Vol.06 ミュージックバー、円形ホールでのライブが一度に楽しめるバーラウンジ兼コンサートホール「BAROOM」〜株式会社フェイス〜[Blackmagic Design In-house Scene]

新型コロナウイルスの流行をきっかけに、企業の活動にも変化が起き始めていて、ライブ配信や動画マーケティングの活用が進んできています。それに伴い、外部の映像専業会社に委託していたような案件も、社内で内製化する企業が増えてきました。

今回は、レコード会社の日本コロムビアの親会社である株式会社フェイスが運営するバーラウンジ兼コンサートホール「BAROOM」での取り組みについて、同社のファシリティ管理責任者兼テクニカルディレクターである池田宜史氏に伺いました。

日本コロムビアが所有する約1万枚のレコードコレクションにヴィンテージオーディオのミュージックバー、そして最新ハイファイシステムを備えた円形ホールでのライブ、それらが一度に楽しめる空間が南青山にあるBAROOMです。

BAROOM

お話を伺った池田宜史氏(左)と音響エンジニアの堀田要氏

インハウス業務に携わるきっかけ

池田氏:

かつてはFuture SEVENという別の施設を運営していたのですが、完成して10年を迎えた頃に作り替えることが決まり、できたのがこのホールです。以前はこういう円形ではなく、もっと一般的な、ステージがあって椅子が100席くらい並べられるような場所でした。円形ホールならではの没入感と臨場感にこだわり、現在のようなデザインになりました。

もともと前身のFuture SEVENではDeckLinkやMicro Converterシリーズなどはよく使っていたんです。配信の機材もそこそこ揃っていたんですが、運営できる人材が当時すでにいなくて、ライブハウスのハコとしてのみ運営していた状態でした。

BAROOMのバーエリア

私は音楽が好きで、ニコ生全盛期時代は自分のチャンネルで自宅から電子ピアノを演奏する配信もしていました。あるとき、Future SEVENで配信を実際にしてみようとなったときに、私に白羽の矢が立ちまして。そこからよく出入りするようになって、最終的に責任者になって(笑)。このBAROOMを作る際に映像機器の選定をすることになりました。

貴重なレコードライブラリから好きなレコードをかけてもらうこともできる

Blackmagic Designを選んだ理由

池田氏:

以前、動画編集をする必要があった時に、DaVinci Resolveというソフトがあるらしい、とは知っていたんですが、値段を全く見てなかったので「お高いんでしょ」って思ってVegasを使ってたんですよ。あるとき、これ0円!?と気づいて「そんなことある??」と思ったんですが、ちょうどVegasもずっとバージョンアップしていなかったので、DaVinciを使い始めたんです。 そのときにBAROOMの話があって、新しく揃えるなら、Blackmagicで揃えるべきだなと思って選定したのが今のシステムですね。

以前は、ビデオのマトリックススイッチャー(ルーター)の存在も知りませんでしたが、この職場で初めて使って便利だと思って、今回の施設にも導入しようと考えました。ただ、他社製はかなり高いので、マトリクススイッチャーはBlackmagic Videohub以外はないなと思ってVideohub 40x40 12Gを導入しました。他社製だと下手すると価格が(Videohubの)10倍することもありますから。そこから、Videohubに繋げるならもうBlackmagicで統一した方がいいということで、機材を選んでいきました。

VideohubルーターやTeranex コンバーター類がマウントされたラック

BAROOMのシステム

池田氏:

全体としては、Blackmagic Studio Camera 4K Pro G2が3台、Videohub 40x40 12G、ATEM Television Studio Pro 4Kスイッチャー、HyperDeckレコーダーが3台、あとMini/Micro Converter類がたくさん、という感じですね。カメラはStudio Cameraのほかにパナソニックのリモートカメラを2台天井に吊って、天井から固定した映像と必要に応じてリモコンで動かした映像を使っています。

収録にはHyperdeckを使っています。HyperDeck Studio 4K Proは3台所有していて、SDカードも使えるモデルですがSSDが1番コスパがいいのでそちらに収録しています。SDカードは、小さすぎてなくしそうだし、これに耐えられるスピードのSDカードってかなり高いので今の所はSSDを愛用しています。

あとTeranex Mini SDI to HDMI 12Gコンバーターは4K-2K変換に使っています。システムはほぼ4K仕様にしているのですが、モニターや配信用のPCなど、2Kじゃないと受けられない機材もあるので4K SDI信号を2K HDMI信号に変換するのに6台使っています。

Teranex AVも1台導入していて、これは地デジ変換用なんです。弊社のいろいろな場所でホール内の様子を見られるようになっていて、例えば会議室からでも見られるんですよ。それを見る時に地デジの11チャンネルを使ってるんです。

映像を地デジに合成する機材があって、それを使うと会議室などで地デジの11チャンネルでここの映像が見られるんです。ただ、地デジってHDだから1.5Gなんです。フルHDでもないし。なので、ここの4K映像を地デジ対応の1.5Gに落とし込むためにTeranex AVを使っています。システムの機材を入れる時にも、これが1台あると何か予期せぬ変換が必要になったときに絶対使いますから、って勧められて購入したんです。

スタジオのオペレーションについて

池田氏:

オペレーションは基本的には私か、堀田で担当します。社内で映像関連の機材を扱えるのは私たち2人ですね。高度な配信や人手がいる時は外部スタッフを呼ぶこともあります。有料の配信のときは、よほど難易度が低い場合を除いて、外部のプロの方を最低1名は入れるようにしています。私も映像のオペレーションはしますが、プロではないので。配信の方が詳しいですが、スイッチング云々になるとプロの方に任せた方がクオリティが上がるので、私は配信側を担当することが多いですね。配信はXSplitというアプリケーションを使っています。

コロナ禍からポストコロナへ

池田氏:

BAROOMができたのが2022年の4月で、当時はイベントのたびに必ず配信をしていました。現在はその頃と比べるとだいぶ減りました。やはり音楽ライブなのでリアルで見たいという方が多いので。今は録画してパッケージング化なりアーカイブに需要がある場合に配信を利用することが多いです。配信なしで収録のみ、というパターンもあります。

撮影は3台のBlackmagic Studio Camera 4K Proと天井に設置したパナソニック製のリモートカメラを2台使用

動画編集はDaVinci Resolveで

池田氏:

(パッケージング化などの)対外的な編集が必要な場合は、外部でよくきてもらっているスタッフの方にお願いすることもありますが、カット編集程度であれば私がDaVinci Resolveを使って編集します。最低でも社内のアーカイブ用として映像を残していますね。

Blackmagic製品は以前から、やれることは絞られているけど必要なところは全部抑えていて、さらに価格も安いという印象があります。その辺がインハウス制作を行う私たちにとってすごく使い勝手がいいなと思っています。

ピアノが得意な池田さん。取材時にはすばらしい演奏を披露していただきました!

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