「放置しながら資産を築く」…インフレ時代に「儲けられる投資家」の心構え

(※写真はイメージです/PIXTA)

富裕層に関するお金の問題解決にあたってきた江幡吉昭氏の新著『インフレ時代の投資術』(出版社名)より、著者の承諾を得て、いくつか内容を抜粋しご紹介していきます。

インフレ時代における「投資の心構え」

「お金にも働いてもらおうと思って運用したけど、結局は一番本業が儲かったよね」というのがデフレ期の成功した富裕層、とくに経営者の多くがいう言葉だったが、インフレの時代は必ずしもそうでもないと考える。資産運用に熱中して本業がおろそかになるのは論外だが、お金にも働いてもらう必要はある。

とくに、ここ数年の大きな変化としては、暗号資産で何百倍になった、海外でSP500やナスダック銘柄を買って放置していたら何倍にもなった、等の今までにはないパターンが聞かれるようになった。

ここで共通するのは、買って10年などの比較的長い時間かけて「放置しながら資産を築いた」というケースが多い。そこでインフレ時代において投資をするに際しての心構えを9つに絞った。以下の考えを資産運用時の心構えとして役立ててもらえたらと思う。

①リッチマンになりたければ孤独に耐えろ

②運用は勉強したら必ず儲かるものではない

③含み損が気になるようであればその投資額は過大

④お金持ちだから特別な投資があるわけではない

⑤日本は選択肢が多い

⑥高齢になって投機は危険。若いうちは投機もOK

⑦美味しい投資話には裏がある(国策に例外あり)

⑧金融機関は運用のプロではなく、商品販売のプロ

⑨メディアのマーケット評は後付け

○リッチマンになりたければ孤独に耐えろ

まず①を見ていこう。これは投資の格言としては非常に有名な言葉である。日本では「人の行く裏に道あり花の山」と表現される。

投資家は、群集心理で動きがちだが、それでは大きな成功は得られないということであり、むしろ他人とは反対のことをやった方が、うまくいく場合が多いということだ。大勢に順応すれば、確かに危険は少ないし、なんとなく右に倣えで安心だし、事なかれ主義で何事によらず逆らわないのが世渡りの平均像ではある。

しかし、この格言は人生の成功者は誰もやらないことを黙々とやってきた人たちであり、欧米では「リッチマンになりたければ孤独に耐えろ」と教える。

株式などの相場は、上昇ばかりでもなければ、下落ばかりが続くこともない。どこかで転機を迎える。その転機を、どうしたらつかめるか。環境や材料から読み取るのは、大切なことだが、大勢があまりにも一方へ偏り過ぎたときなどには、この格言を思い出すべきと思う。

なぜ、メジャーな投資信託(つまり残高が大きいもの)が儲からないかというと、「上がりそうな投資信託を作っているのではなく、売りやすい投資信託を作っているから」なのだ。よって、多くの人が買いたいと思わせる投資テーマであるわけで、まさに大衆と同じ方向性である。

リーマンショックのとき、ウォーレンバフェットがゴールドマンサックスはじめ、大きく下がった会社の株を買った。あの時は「主要な金融機関は全部潰れるではないか」と思わせるような、とんでもない悲壮感が漂っていた。もちろんリーマンショック時の安値買いで失敗した野村証券のような買い手(野村證券の欧州リーマン買収などが買収失敗の良い例)もいるが、少なくとも大衆と同じ方向を見て安心するようであれば投資は向いていないといえる。

投資に絶対はない…「勉強の際」肝に銘ずべきこと

○勉強したら必ず儲かるわけではない

顧客と面談していると良くある光景が「わかりました、ではもう少し投資について勉強してみますね」という言葉をよく頂く。しかし、投資が難しいのは勉強したら必ず儲かるわけでもないし、学生時代に行った勉強と異なり、「投資は正解がない問題」である。

この2つを肝に銘じたうえで、勉強すべきと考えている。「正解がない問題」というのはどこで切り取るかによって儲かることもあれば、儲からないこともあるからだ。日経平均株価を想定してほしい。

