15歳の愛犬が見せた老化のサイン 飼い主の不安な気持ちを描いた漫画に共感殺到 「涙が出ました」

漫画のワンシーン。一緒にいるのが当たり前になった、老犬との日々で抱いた思いとは【画像提供:あみだむく(@higemoku)さん】

人間の何倍ものスピードで年齢を重ねていく犬たち。まだまだ若いと思っていた愛犬の、老化のサインに気がつくと不安を感じる飼い主さんが多いでしょう。そんな複雑な思いを描いた漫画がX(ツイッター)で、2.6万件以上の“いいね”を集め話題になっています。作者で漫画家のあみだむく(@higemoku)さんに、詳しいお話を伺いました。

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「疲れてない?」 友人の気遣いであふれ出す思い

「生きる活力は漫画と愛犬」

「ラプソディ・イン・レッド」 (白泉社刊)や、「めしぬま。」「夜分に吸血失礼します。」(いずれもコアミックス刊)などを代表作に持つ、漫画家・あみだむくさんは、そう語るほどの愛犬家でもあります。話題になった作品は、今年1月に虹の橋を渡ったという実家から連れて来た愛犬と、暮らしていた頃の実体験をもとに描いた創作漫画です。

主人公は、15歳の老犬と暮らす男性。愛犬と実家で暮らしていた頃は「なんとなくの関わり」しかありませんでしたが、上京時に連れてきてからは「いつのまにか生活の中心」になっていました。

しかし、近頃は散歩中に突然立ち止まるなど、愛犬のちょっとした日常の仕草から段々と老いを感じるように。男性の頭にはいつかの別れがよぎり、どことなく不安な日々を送ります。

そんなある日、友人と外食をしていると、唐突に「疲れてない?」と気遣われてしまいました。帰り道に「そんなに疲れて見えたかな」と、最近の生活を振り返る男性。確かに最近は夜も気になって寝不足状態が続いていました。

「犬飼ってたら誰にでも来ることだしもっと大変な人もいるしさ」。そう自分に言い聞かせますが、家に残してきた愛犬が今何しているかなと考え始めた途端、男性の目から涙がこぼれ落ちます。愛犬との別れへの不安や恐怖が、一気にあふれ出てしまったのです。

気持ちを落ち着けて、帰宅した男性の目の前には、いつもと変わらない愛犬の姿が。そして、散歩へ出ながら、ある決心をするのでした。

「愛犬の老いに直面する話。」とコメントが添えられた投稿は大反響を呼び、2.6万件もの“いいね”が集まりました。リプライ(返信)には、「一緒に育った愛犬を思い出して涙が出ました」「すごいわかる」「我が家の老いつつあるいぬと重ねてしまい泣きながら読みました」など、共感の声が多く寄せられています。

「今できることを全部しよう」 自身で描いた漫画が考えるきっかけに

あみだむくさんに作品を描いた経緯などをお伺いしました。

Q. この漫画を描いた理由を教えてください。
「急激に老いて行く愛犬を見て、この日々の終わりを意識したことで不安を感じました。それでも、愛犬との限られた日々を少しでも前向きなものにしたかったのと、今の気持ちや愛犬との他愛ない出来事を覚えておきたくて漫画にしました」

Q. 愛犬の老いをどのように受け入れていったのでしょうか。
「受け入れられたわけではないので不安は尽きなかったのですが、この漫画で同じような気持ちになっている主人公を描くことで少し安心したような気もします。このような状況に向き合っているのは私だけではない、考えても変わらないのだから今できることを全部しようと、改めて考えるきっかけになりました」

Q. 実際の愛犬も、漫画の主人公と同じように「なんとなくの関わりしかなかった」そうですが、実家から連れてきた経緯を教えてください。
「なんとなくの関わりというのは、実家では家族と一緒に面倒を見ていたり、犬とは部屋も離れていたりしたため、“ふたりきり”になった今ほど、密な関係ではなかったという感じです。

実家ではもう1匹犬を飼っていて、母と私で2匹を見ていたのですが、私が家を出るタイミングで2匹とも残していくのには心配がありました。また、私自身も寂しかったため、1匹連れてきました」

Q. 実際の愛犬の老いを感じるようになったのはいつ頃からですか?
「14歳になったあたりからです。もともと持病はあったものの、その頃から急につまづいたり、段差を嫌がったりするように。たまに、てんかん発作も起こすようになりました」

Q. 愛犬の老いを認識して変化したことはありますか。
「愛犬の生活環境をちょこちょこ変えました。段差をなくし、水飲み場などは高さをつけ、夜は暗いと目が見えないので犬用に足元ライトを設置するなどしました」

いつかは必ず訪れる愛犬との別れ。しかし、楽しい思い出をいっぱい作りながら、少しずつその日への準備をしていこうと思える作品は、多くの人の心を癒やしています。

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