『ブルーモーメント』“上野”平岩紙の身に起きた悲劇 真相を伝える役割は“丸山”仁村紗和へ

SDMの正式運用まで話さないつもりだったという秘密を晴原(山下智久)に告白する上野(平岩紙)。5年前の豪雨の夜、あの公民館で何があったのか。その時の出来事をSDMメンバーたちに話す上野だったが、肝心の“灯(本田翼)はなぜ公民館を離れたのか”という優吾(水上恒司)からの問いに答えようとしたタイミングで、晴原がそれを止める。晴原が探しつづけていた真相は、自ずと次回に持ち越しとなるのである。

6月5日に放送された『ブルーモーメント』(フジテレビ系)は第7話。今回SDMメンバーたちが直面する気象災害は、積乱雲の下で発生した海上竜巻と、その積乱雲によってもたらされる5年前と同等の規模の集中豪雨を巻き起こす線状降水帯。そしてその豪雨によって地盤が緩むことで発生する土石流。いずれも命に関わるこの3つの危難は、それぞれが独立して起こるのではなく連動しているもの。とりわけ“線状降水帯”というワードを頻繁に耳にするようになった昨今では、たとえ都市部であっても決して他人事ではないだろう。

それでもドラマとしてこの3つをひとつのエピソードのなかに集約させるにあたり、それぞれ異なる描きかたが選ばれていく。まずは海上竜巻によって救助を必要としている気象観測船とのやりとり。指揮車両のなかから晴原は、5年前に灯が公民館で人々に呼びかけていたのとほぼ同じ言葉を用いて気象観測船の船長(この声は津田健次郎だ)を励まし、海上保安庁の巡視船が近付いていることを伝える。パソコンに向かう晴原と、火災が起きて緊迫した現場とのやりとりが“音”だけで表現され、通信が途絶えた際の半ば絶望にも似た沈黙も、救助を完了したという連絡の“音”によって破られるのだ。

つづいて集中豪雨の現場では、発生した土砂崩れによって取り残された住民の救出にあたる優吾と汐見(夏帆)にフォーカス。もちろん刻一刻と迫る次なる土砂崩れの危険性を予測する晴原の姿がそこに重ねられるわけだが、直接的に土砂崩れを見せることはせず、現場の緊張感だけを掬いとる。また、ハザードマップで警戒区域にギリギリで指定されなかった“ボーダーエリア”にも注意を払うため、地形を読むスペシャリストである山形(岡部大)が動く点も然り。まさしくSDMの総力が結集して、ひとつひとつの事象に立ち向かう様が描かれていき、それは次の段階で介護施設の救助のために備えていた沢渡(橋本じゅん)が登場することで完成するのだ。

こうしたチームの結束力が強まり、かつそれが現場での救助に存分に役立たれる一方で、丸山(仁村紗和)だけは前回のエピソード以降、“5年前の出来事”をめぐって居心地の悪そうな状態がつづいている。園部(舘ひろし)の代わりに本部で指揮を執りつつ、SDMの正式運用の是非を判断するとプレッシャーをかける立花(真矢ミキ)がその必要性について噛みしめるなかで、起きてしまう悲劇。冒頭で触れた5年前の灯の行動の真相を晴原に伝える役割は、その瞬間に丸山に託されたことになる。

(文=久保田和馬)

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