【コラム・天風録】責任隠しの10年

 公開するのは10年も先のことという。中身は政治資金の一つ、政策活動費の領収書である。卒業を記念して校庭などに埋めるタイムカプセルのつもりだろうか。未来の自分に宛てた手紙を、照れながら読み返すような楽しみはない▲使い道を明らかにしなくていい現状を改め、領収書を10年後に公開することを盛り込んだ政治資金規正法改正案がきょう衆院本会議に諮られる。自民党が公明党と日本維新の会の要求を丸のみして修正を重ねた代物だ▲きのう特別委員会に出た岸田文雄首相から、なぜ公開が10年後なのか納得できる説明はなかった。公開ルールの詳細は、法の成立後に決めると繰り返すだけ。「政治とカネ」に関わる犯罪の時効は長くて10年だ。そんな事例が判明しても、罰することはできない▲そのくせ、わざと難解に仕立てたとしか思えない条文に抜け道はちゃっかり忍ばせてある。きのう本紙広場欄に載った読者の指摘はもっともだ。「国民に知られては不都合な闇があるのではないのかと思ってしまう」▲未来の政治を形づくるのは今の政治の責任だ。「ブラックボックス」をタイムカプセルに入れ、その責任まで目が届かぬようにしようというのか。

© 株式会社中国新聞社