DENDEN株式会社代表 清本俊彦氏が語る、 BMCC6Kとクラウドを活用した効率的な動画制作ワークフローVol.03[Blackmagic Cinema Camera 6K Scene]

4月23日にシステムファイブPROGEAR半蔵門にて、DENDEN株式会社代表、清本俊彦氏を招いてのBlackmagic Cinema Camera 6Kのセミナーが開催されました。今回はその模様をお伝えいたします。

今回は清本氏とシステムファイブの山本隆太氏(通称:やまもん)に同カメラを活用した効率的なワークフローについて対談いただきました。

清本氏は制作会社、コンサルティング会社、広告代理店を経て、2021年にデジタルコンテンツ領域専門のコンサルティング会社「DENDEN株式会社」を設立され、2022年よりコンテンツ制作業務に特化した統合ワークフロー「DENDEN Advanced Cloud Studio(ACS)」を構築し、動画の収録業務から動画編集サービスまでの効率化と低コスト化、生産性向上、働き方改革などをテーマに活動されています。

DENDEN株式会社について

清水氏:

弊社は、映像制作やコンテンツ制作領域に特化したコンサルティング会社を運営していて、システムインテグレーションや大掛かりな内製化ができないというお客様に対しては、我々の動画編集サービスや収録代行サービスを提供する、いわゆる制作会社機能みたいなものがあります。特に我々がそのほかの制作会社と違うのは、お客様から様々な要望を受けたら、それに最適な機材とワークフローを作り、それをお客様と我々のパートで、パートナーであれば制作スタッフさんに提供して、1番低コストで1番効率の良い制作現場を作っていきます。そこが我々のユニークなところなのかなと思います。
なぜこういうことをやっているのかというと、映像コンテンツの需要がどんどん増えている一方で、コンテンツ制作現場って、結構長時間労働が状態化してしまったり、みんなで収録ファイルのSDカードを引っこ抜いて、それをバックアップするためだけに夜中にずっと作業をしたり、そういう作業を減らすだけで結構労働の問題って改善できますよねと僕らは言っていて、そこを改善、解決して、クリエイターさんにとってもお客様にとっても良い制作サービスを作るというのが僕らの目的です。

山本氏:

そこにBlackmagic Cloudをかなり活用してらっしゃると伺っておりますが、今日のお話の主軸になるBlackmagic Cloudなのですけれども、多分、(Blackmagic Cloudについて)1から100までスラスラと説明できる方って、そんなにいらっしゃらないと思うので、触りだけでもご説明できればと思います。

クラウド・5G時代のカメラセットアップについて

清水氏:

いくつか話すことがあるのですが、まず、クラウド・5G時代のカメラセットアップについてです。

山本氏:

かっこいいセットアップですね。

清水氏:

これは何なのかというと、今ここにまさにあるこのカメラのセットアップが、我々が運用中のCinema Camera 6Kのセットアップなのです。ここにはスマートフォンがUSBケーブルで1本ついています。そうするとインターネットにカメラが繋がるわけなのですけど、サムスンさんのSSDとかを使うとUSBポートが足りなくなるので、この代りに内蔵のカードスロットを使って、SDカードやコンパクトフラッシュを入れて運用するのがクラウド時代ならではのやり方かなと思っています。このブラックマジックさんのカメラにはWi-Fiの機能がないので、このカメラにスマートフォンを着けるのが基本的な運用ですね。

清水氏:

また、これに大げさなVマウントバッテリーとかケージとかつけちゃうと、こいつの良さがあまり活かされなくなると思うのです。様々なところに気軽に撮りに行けるのがメリットだと思うので、僕らの場合は大がかりなケージやリグをつけないで、カメラの上にハンドルのグリップをつけて、そこにいろんな便利な機材を集約しようということで今の形になりました。

山本氏:

めっちゃスマートですね。よく見るとここにマイクの受信機もくっついていて、モバイルバッテリーがここにあって、上にスマートフォンが載っているっていう。

清水氏:

