【閉幕まで1か月】キュビスムを知る絶好のチャンス! 京都市京セラ美術館で50年ぶりの大規模展覧会

展示の様子【ロベール・ドローネー《パリ市》 1910-1912年 Centre Pompidou, Paris, Musée national d’art moderne-Centre de création industrielle(Achat de l’ État, 1936. Attribution, 1937) (C) Centre Pompidou, MNAM-CCI/Georges Meguerditchian/Dist. RMN-GP】

西洋美術史に大きな変革をもたらした20世紀の芸術運動「キュビスム」をテーマにした展覧会「パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ」が京都市京セラ美術館(京都市)で開かれている。キュビスムを正面から取り上げ、包括的に紹介する大規模展は日本では約50年ぶりで、パリにある近現代美術コレクションの殿堂「ポンピドゥーセンター」の所蔵品を中心に約130点を公開。

【写真】マリー・ローランサンの日本初出品作。ローランサンはキュビスムに着想を得ながら、画風を確立していったという

50点以上が日本初出品で、約40人の作家による絵画、彫刻や版画、映像などを14章立てで展示している。

大きな見どころは、キュビスムの祖、パブロ・ピカソ(1881~1973年)とジョルジュ・ブラック(1882~1963年)の計27点に及ぶ作品群だ。2人が知り合ったのは1907年で、翌年の冬を迎える頃には、毎日のように互いのアトリエを訪ねるほど交流を深めていたという。「私たちはザイルで結ばれた登山者のようだった」とブラックが回顧するほど近しい関係性だった2人は、1909年夏には、無数の切子面で構成されたモノクローム画面が特徴的な「分析的キュビスム」に至り、1912年になると、コラージュや貼られた紙で幾何学的平面を表現する様式「総合的キュビスム」に達した。

2人が互いに影響を与え合いながら切磋琢磨した様子は「肘掛け椅子に座る女性」(ピカソ、1910年)、「ヴァイオリン」(同、1914年)、「レスタックのリオ・ティントの工場」(ブラック、1910年)「ギターを持つ男性」(同、1914年)などから見て取れる。

展示を担当した中山摩衣子学芸員は「1909年から1914年までの間に展開されたブラックとピカソによる造形実験の軌跡をつぶさに追うとともに、両者を起点としたキュビスムの豊かな発展とダイナミズムを、充実した作品群でたどることができる」と話し、「今回の展覧会が美術のみならず、視覚表現全般において新たな地平を拓いた、キュビスムへの理解と関心につながれば」と期待を寄せる。

圧巻なのは、ロベール・ドローネー(1885~1941年)やフェルナン・レジェ(1881~1955年)の大型作品が並ぶ部屋。公的な展覧会で積極的に集団展示を行い、「サロン・キュビスト」と呼ばれた芸術家らは、大衆を意識したスケールの大きな人物群像などを多く手掛けたことで知られる。ドローネーの「パリ市」(1910~1912年、日本初出品)は、エッフェル塔がそびえ立つパリの街と3人の裸婦が華やかな色彩で明るく描かれ、レジェの「婚礼」(1911~1912年、同)は、街中を進む結婚式の行列をダイナミックに表現している。

美術初心者にはとっつきにくいイメージもあるキュビスムだが、今展はキュビスムの名品を数多く鑑賞できる絶好のチャンス。中山学芸員に、楽しみ方のヒントを伺ってみた。

「キュビスム誕生の起源として紹介しているポール・セザンヌやブラック、ピカソの作品は、さまざまなタッチ(筆触)を確認することができる。タッチが集合して切子面を形成、画面が幾何学的に構成されていることがよくわかります。また、ブラックやピカソの『総合的キュビスム』時代の作品では、女性の頭部に描かれた髪の表現に、本物の櫛(くし)ですいた線が確認できます。この作品の意味は何だろう?と考えながら見るのも楽しいですが、作家たちのタッチをじっくりご覧いただくのも興味深いと思います」(中山学芸員)。

会期は7月7日(日)まで。

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