MLBで“戦力外”となった韓国投手、獲得申し出なく「マイナーリーガー」に 母国復帰できず試練の時

獲得を望む球団は現れなかった。したがって、現在の身分は「メジャーリーガー」ではなく「マイナーリーガー」となった。

マイアミ・マーリンズの40人ロースターからDFA(事実上の戦力外)となった韓国人投手コ・ウソク(25)の話だ。

マーリンズは6月5日(日本時間)、コ・ウソクの所属先が傘下マイナーAAAのジャクソンビル・ジャンボシュリンプに移ったことを発表した。

これにより、コ・ウソクはMLB球団所属ではなく、マイナーリーグ球団所属となった。

韓国にも戻れないコ・ウソク…マイナーで試練

マーリンズは5月31日、コ・ウソクをDFAとしたことを発表した。

このため、コ・ウソクは1週間でマーリンズ以外のMLB29球団からクレーム(獲得申し出)がなければ、フリーエージェント(FA)として市場に出るか、マーリンズ傘下のマイナーリーグ球団所属になるしか手段がなかった。

しかし結局、コ・ウソクを望むMLB球団は現れず、コ・ウソクは傘下マイナー所属選手となった。

コ・ウソクはジャンボシュリンプで7試合(9回)を投げ、防御率3.00を記録した。今回、1週間ぶりに再びジャンボシュリンプに戻ったことで、当面はAAAのマウンドに上がる見通しだ。

もちろん、MLB再挑戦の道が完全に閉ざされたわけではない。AAAで活躍を見せられれば、MLBの舞台に上がることはできる。

ただ、マーリンズの40人ロースターから外された状況であるため、昇格のチャンスを得るには誰かを追い抜いて上がらなければならない。

(写真提供=OSEN)コ・ウソク

コ・ウソクはMLB挑戦1年目から激動の日々を送っている。

今年1月、劇的にサンディエゴ・パドレスとの契約に成功し、太平洋を渡ったコ・ウソク。パドレスと2年総額450万ドル(約6億4000万円)の契約を結んだが、契約2年目の来年にはマイナー拒否権がある。5月4日、パドレスからマーリンズにトレード移籍した際も、契約内容はそのまま受け継がれていた。

すなわち、翌年になればコ・ウソクはマイナー拒否権を行使できた。ただそもそも、MLBに昇格しなければ拒否権も行使できない。

今のコ・ウソクにとってベストなシナリオは、AAAで活躍してMLBに昇格し、そこで自身の価値を認めてもらうことだ。2025年シーズンの開幕をMLBで迎えられれば、マイナー拒否権によってMLB生活を続けられる。

一方で最悪のケースは来年までマイナーに残留することだ。

これを考慮して韓国に戻ることも考えられるが、まず2024年内に韓国に戻ることはできない。

今回のMLB進出によって、コ・ウソクは今年2月14日付で韓国プロ野球KBOリーグで「任意脱退」の身分になった。「任意脱退」となった選手は1年間、KBOに復帰することができない。

(写真提供=OSEN)コ・ウソク

なお、コ・ウソクは昨年3月のWBC前、とある韓国メディアとのインタビュー内で大谷翔平(29、ロサンゼルス・ドジャース)との対戦可能性を問われた際、「真ん中に投げて(大谷が)ホームランを打つのかという考えが先に浮かんだ。本当にいざマウンドに上がったとき、投げるところがなければ、痛くないところに当てなければならない。(塁に)出して、次の打者と勝負する」と発言したことが“故意死球”を示唆すると捉えらえ、日韓で大きく批判が広がったことがあった。

ただ、コ・ウソク自身はその後、別の韓国メディアとのインタビューで「(最初は)“真ん中に強く投げたい”と話したら、(当時の記者から)“もう少し面白く話してほしい”と伝えられた。誤解の余地がある発言をしたことは自分の過ちだったが、ただの一度も“誰かにわざと当てろ”と野球を習ったことはない。それが一番悔しい」と、当時の発言に誤解があったことを告白していた。

◇コ・ウソク プロフィール

1998年8月6日生まれ。韓国・仁川出身。身長180cm。韓国のプロ野球選手。高校卒業後の2017年にLGツインズでプロデビュー。2019年シーズンに韓国プロ野球KBOリーグ史上最年少30セーブ(21歳1カ月7日)を達成すると、2022年シーズンには42セーブでセーブ王に輝き、韓国プロ野球史上19人目の通算100セーブに到達。2024年1月にサンディエゴ・パドレスと契約するも、開幕直前にロースターを外れ、メジャー昇格がないまま同年5月にトレードでマイアミ・マーリンズに移籍した。韓国代表としては2019年プレミア12、2021年東京五輪、2023年WBC、杭州アジア大会に出場。2023年1月、元中日ドラゴンズのイ・ジョンボム(李鍾範)の娘で、イ・ジョンフ(サンフランシスコ・ジャイアンツ)の妹であるイ・ガヒョンと結婚した。

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