「蛙が鳴くと雨が降る」というのはなぜ? カエルにまつわる言い伝え

金運アップなど縁起物でもあるカエル(写真はイメージ)【写真:写真AC】

6月6日は「カエルの日」です。。制定したのは「かえる友の会」で、カエルの鳴き声である「ケロ(6)ケロ(6)」の語呂合わせが関係しているとか。カエルというと、古くから縁起物として親しまれているほか、「蛙の子は蛙」といったことわざや、「蛙が鳴くと雨が降る」といった天気にまつわる言い伝えにも登場します。日本古来の伝承や風習、先人の知恵など諸説に着目するこの連載。今回は記念日にちなみ、カエルについてお届けします。

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縁起物としても親しまれているカエル

カエルは、世界各地に生息する両生類の生き物です。日本では「かわず」とも呼び、古くから俳句に詠まれたり、昔話や童謡にも出てきたりするなど親しまれてきました。また、カエルの語呂合わせや特性から、縁起が良いものとして、現代も置物やお守りのモチーフになることが多くあります。

たとえば、カエルを「お金や福が返る」や「無事に帰る」にかけて、金運や運気アップ、安全祈願の象徴にしたり、前にピョンと跳ぶ様子から出世、多産なことから子宝を願ったりするなど。さまざまなシーンで願掛けされるカエルは、“万能な縁起物”といえるのかもしれません。

ちなみにカエルの子であるオタマジャクシも、その名が縁起物に由来していることで知られています。滋賀の多賀大社のお守りで知られる「お多賀杓子(おたがじゃくし)」に形が似ていることから転じ、「おたまじゃくし」と呼ばれるようになったそうです。

ことわざの「蛙の子は蛙」は、ほめ言葉ではない

縁起物である一方で、ことわざなどで出てくるカエルは、平凡な様子のたとえになっていることが多いです。たとえば「蛙の子は蛙」。オタマジャクシの見た目は親とは似ていませんが、成長するとやはりカエルになる様子に由来することわざです。直接的な意味は「子は親がたどった道を歩む」となりますが、「凡人の子は凡人にしかなれない」とのニュアンスを含み、ほめ言葉ではありません。

同じような意味に「竜と心得た蛙子(かえるこ)」があります。こちらは「竜のように立派になると期待していたわが子も、やはりカエルの子のように凡人にすぎなかった」といった意味。子に対する親の見込み違いのたとえで用いられます。

また、「井の中の蛙(かわず)」や「井の中の蛙、大海を知らず」は、ほかに広い世界があることを知らずに、自分の周囲の狭い範囲だけでものを考えていることのたとえです。また「蛙の面に水」は、カエルの顔に水をかけても平気なことから、どんな仕打ちを受けても何も感じず、平気でいる様子を表現します。

カエルは雨を予測できる?

このほか、カエルにまつわる言葉でよく知られているのは、「蛙が鳴くと雨が降る」という言い伝えです。カエルといってもさまざまな種類がありますが、このカエルは、ニホンアマガエルのこと。アマガエルは、雨が降る前の空気中の水分量を察知して「ケッケッケッ」と鳴くことがあるといわれているのです。これは、カエルの呼吸と関係があると考えられます。

そもそもカエルは、肺呼吸をサポートする形で皮膚呼吸もしています。カエルの表面がいつも濡れているように見えるのは、酸素を水にとけた状態で皮膚から取り込むために、体の表面に粘液を出しているからです。雨が近づくと空気中の湿度が高くなり、皮膚呼吸がしやすくなって、鳴くことが多くなるといわれています。雨が近づいたときのカエルの鳴き声は「雨鳴き」や「レインコール」などと呼ばれています。

しかし実際には、カエルが鳴いたからといって確実に雨が降るとはいえません。カエルは、ほかのオスに自分の縄張りを示すとき、敵が近づいたとき、素早く逃げるときにも鳴くことがあります。その鳴き声は未だ解明されていない点があるようです。

都心にいるとカエルと接する機会はあまりないかもしれませんが、初夏の水田にはアマガエルをはじめ、トノサマガエルやツチガエルなどが集まります。機会があればそっと耳を澄ませ、天気を確認してみましょう。

鶴丸 和子(つるまる・かずこ)
和文化・暦研究家。留学先の英国で、社会言語・文化学を学んだのをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。

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