭ける行為は禁止されており、賭博罪(50万円以下の罰金または科料)または常習賭博罪(3年以下の懲役)が科せられる。広島県警は「誰でもどこでもゲーム感覚でできるため、違法性の認識が薄い」と指摘するが、海外サイトを介していることが多く特定に時間がかかるなどとして取り締まりの難しさもあるとする。

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