ボーイング「スターライナー」、ついに打ち上げ。初の有人飛行試験でISSへ向かう

Image:Boeing(YouTube)

6月5日、ボーイングは延期に次ぐ延期を重ねてきた「Crew Space Transportation-100(CST-100)Starliner」宇宙船の打ち上げをついに実行し、初の有人飛行試験を開始した。記事執筆時点で、宇宙船は「安全かつ安定」した状態で軌道上にあり、国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキングに備えている。

Starlinerに搭乗している2人の宇宙飛行士は、ドッキング後は約1週間ISSに滞在し、地上へ帰還する予定だ。そしてその行程を通じて、この宇宙船の長期ミッション用としての認証を得るため、手動による飛行制御や、通信や電源の喪失を想定した対応シナリオの確認など、各機能を隅々までテストすることになっている。

NASAがISSへの有人飛行のために、民間から2種類の米国製宇宙船を配備するという計画を打ち出したのはもう10年以上も前のことだ。

今回の打ち上げは、本来は5月6日に予定されていた。しかし、打ち上げ予定時刻の約2時間前に、作業員がAtlas Vロケットの上段にあるバルブからの異音に気づき、打ち上げは延期されることになった。

Atlas Vロケットを製造するUnited Launch Aliance(ULA)は、問題のバルブを交換することを決めたものの、そのためにはロケットを発射台から下ろし、メンテナンス棟に戻す必要があった。そして、作業時間を確保するため、打ち上げは5月17日に延期された。

問題はそれだけに収まらなかった、バルブの修理作業の間に、Starlinerのサービスモジュールにある反応制御スラスターからヘリウムガスがわずかながら漏れ出ているのが発見されたのだ。

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ミッションチームは、その漏れによる影響の分析作業に時間を費やしたものの、NASAの商業有人飛行プログラムマネージャーであるスティーブ・スティッチ氏は、不測の事態に備え余裕を持たせた設計であるため、いまの100倍以上の漏れが発生していても問題は軽微だとし、新たな打ち上げ日程を6月1日に設定した。

ところが、この予定も打ち上げのわずか数分前に中止された。原因は地上設備の電源系統の故障が見つかったためだ。そして、約1週間の延期ののち、要約今回の打ち上げに至った。

今回のミッションが無事に完了すれば、早ければ2025年にも初の通常運用となる商用打ち上げ「Starliner-1」が行われる。すでに搭乗予定の飛行士らは十分な訓練を重ねており、ISSでの約6か月間の長期滞在に備えている。

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