イーサン・コーエン監督×妻トリシア・クックが『ドライブアウェイ・ドールズ』を語る

6月7日より全国公開される映画『ドライブアウェイ・ドールズ』より、イーサン・コーエン監督と妻であるトリシア・クックのコメントが到着した。

本作は、アカデミー賞作品賞、監督賞を受賞した『ノーカントリー』のイーサン・コーエンが妻のトリシア・クックと共同で脚本・製作を手がけたロードムービー。長年、兄ジョエルと一緒に“コーエン兄弟”として数々の作品を手がけてきたイーサンは、劇映画として は初となる単独監督を務めた。

作品の舞台は1999年。この時代設定についてイーサン・コーエンは、「僕たちが最初にこの脚本を書いたのは、2000年になったばかりの頃で、1999年にとても近かったこと。もうひとつは、 トリシアがよく知っていて、コネクションを感じる世界だったから。彼女はあの頃のレズビアンバーをよく知っているんです」とコメント。続けてトリシア・クックは、「自分がもっとバーに行っていた頃のレズビアンバーについてのほうが、語りやすかったんです。それはつまり90年代の終わりから2000年代にかけて。携帯電話、インターネットというようなものも、今みたいに圧倒的ではありませんでした。そういう時代に設定するほうが、ストーリーを語りやすかったんです」と時代設定の狙いについて語った。1999年についてイーサン・コーエンは、「1999年のほうが、『私たちはレズビアンです』と言うのは大胆でしたしね。今では誰もがなんで知 っていて、なんでもあり。禁じられたことは、何もありません」と振り返った。

クリエイティブ面でのパートナーでもある、イーサン・コーエンとトリシア・クック。しかし、トリシア・クックによると、「結婚してはいるけれどもロマンチックな関係にはない」とのこと。この仕事上のパートナーとしての関係について彼女は、「私たちはまだ結婚していますし、 同じ家に住んでいますが、今ではそれぞれに違うパートナーを持っています。私たちはテイスト、芸術的に好きなものが似ています。一緒に仕事をするのは楽。私たちは長いこと一緒に仕事をしてきました。私は、ジョエル、コーエン兄弟の編集室で長年仕事をしてきたので、お互いをよく知っています」と説明した。またイーサン・コーエンは、「今トリシアが僕たちふたりについて言ったことの多くは、僕とジョエルの関係にもあてはまります」と続けた。

オンラインに書き込まれた「この映画には女性の肉体への執着がたっぷりある。それはコーエンが持つものなのか、クックが持つものなのかはわからないが、これはとてもエロテックな映画である」という批評コメント。これについてイーサン・コーエンは、「エロテックな映画ですか(笑)。それは最高ですね(笑)」 と受け止め、トリシア・クックは「私は自分の仕事についてなるべく読まないようにしています。なので、そのコメントを知れて嬉しいです」 と喜びを語った。“エロテックな映画”という表現が気に入ったイーサン・コーエンは、「それを売りにするべきかな。 キャッチコピーにするとか。ポスターに入れるというのはどう?」と冗談を交えつつコメントを寄せた。

メインキャラクターであるジェイミーとマリアンをはじめ、多くのレズビアンが登場する本作。そして、レズビアンのセックスや恋愛模様を前向きに描いているのも特徴だ。そんな本作を制作するにあたり、トリシア・クックは、「シリアスなレズビアンの映画も私には大事」という考えを明かした上で、「映画にはレズビアンがほとんど出てこないと気づきました。出てきたとしても、とてもヘビーで悲劇的だったりします。私にとっては、レズビアンだということは関係ないという形で彼女らを描くことが重要でした」と語った。

自由な精神を持っているジェイミーと考えすぎてしまうマリアンという異なるタイプの2人を登場する本作。“極端なふたつの視点”で世界を見るべきなのかという質問について、イーサン・コーエンは、「ままるで違うふたりのカップルというのは、ロマンチックコメディにおいて典型ですよね。『おかしな二人』のフェリックスとオスカーはその代表です。それはその質問に対する答のひとつ。でも、もうひとつ言えるのは、僕はジェラルディンのキャラクターみたいで、トリシアはマーガレットのキャラクターみたいだから、そうなるのかもしれないということ(笑)」と回答。それに対しトリシア・クックは、「それはどうかわからないけれども(笑)」とコメント。続けて、「白と黒を見せるほうがやりやすいんですよ。グレーは複雑で、ふたりのキャラクターの関係を描く上ではあまりドラマチックにならないんですよね」 と語った。

また本作には、異なるタイプのキャラクターとして2人の男の犯罪者も登場。この極端な2つの視点について、2人の男の犯罪者も当てはまるのかといいう質問では、イーサン・コーエンは「たしかにそうですね」と頷き、トリシア・クックは「同じことが平行しているようにしたかったんですよ。2組が似ているように」 とコメント。さらに「彼らは悪い男たちなんですが、ゲイであることをカミングアウトしていなくて……」(イーサン・コーエン)、「(反対に)女の子たちはLGBTQであることをオープンにしているんです」(トリシア・クック)と、物語の新たな視点を提供した。
(文=リアルサウンド編集部)

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