NISA<1>高まる投資熱、利用者右肩上がり 口座数は9年で12倍 非課税枠拡大で加速

新NISAについて語るファイナンシャルプランナーの岡田佳久さん=神戸市中央区

 投資で得た利益の課税がゼロになるNISA(ニーサ、少額投資非課税制度)の利用者が、増え続けている。2014年から始まり、23年末の口座数は9年間で2.7倍に、累計買い付け額も同様に12.3倍になった。24年1月からは非課税投資枠の拡大や非課税期間の恒久化など、優遇措置の手厚い新制度になり、利用増が加速している。

 ### ■制度拡充で3倍に

 NISAは家庭の資産づくりの支援や、経済成長のための資金供給の拡大を目的に、政府が14年1月に開始した。金融庁によると、NISA口座総数、累計買い付け額は伸び続けている。

 口座総数は14年末の約825万口座が、23年末には約2263万口座に。累計買い付け額は14年末の約2兆9770億円が、23年末には36兆6860億円になった。

 さらに24年1月から新制度になり、株高も影響して利用増に拍車がかかる。日本証券業協会(東京)によると、大手証券会社10社の24年2月のNISA口座開設件数は約53万件。23年1~3月の1カ月平均約18万件の約3倍になった。

 ### ■投資未経験者も続々

 新NISAの需要を後押ししているのは、近年の国内外の株高だ。物価が上がる中、日銀の金融緩和策による低金利を受け、定期預貯金では金利がほとんど付かないことも影響している。

 投資未経験者の利用も増えている。

 日本証券業協会によると、全証券会社を対象にした調査で、NISA口座開設者に占める投資未経験者の割合は、「一般NISA」は14年末時点で15.6%だったが、23年9月末には52.9%を占めた。長期の分散、積み立て投資に適した投資信託などを対象商品とする「つみたてNISA」にいたっては、同月末に90.9%に上った。

 金融庁の22年末時点のデータを基に、口座数を年代別(10歳ごと)の割合で見ると、一般NISAは70代(21.3%)、60代(20.9%)、50代(18.2%)の順に高かった。一方、つみたてNISAは30代(28.5%)、40代(24.8%)、20代(19.5%)と続いた。

 つみたてNISAは、投資をしたことのなかった若い世代が、長期間の運用を見据えているケースが多いとみられる。

 ### ■元本割れのリスク低減のために

 NISAの対象は株式や投資商品なので、元本割れのリスクがある。金融庁は資産や地域を分散し、積み立て投資を長期間続けることで、元本割れする可能性が低くなる傾向があるとしている。

 神戸市に事務所を構えるファイナンシャルプランナーの岡田佳久さん(47)は「低金利の中、物価が上がっており、お金を持っているだけでは価値が目減りしていく。投資初心者がこれから始めるなら、目先の値動きに一喜一憂せず、5年、10年と長い目で見ていくことが必要。家計を見直し、余剰資金をつみたて投資枠で使うのがいいのではないか」と話す。(斉藤正志)

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