皆さんご存じの通り、日経平均株価の値動きは上昇することもあれば下落することもある。1990年代に35,000円以上で日経平均株価を買った人は30年以上も塩漬けになってしまった。途中で心折れて売却した人も多いだろう。

一方で我慢して保有した人は15%程度上昇していると思う。1990年代からの10年で切り取ると儲からないものであり、1990年代から20年で切り取るとこれも儲からないもの。1990年代から30年で切り取ると儲かるものになる。つまりどこで切り取るかによって儲かる儲からないは異なるのである。

また、勉強時間に比例して投資の能力が付くものでもない。例えば数多く出版される投資本も「投資で成功したから書いた」というよりは「投資で儲かるというテーマの本を売って儲ける」というのが本当のところである。

もしくは本当に100万人に1人いる投資の天才が自分の感覚的なノウハウで書いた本だったりするので「本に書いてあった通りやっても」儲からない。つまるところ、投資の本を100冊読んだら投資に成功するかというとそんなことはない。

ただ、本によって得ることもあるので、投資の本を読むならば最近出版されたハウツー本ではなく、「ウォール街のランダムウォーカー」や後ほど紹介するジェレミーシーゲルの株式投資をはじめとして、何十年も生き残ってきた投資本の定番を読むことをおススメする。

そして、絶対儲かる手法というのはなく、投資の世界では市民権を得ている「テクニカル分析※」を重用される人も多いが、占いと大差がなく、当たることもあれば外れることもあり、それだけで資産を増やし続けることは不可能である。

※テクニカル分析とは、過去の値動きをチャートで表して、そこからトレンドやパターンなどを分析し、今後の株価や為替などの値動きを予想するもの。

テクニカル分析は言わば、「その後ろ向きに歩くことの軌跡を分析するだけ」と考えた方がいい。

メジャーなテクニカル分析は、「みなが見ているが故に、時としてテクニカル分析がピタッとハマる時はあるものの、それが永久に続くわけではない」。

また自動売買も同様で、投資や株や為替の値動きは「海の波」と同じで、波のパターンはある程度分析できるが全く同じ波がずっと続くことはない。一定の法則に従って勝ち続けることはあるが、どこかでその波は過去と違うパターンになって最初は勝率100%でも、最初の一敗をしたころから波が狂い始めるが、その法則で勝ち続けていたので次は勝つだろう、次は勝つだろうと思いながらすべての利益を吐き出すまで負け続けるということになりがちである。つまり90勝10敗の高確率で勝利し続けるも、最後の10敗ですべてを失うことが多い。

よって、投資に絶対はないというのは鉄則である。

投資に支配されない…「含み損」との向き合い方

○含み損が気になるようであればその投資額は過大

これは投資に関して許容できるリスクは人それぞれという話で、例えば100万円持っている人が50万円の含み損になってしまった場合、かなり強烈なプレッシャーがかかると思う。資産が半分目減りしてしまったのだから。

ところが1億円保有している人が同じ50万円の投資による含み損であっても、全財産のたった0.5%でしかないので、50万の含み損は気にならないであろう。また、投資のベテランが含み損500万円と投資初心者が同じ500万円の含み損も違うと思う。投資にはアップダウンがあり、「そんなもんだ」と思える許容額は人それぞれ、財産額によって異なる。

含み損が気になり一日に何度もスマホを眺めて市況をチェックしているような状況になったとしたら、それはその人の現在の投資額がその人にとって過大ということが言える。今すぐにでも投資額を少なくする(損切する)必要がある。

もちろん本書はデイトレードなどをおススメする本ではないので、デイトレードの場合、もう少し異なる趣があると思う。本書はあくまで最低五年以上の中長期投資について書かれている。

人生はあくまで自分のためにあるもので、投資のためにあるものではなく、人生を有効に活用するためには時間とお金が必要なのは誰もが頷くところ。しかし含み損が気になって仕事が手につかないようであれば、本末転倒であり、投資に支配された人生になってしまう。投資に支配されないように自分で自分の時間を支配できる金額にすべきと考える。

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本記事では、9箇条のうち3つ目までをご紹介しました。次回の記事では残りのパートについてご紹介いたします。

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