【ソフトバンク】大関友久 「育成入団」「腫瘍摘出」乗り越え世代トップ左腕に投げ勝つ

無傷の3勝目をあげたソフトバンク・大関

パ首位のソフトバンクは5日の中日戦(バンテリン)に5―1の快勝を収め、5連勝を飾った。貯金を今季最多の「20」に更新。12球団最多8度の栄冠を誇る得意の交流戦で楽天と並んで首位をキープした。打線が2回に幸先よく先制。3回に近藤の2点適時二塁打などで4点を追加して主導権を握ると、チーム防御率1・98の強力投手陣が反撃を1点に抑える盤石の試合運びだった。

感慨深い登板となった。この日の先発・大関友久投手(26)が投げ合った相手は竜の若き左腕エース・小笠原慎之介投手(26)。同学年の2人は好対照とも言える歩みをへて直接対決を迎えた。甲子園優勝投手の小笠原は花の高卒ドラ1で、将来的なメジャー挑戦も視野に入れる「1997年世代」のトップランナー。一方の大関は高卒プロ入りを強く志望しながら夢かなわず、仙台大をへて育成2位指名でホークス入団を果たした〝苦労人左腕〟だ。

大関は登板後、率直な思いをこう明かした。

「高校時代、甲子園に出られず、テレビで見ていた投手。そこで投げている姿を見て刺激をもらっていた存在です。なので思うところはありましたね。実績的には劣っていますが、そういう投手と投げ合ってゲームをつくれたことはよかった。対戦できてすごく楽しい時間でした」

5回4安打無四球無失点で防御率を1・91まで良化させて無傷の3勝目。戦略的理由もあって73球でお役御免となった左腕は、すがすがしい表情だった。

さかのぼること5年前。ドラフト会議を終えた後、球団幹部やスカウト陣が「大関を楽しみにしていてほしい」と〝隠し玉〟的存在だった左腕の育成指名に満足感を示していた。2年目に支配下昇格を果たすと、3年目には左精巣がんの疑いがあった腫瘍摘出手術を乗り越えて完全復活し、4年目の昨季は開幕投手を務めた。今季は不定期間隔の先発や悪天候の地方球場での登板など、難しい役回りに見事に応えて首脳陣の信頼を深めている。

幼少期から憧れてきた杉内俊哉(現巨人投手コーチ)と同じ左腕エースの代名詞である「47」を今季から背負う大関は、その番号に恥じない投球を見せている。希望を届ける立身出世は、この先も続く。

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