社説:自動車認証不正 業界を挙げ根絶策示せ

 またか。日本車は大丈夫なのか。国内外の多くの利用者は、憤りと不安を感じていよう。

 自動車など大手5社で、大量生産に必要な「型式指定」の認証手続きに不正が判明した。計38車種で500万台を超えるという。

 トヨタ自動車、マツダ、ホンダ、スズキ、ヤマハ発動機という名だたるメーカーのトップらが謝罪したが、長年はびこる悪弊を業界ぐるみで放置してきたとみられても仕方ない。責任は極めて重い。

 各社は原因や経緯など実態を解明し、うみを出し切るとともに、再発防止と信頼回復へ抜本的な改革に取り組まねばならない。

 各社とも車の安全性に問題はないとしているが、国土交通省は生産中の6車種は出荷停止を指示し、きのうトヨタ本社などを立ち入り検査した。厳しい検証と指導を求めたい。

 特に深刻なのは、最大手として業界を主導し、日本の基幹産業を代表する立場のトヨタだろう。

 2022年以降、日野自動車、ダイハツ、豊田自動織機とグループ内で、認証検査での不正発覚が相次いだが、「トヨタ本体は大丈夫」という前提で対策を進めてきた。それが崩れ、豊田章男会長は「ブルータスおまえもかという感じ」と述べたが、当事者意識を欠いたところはなかったか。

 今回の発覚も内部通報ではなく、グループ会社の不正を受けて国交省が1月以降、「通常は国側に提出する必要がない書類まで精査させた」からという。

 ダイハツの不正では開発優先による現場の過剰負担が指摘され、トヨタは「風通しのよいグループへの変革」を掲げたが、問題の根深さを示した形である。

 型式認証は、メーカーが車の安全性を自ら検査し、そのデータを提出することで、同じ型式の車の生産について国からお墨付きを得る仕組みだ。各社は「国の手順書に基準がなく現場レベルで独自解釈をしてしまった」とも説明するが、法規の逸脱には変わりない。

 トヨタは安全に関する試験で虚偽データ提出など、7車種で約170万台。ホンダは09年以降に実施した騒音などの試験で、延べ435万台に不正があった。マツダは14年以降に生産した約15万台の衝突試験などで不正が分かった。

 国内労働者の1割近くが自動車産業に従事しているとされ、地域経済に影響も大きい。業界を挙げた不正根絶策が欠かせない。メーカーに委ねる認証制度の在り方も含め、国の対応も問われよう。

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