上田綺世か、小川航基か。森保Jの絶対的エースの座を懸けて、オランダで研鑽を積む2人の競争が本格化するのは確かだ

2026年北中米ワールドカップのアジア最終予選を視野に入れ、重要な底上げの場となる6月シリーズ。その1戦目となるミャンマー戦が6日夜、ヤンゴンのトゥウンナスタジアムでキックオフされる。

「明日の試合では、試合の途中からでも3バック、4バックを可変して戦えるようにしたい。これまでの活動では、攻撃の部分ではなかなか3バックを使えなかったが、これから先のレベルアップのために、攻撃のオプションとして使っていけるようにしたい」

森保一監督は前日会見でこう語ったが、今回は基本の4バックでスタートしながらも、状況や時間帯に応じて臨機応変に3バックへシフトさせていく意向。それが可能な陣容をスタメン起用していく構えだ。

3日の千葉県内での練習を踏まえると、あくまで予想だが、GKは前川黛也(神戸)、4バックは右から相馬勇紀(カーザ・ピア)、谷口彰悟(アル・ラーヤン)、町田浩樹(ユニオンSG)、橋岡大樹(ルートン)、アンカーは守田英正(スポルティング)、インサイドハーフは田中碧(デュッセルドルフ)と旗手怜央(セルティック)、右サイドは堂安律(フライブルク)、左サイドは中村敬斗(スタッド・ドゥ・ランス)、1トップは小川航基(NEC)というフレッシュなメンバーを並べるのではないか。

この最終ラインなら、相馬が右の前にスライドして、谷口、町田、橋岡で3バックを形成できるし、堂安も中に絞って旗手とシャドー的な位置でプレーできる。3-4-2-1へのシフトがスムーズにできる構成で、森保監督の意図も具現化させやすいはずだ。

予想スタメンの数人が入れ替わったとしても、最前線を託されるFWのゴール前での仕事は不変。今回は常連組の浅野拓磨(ボーフム)が選外、前田大然(セルティック)が左サイド要員となっているため、1トップ候補は小川と上田綺世(フェイエノールト)の2人だけだ。現時点では小川がミャンマー戦、上田が11日のシリア戦で先発しそうな雲行きだが、彼らの競争がここから本格化するのは確かだ。

ご存じの通り、2人は同じ東京五輪世代。10代の頃は小川がファーストチョイスと見られていたが、上田が法政大から鹿島アントラーズ入りした2019年以降に急成長。一気に小川を抜き去り、2022年カタールW杯に参戦。欧州でも実績を築き、昨年から代表のエースFW筆頭に。2023年に7点、24年もここまで4点を叩き出す活躍を見せている。

一方の小川は、2019年E-1選手権の本戦で代表デビューすると同時にハットトリックを達成。華々しい初陣を飾ったが、そこから4年3か月も日の丸から遠ざかる。久しぶりのA代表復帰戦となった今年3月のアジア2次予選・北朝鮮戦も、81分から10分程度ピッチに立っただけ。本人も不完全燃焼感を色濃くしたに違いない。

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今季のオランダ1部では、上田の5ゴールに対し、小川は11ゴール。もちろんチームの格はフェイエノールトの方がはるかに上だが、小川には明確な数字を残した自信がある。

「日本サッカー界には突出したフォワードが出てくることが求められている。その1人になれるのは僕だと思う。そこには自信はずっと持っていますし、僕じゃないといけない。これから先を見守っていただけたらなと思います」と本人も目をギラつかせていた。

オランダでの1年間で磨きをかけた得点感覚、空中戦やクロスの競り合いの強さ、前線で起点になる技術や戦術眼を6月シリーズで堂々と示せれば、代表定着に大きく前進するに違いない。

とはいえ、上田の方もリバプールの新指揮官に抜擢された知将アルネ・スロットのもとで1年間プレー。FWとして一回りも二回りも大きくなって代表に合流してきた。

「高い要求、サッカー観を持っている監督に出会うのはすごく大事だし、それが選手を伸ばす環境の土台になるのは間違いない。(スロット監督は)素晴らしい監督だし、ハイレベルな戦術があったなかで自分が揉まれたから、成長できたんだと思います」と本人も改めて強調。その成長を代表に還元する覚悟だ。

2人とも前田ほどのハードなチェイシングはできないかもしれないが、得点力という頼りになるストロングを備えている。長身の小川はロングボールやハイボールからの攻めで異彩を放つだろうし、上田は周囲と連係しながら得点を生み出す能力が際立っている。

そういった特長を森保監督や周囲がしっかりと理解したうえで、それぞれをうまく使い分けていければ、日本代表の戦いはもっと多彩なものになる。最終予選での過酷な移動や環境の変化を考えても、前線の大黒柱が2人いる状況は本当に心強いはずだ。

2人の熾烈な競争、あるいは共闘させられるのか否か。それを確認し、先々につなげていくことが、6月シリーズの重要課題の1つではないだろうか。

一足先にチャンスを与えられるであろう小川が90分間、高いパフォーマンスを維持し、存在感を示してくれれば、チーム全体に弾みがつくはずだ。そう仕向けるべく、小川にはミャンマー戦で強烈なインパクトを残すことを強く求めたいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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