ニュージーランドに勝利も決して喜べない。見逃せない致命的な欠陥とは?【なでしこジャパン/コラム】

2024年6月3日、なでしこジャパンが国際親善試合でニュージーランド女子代表と対戦。長谷川唯、藤野あおば、清水梨紗ら主力メンバーで臨んだ一戦は前半こそほぼ何もできずに0-1とリードされたが、谷川萌々子や浜野まいかなどを投入した後半に巻き返して4-1と勝利した。

勝利の立役者は、優れたシュートテクニックで2ゴールを決めた浜野、巧みな散らしで中盤にリズムをもたらした谷川だろうか。いずれにしても、前半と後半で日本の出来はかなり違った。前半と違って効果的な縦パスが通るようになった後半は、特に浜野が素晴らしかった。

3-4-2-1システムのシャドーを任された浜野は持ち前のスピードとテクニックで攻撃に躍動感をもたらすと、50分にセットプレーのチャンスから豪快にミドルで同点弾を突き刺す。そして60分には長谷川のパスに素早く反応してGKとの1対1を制して逆転ゴールを決めた。決定的な仕事をしたという点で、先発出場した植木理子や宮澤ひなたよりも評価は高く、パリ五輪のメンバー入りをこの時点で確定させたと言っても過言ではないだろう。

4-1と最終的にニュージーランドに勝利したのは間違いない。ただ、どうしても気になる点がある。それは、最終ラインからのビルドアップの質だ。4月に開催されたSheBelieves Cup TOPでも露呈したが、そこからの組み立てが不安定なのはパリ五輪に向けて致命傷に映る。

先発出場した南萌華、熊谷紗希、高橋はなの3バックは正直、攻撃面も含めて機能しているとは言い難かった。とはいえ、7月開幕のパリ五輪まで時間は限られており、ここから大きな改善は見込めない。

金メダルを目標としているが、なかなか険しい道のりである。最終ラインからの組み立ては現状、致命的な欠陥だ。そこを、池田監督だけでなく、選手たち自身がどう捉えるか。絶対的なストライカーが見当たらない最前線の問題も含め、ニュージーランドに2連勝したからといって、喜んでばかりもいられない。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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