実際の運用時のセットアップはこんな感じです。ちょっと箱が歪んでいるのですけど、小さく収まっていますね。こういう運搬時の利便性も僕は気にしているので、コンパクトなケースに、シネマカメラとレンズと一式が入るようにしています。

山本氏:

本当に効率を突き詰めていますね。こんなにコンパクトにされている方、なかなかいないですよ。

Lマウントとフルサイズのメリット

清水氏:

清本氏:Lマウントの良いところを私の感覚で申し上げますが、フルサイズの35ミリ換算のレンズですと、他社の同じマウントだと結構値段が高いですね。大口径レンズが30万円ぐらいします。ただ、シグマさんやパナソニックさんのLマウントのレンズであれば、結構手頃な値段で手に入るというのが、私としては嬉しいところです。

山本氏:

まあまあ高いですからね。

清水氏:

このシグマさんのレンズは、私も個人的に持っていたのですけど、この大口径の24-70mmが結構現場では使い勝手がいいのですよね。

山本氏:

大口径レンズは圧倒的に安いですよね。他のメーカーに比べれば。

清水氏:

これは東京の北の丸公園でサンプルをいろいろ撮ってきたのですけど、Blackmagic RAWで、シグマの70-200mmのF2.8をつけて撮りました。カメラ(Blackmagic Cinema Camera 6K)はクラウドに繋がっています。スマートフォンは5Gに繋がっているので、そこからプロキシファイルがどんどんBlackmagic Cloudへ野外から上がっていくというワークフローになっています。
なので、家に着いてからコンパクトフラッシュやSDカードを取り出して、それをまたクラウドとかローカルに上げていたりしていると、編集に取り掛かるまでの工程が多く、結構ストレスがあります。それがこのワークフローだと、家に着いたらそのまま編集できる。そこがBlackmagic Cloudの素晴らしいところですね。

山本氏:

このカメラで撮ってあげると、撮った収録ファイルがBlackmagic Cloudの方にバンバン上がっていって、すぐに編集に取り掛かれますね。

清水氏:

1点注意事項なのですけど、Blackmagic Pocket Cinema Camera 4Kではプロキシファイルを収録する機能がないので、Blackmagic RAWだけなのですよね。
Blackmagic RAWを野外で上げようと思ったら結構な時間待たなきゃいけないので、それは現実的ではないですね。こういうBlackmagic Cinema Camera 6KのようにRAWとプロキシを同時に収録してくれる機能を持っているブラックマジックのカメラがおすすめですね。

6Kならではの高解像を活かしたマルチカム編集

清水氏:

この6Kならではの解像度を生かしたマルチカム編集なのですが、先日、私がこのブラックマジックのクラウドについていろいろお話をしようということで、パンダスタジオの中村さんと対談動画を撮ったのですね。その時に使ったのがこのBlackmagic Cinema Camera 6Kです。かなり綺麗な画質で撮れるので、6Kで収録したものをこういう風にDaVinci Resolveのタイムラインで単純に複製して、バーチャルカメラみたいな感じでそれぞれインスペクタのスケールを変えるだけで、この1つのカメラのみでこういうマルチカム演出の対談動画が制作できるというのが面白いところです。

山本氏:

すごいですね。これちょっと面白いな。時間がある時にやってみたいですね。

清水氏:

これは普通のマルチカム編集の場合、物理的にカメラ3台で撮影するやり方だと、当然のことながら3台分の素材の同期が必要ですよね。でも、1台のカメラでBlackmagic RAWを1時間も収録すると、おおむね230GBぐらいのサイズになってしまうので、それが3つあったら、もう合計1TBとかそんなサイズになってしまう。プロキシ含めたらもう1TB超えちゃうみたいなワークフローになってくるので、現実的ではないかなと思います。
なので、この1つのカメラからバーチャルカメラを作るというやり方だと、1つの素材だけで済んでしまうのですね。さらに、1つの素材しかダウンロードしないので、通信帯域の負荷も少なくすぐにダウンロードできますし、プロキシも1本しか作らなくていいので、1本分の処理で済んでしまうのがメリットです。マルチカム編集というと結構大袈裟な案件になってしまうかと思い、僕はいつも編集の時に少しビクビクするのですけど、こういう風に1つのカメラからやればそんなに大したことはないです。

