社説:原作者の権利 第三者の検証、防止策を

 生み育てた作品を大切にする著作者の権利と思いを軽んじていたのではないか。

 テレビドラマ「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子さんが亡くなった問題で、ドラマを制作した日本テレビと、原作漫画を刊行した小学館がそれぞれ調査結果を公表した。

 日テレの報告書では、小学館を通じて「漫画に忠実に」とした芦原さんの要望を、「強い要求」と認識せず、食い違いからトラブルが生じたとした。小学館は、要望に応じなかったと日テレの対応を問題視した。

 ただ、どちらも内部調査で自己弁護に終始した感は否めない。繰り返さぬため、第三者による包括的な検証が不可欠だ。

 ドラマは昨秋から3カ月間、放送された。脚本家が交流サイト(SNS)で芦原さんが終盤の脚本を書いたことに不満をにじませたのに対し、芦原さんはドラマ化の条件が守られなかったなどと経緯を説明した。

 SNS上で制作側への批判が巻き起こる中、芦原さんは自死したとみられる。

 双方の報告書では、原作者と制作側で意思疎通ができていなかったことが浮き彫りとなった。

 芦原さんが原作の連載を続ける中のドラマ化で、制作過程での人物像のぶれや重要シーンのカットに不信感を募らせた。小学館を通して問い合わせた場面の撮影について、制作側から「撮影済み」などとうその説明もあったという。要望を軽視し、確認を怠った無責任体質に大きな問題があろう。

 原作者には「著作権」と、作者の意に反して内容を改変されない権利「同一性保持権」を含む「著作者人格権」がある。

 2022年に公開された映画「天上の花」で脚本を同意なく書き換えられ、著作者人格権を傷つけられたとして、脚本家が、指導を受けた共同脚本家に賠償を求めた裁判では先月下旬、大阪地裁が賠償を命じた。

 ドラマや映画の現場では、制作側が優位な立場にあり、打ち合わせや合意の内容は曖昧な点が多い。対等な立場として契約文書に明記するなど、構造的な見直しが求められる。

 原作者や制作スタッフが、権利や契約に関する知識を共有することも必要だろう。

 今回、原作者や脚本家がネット批判の矢面に立たされたことも問題だった。クリエーターを守る体制づくりが急務だ。

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