おもちゃコンサルタント「自由な遊びを見守るのが仕事」 最も大切にしているのは“教えない”こと

劇作家・演出家 平田オリザさんのラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)に、おもちゃコンサルタントの田房加代さんが出演。活動をするなかで気づいた、芸術や遊びを暮らしに取り入れることの重要性を語った。

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幼稚園教諭や公立文化施設職員のキャリアを経たのち、定年退職を機に、現在はおもちゃコンサルタントとして活動する田房さん。自主事業における子ども向けコンテンツを担当するなかでこの資格に出会った。

「おもちゃコンサルタント」とは、東京おもちゃ美術館を運営する特定非営利活動法人「芸術と遊び創造協会」が30年前から行っている人材育成の一分野。おもちゃに関心のある消費者へのアドバイスをはじめ、保育・幼児教育や高齢者リハビリテーション現場での活用、社会貢献活動など、活動範囲は多方面にわたる。

番組では、器と球体がひもでつながれた木製おもちゃを一例に解説。田房さんいわく、おもちゃはそれぞれの目的をもって作られているが、「出会った月齢・年齢によってどう遊ぶかは自由」だという。

「私たちスタッフが最も大切にしているのは、『教えない』こと。誤飲などの危険は回避しながら、子どもたちの発想に一緒に乗っかって遊ぶことがおもちゃコンサルタントの役割です」(田房さん)

7月には、田房さんのかつての職場である兵庫県立ピッコロシアター(兵庫県尼崎市)で、大人も子どももそれぞれの表現を安心して楽しむことができる場を提供するプログラム「ヒョーゲンアソビノバ」が開催される。

同プログラムは、大阪・北摂を中心にさまざまな遊びの場を展開しているプロデューサー・青木敦子さんが企画・実施するもので、0歳から未就学児が対象。

会場には、おもちゃや楽器といったアイテムだけでなく、布が積みあがっているエリアや絵が描けるコーナーなど、子どもたちの好奇心を促す仕掛けに加え、プロのダンサーや演奏家、俳優、保育士も参加し、子どもたちが生み出した『遊び』をいかしながら一緒に遊ぶ。

これまで幾度か関わったことのある田房さんも、「とにかくクリエイティブ。子どもたちが次々に遊びを広げていくので、2時間があっという間」と太鼓判を押す人気のプログラムだ。

平田さんがかつて仕事で関わったイタリアの劇場でも、毎週土曜日になると子どもたちが気軽に劇場を利用することができるプログラムが行われていたという。

「お芝居を観たあとに、劇中で出てくるケーキが実際に食べられるとかね。子どもが口の周りをクリームでべたべたにしながらうれしそうに走りまわっていて、劇場が天国みたいになる。こうした取り組みによって劇場に来てもらう習慣ができるのは喜ばしいこと」という平田さんの言葉に続けて、田房さんはこのように思いを述べた。

「劇場も“遊びの広場”だと思い続けて仕事をしてきました。遊び方を教えるのではなく、“自由に遊んでもらう”ことがポイント。子どもたちは時にぶつかるけれど、しばらくすると嘘のように自分たちで解決し、他者とのつながり方を自然に習得していく。“遊びは創造性につながっている”と日々実感させられますし、その先に、たとえば物語を読んだときに想像が広がるとか、なにかを見たときに思いを馳せるとか、そうした行為は演劇的なことにもつながっていると信じています」(田房さん)

※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2024年6月6日放送回より

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