山本氏:

これ面白いですね。確かにこれは6Kのいいところですね。

Blackmagic Cloudとのファイル連携方法

清水氏:

その辺りのワークフローをもう少し詳しくご説明したいのですが、その前にちょっとしたデモをこの場でさせていただきます。まず、どんなことがこの裏側で起きているかというのを説明させていただきます。

山本氏:

スライド内のCloud Podって製品自体は小さい四角い箱なのですよ。そこにUSBタイプCのポートが1個か2個ぐらいついて、あと電源とLANポートがついています。要はLANを経由してMacとCloud Podが同じローカルネットワークの中に繋いでいれば、Cloud Podに繋がっているSSDとかがそのMacから簡単にアクセスして見られるというシステムです。それをBlackmagic Cloudにこう繋げておくと、繋げたSSDやSDカードの素材がクラウドの方にバンバン勝手に上がっていくっていうシステムですね。それを全部自動でやってくれるっていう機材です。

清水氏:

室内でファイルをダウンロードして、Cloud Podに1回ためておいて、その室内にいる人だったら、素材をみんなで共同編集できるという、いわゆるNASの機能を持っているのですけど、今は大きなファイルでない限りは、DaVinci Resolveにクラウドストレージが直接同期できるので、もうこのPC一つでどこでも皆さん(DENDEN社の提携編集スタッフ)と一緒に編集ができるっていうワークフローになっています。この図にある、まず今回はBlackmagic Cinema Camera 6Kの話なのですけど、BMCC6Kで、この撮影現場や野外でもスタジオでもいいのですけど、ここで収録したものを一旦プロキシだけをアップロードする設定にしているので、プロキシだけがインターネット経由でブラックマジックのクラウドストレージに上がってきます。
ただRAWファイルはすごく綺麗なのでそれも活かしたいため、それを家とかオフィスに帰ってきたら、もうそこにあるCloud PodにこのCF ExpressのタイプBをカードリーダーに挿して、さらにCloud Podに挿すだけでどんどんアップロードが始まっていくというワークフローになっています。これは他社製のカメラでも、SDカードやCFカードリーダーを介して、どんどんクラウドストレージに上げられちゃうというものなのです。

山本氏:

要は、速度の速いUSBタイプCのカードリーダーがあればほぼなんでもあげられるってことですね、ざっくり言うと。

デモンストレーション

清水氏:

このクラウドストレージに繋げて、カメラのマークみたいなのがあるのですけど、これをオンにしておきます。今カメラがWi-Fiに繋がっているのですが、試しに撮影してみます。

清水氏:

はい、もうこれだけです。今クラウドに裏側で上がっていて、このシネマカメラは今プロキシだけが同期する設定にされているので、プロキシだけが見事に上がります。

山本氏:

もう来ましたね。これですね。

清水氏:

こういう風にすぐに表示されてしまうのですね。さらに、これを別の機器を用いてタイムコードで同期する必要もないと。

山本氏:

こういう風に今収録したものがもうタイムラインで再生できるのは、iPhoneの時計がタイムコードとして実はカメラ側に流れ込んできているからです。例えば全部、Ctrl+Aかなんかで一気に全部選んで、そのタイムコードをもとにタイムラインに挿入するみたいなコマンドがあります。それを選んであげるとタイムラインに素材が一気にタイムコード順に並ぶので、どれがどの素材なのかっていうのも時系列で一目瞭然でわかるようになるのです。

清水氏:

