石川県内のオフィス 地震きっかけ移転続々 災害時の設備を重視

オフィスビルが建ち並ぶ金沢駅西地区=2023年3月(ドローンから)

 石川県内で、能登半島地震をきっかけに、オフィスを移転する動きが相次いでいる。社屋が被災し、社員の安全を確保するため本社を移す企業や、震災など災害対策の強化を図るため、築年数が少なく、防災に優れたビルへ移転する企業がある。不動産業関係者は「特に金沢市内のオフィス市場は旺盛で、オフィスビルの空室率低下が期待できる」としている。

  ●製造、製薬会社の営業所…

 不動産情報サービス大手シービーアールイー(CBRE、東京)の金沢営業所によると、築5年以内の「築浅」ビルを中心に引き合いが強まっている。今年に入り、大手の製造業や製薬業の営業所が老朽化したビルから築浅物件にオフィスを移したという。

 CBRE金沢営業所の担当者は、企業の災害対策への関心は能登半島地震で高まっていると説明。いつでも電力を確保できるよう非常用の発電機などを備えるビルが人気を集めているとし、「災害発生時も事業継続できる設備があることは、移転先として重視されている」と話した。

  ●北鉄、7月1日移転

 元日の地震で本社社屋の壁に亀裂が生じるなどの被害を受けた北陸鉄道(金沢市)は7月1日、割出(わりだし)町の社屋から金沢パークビル(同市広岡3丁目)に本社を移転する。

 北鉄によると、傷んだ社屋で業務を継続すると社員に危険が及ぶ可能性もあるため、移転して安全を確保する狙いという。

 CBREによると、県内進出を計画している企業から、金沢駅近くのテナントを求める声は震災以降も多い。床面積が希望より小さくても、比較的、築年数が少ない建物が多い金沢駅周辺へのオフィス移転を望む事業者もいるという。

 金沢市内のオフィスの空室率は1~3月期に13.9%となり、2期連続で改善した。駅西の金沢市広岡3丁目ではJR西日本グループのオフィスビルが2022年に完成。西念1丁目では西松建設(東京)のオフィスビルが完成を間近に控える。

 CBREの担当者は「足元のオフィス需要には力強さを感じている。ビルが増えても、そこまで空室率は大きく上昇しないだろう」と推測した。

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