世界遺産・知床半島の携帯基地局整備における太陽光パネルの設置問題。
自然保護団体が反対を表明する中、地元からも反対の声が上がっています。
■元斜里町長午来昌さん:
「自然遺産の形をぜひ知床に残したいそんな思いで12年間やってきたわけよ。それが全く無駄になるようなことの現象だから、それはちょっと待ってくれと」。
斜里町長として知床の世界自然遺産登録に向けた活動を行ってきた午来昌さん。
いま知床半島で問題になっている太陽光パネル設置に「反対」を表明しています。
太陽光設置のきっかけとなったのはおととしの観光船事故。
当時、「KAZUI」の船長は携帯電話を通信手段としていましたが、事故現場は圏外でした。
そのため総務省などは新たに基地局を設置し来年3月までに知床半島での圏外エリアを解消する計画を進めています。
基地局の1つは知床岬灯台に設置されますが、電源が近くにありません。
そのため総務省などは、サッカーコート1面分に相当するおよそ7000平方メートルに264枚の太陽光パネルを設置する計画を立てています。
また、そこから灯台までのおよそ2kmの土を掘り返し電線などを埋める予定です。
■午来昌斜里町長(2005年):
「ようやく決まった瞬間に糸が切れたように涙が出てくるような感じです。」
2005年、町をあげた活動が実り、世界自然遺産に登録された知床。今回の太陽光パネル設置は、登録の取り消しにつながるのではないかと午来さんは危惧しています。
■午来昌元斜里町長:
「国が一度決めたことを覆すのは大変なことかもしれないけど、でも、黙っていてもそのままいってしまう。知床の価値観が何なのか、世界自然遺産を返上しなきゃならないってなった時に誰が責任をもつのか。」
午来さんらのグループは、インターネットで太陽光パネル設置に反対する署名活動を行っていて現在、2万人以上から署名が集まっています。
■午来昌元斜里町長:
「僕にとって知床っていうのは先生であり、ぼくの恋人であり、永遠のぼくの財産」「そういう知床が与えてくれた恵をもう一回振り出しに戻して考えてほしいなと。便利さだけが宝じゃないよと。」
4日も行われた衆議院の環境委員会。
今回の携帯基地局設置による総事業費がおよそ9億円に上ることが明らかになりました。
■総務省の担当者:
「公益性を認めた上で、自然環境への影響を軽減することで、やむを得ず許可の判断をした。」
これまで基地局整備を要望してきた斜里町も態度を変化させています。
町は先月30日、自然環境への悪影響を指摘する声が多方面から寄せられたとして、いったん工事を見合わせるべきだとの声明を発表しました。
■斜里町・山内浩彰町長:
「様々なご意見をいただいていますので町長として様々な意見に答えていく。」
携帯電話がつながる安心安全と自然環境への配慮は両立できるのか、環境省は7日、臨時の科学委員会で専門家との意見交換を行い今後の対応を決める方針です。