そうですね。なので、普通のシネマカメラとかBlackmagic Pocket Cinema Cameraとかをそのまま運用すると、時刻のタイムコードが出ないじゃないですか。それがスマートフォンと同期することによって、インターネットで時刻ベースのタイムコードが使えるようになるので、仮に皆さんが撮ったiPhoneのBlackmagic Cameraアプリで撮ったものと、これを同期するっていうのが1発でできちゃうということですね。なので、こういう立派なカメラはもちろんですけど、マルチカム撮影として、他の撮影スタッフが他のカメラやiPhoneで撮っても、DaVinci Resolve上でタイムコードが1発で同期できてしまうっていう面白いシステムになっているのですね。

山本氏:

タイムコード順に並ぶというのが、素材整理を非常に簡単にできるという、まさに僕はこの前のNABの時にタイムコード機能がめちゃくちゃ便利やんと思ったのですが、これは素晴らしいですね。もういろんな人にやってほしいですね。

清水氏:

これ今はプロキシしか上がってないわけですけど、プロキシでも結構な品質なのですよね。なので、RAWで本当に収録・編集しなきゃいけない案件だと、ちょっと処理が重くて納期に余裕を持たなきゃいけなかったりすると思うのですけど、もはやこの品質であればプロキシだけでいいかなって。

山本氏:

そうですね。プロキシは8ビットのH.264ぐらいで書き出されるのですけど、4:2:0の8ビットH.264なので、いわゆる、H.264の画素というか、品質は担保されているのですよ。だから、究極的には「撮って出し」でいろんな編集さえいらなければ、ベースがBlackmagic RAWなので、LUTを載せてあげなきゃいけないっていうのはあるのですけど、もちろんブラックマジックの素材なので、DaVinci Resolveの中には標準で必要なRec709のLUTは入っていますから、それだけでちょっとシネマっぽい感じのインタビューが超簡単に出せるのです。

DENDENが採用している関連製品

清水氏:

これは宣伝というか、弊社で採用している機材なのですけど、主にサムスンさんのSDカードやSSD(ITGマーケティング株式会社様 提供)を採用していて、 Pocket Cinema Cameraであれば、512GBとかのSDカードを挿せば、結構大容量な収録はできますし、何十万円もするというものではないので、結構お安く、ワークフローが組めるというのと、このサムスンさんの面白いところは、ちょっと速度は落ちるのですけど、8TBのポータブルSSDもあるので、これも他社に比べるとそんなに高くはないのですけど、これをCloud Podに挿しておけば、8TBのファイルが保存できます。

山本氏:

Cloud Podにこれを挿しておけば、8TBのNASストレージができるってことですからね。これもね、結構やばいこと言っていますね。

DENDEN Edge MDC Business(映像制作に特化したマイクロデータセンター)

清水氏:

あと、これは余談なのですが、僕らが今面白いものを作っていまして、これはまだ中身が公表できないのですけど。

山本氏:

はい、わかりました。

清水氏:

弊社は先ほどの説明でもありましたが、オフィスで運用しているMac StudioやCloud Store、Cloud Dockを組み合わせて、マイクロデータセンターみたいな形で素材ファイルを運用しようと思っています。10インチの機材が縦に10個入るような、こういうサーバーラックみたいなところに、Cloud Dock 2がいくつか入っていて、そこに仮に8TBのSSDを全部挿せば、一応理論上は48TBのNASを作れます。

山本氏:

8TBのSSDを6台繋げられればということですね。

清水氏:

これのいいところは、Cloud Dockって、要は1つ1つSSDが入っていて、1つのRAIDでファイルを同期しているわけじゃないので、あんまり考えたくないのですけど、仮にCloud StoreやCloud Store Miniが壊れてしまったら、もう一気に使えなくなりますよね。ただ、Cloud Dockであれば、これを引っこ抜いて別のCloud Dockに挿せば、また同期を再開できるように設定することもできます。

山本氏:

サイズも効率化していこうということですね。

清水氏:

いわゆるマイクロデータセンターとか、今流行っている言い方なのですけど、それを我々がBlackmagic Cloudに対応したマイクロデータセンターというのを作っているのです。3ヶ月後とかに公表できるかなと。

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