『虎に翼』GHQが推し進める“五大改革”とは? 「女性の解放」が寅子の人生に与えた影響

NHK連続テレビ小説『虎に翼』で、寅子(伊藤沙莉)は家族を支えて、弟の直明(三山凌輝)を大学に行かせるために、法曹界に戻って仕事に邁進している。司法省の民事局で働いている寅子は、新しい日本の憲法が作られたことに伴い、GHQの指導のもと進んでいる民法改正に関わることに。

GHQが推し進める「五大改革」を基に、寅子たちは民法改正に奔走しているが、五大改革の中身はどのようなものだったのか。寅子が司法省に採用されたこととの関係とあわせて、解説してみたい。

「五大改革」とは、1945年10月、連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーが当時の首相・幣原喜重郎に対して指示し,実施を要求した五項目からなる指令のこと。その内訳は、①女性の解放、②労働者の団結権の保障、③教育の民主化、④秘密警察制度の廃止、⑤経済の民主化、となっている。これにより、選挙法が改正され、満20歳以上の男女に参政権が与えられた。そして、労働組合を育成すべく法整備が進められ、学校教育法、教育基本法も制定された上で、6・3・3・4制の学校制度が開始。さらに、治安維持法や特別高等警察は廃止され、財閥も解体。農村を民主化するための農地改革が実行された。

注目すべきは、①の「女性の解放」だ。『虎に翼』の中でも描かれているが、男女同権の新しい家族制度を定めた新民法の作成において、GHQと日本側の意見がなかなかすり合わない状況が続いた。『虎に翼』では、寅子が広く意見を募ろうと、女性代議士・立花幸恵(伊勢志摩)らの集まりに参加する。

新しい憲法が公布され、それまで女性には門戸が閉ざされていた職業や、戦後新しく登場した職業にも女性が進出するようになり、戦後初の衆議院選挙で女性39人が当選した。『虎に翼』の立花らも、彼女たちがモデルとしてなっているのだろう。寅子が久藤(沢村一樹)の後押しによって司法省で働く一員に起用されたのも、「女性の解放」の一環と考えられる。

GHQは「女性の解放」を五大改革の一つにした理由として、女性が「国家の構成員」として「新たな概念を日本にもたらすだろう」と考えたことを挙げている。新しい日本の政策決定に家庭の知恵を直接反映させる、社会の安定的要素になるとして、GHQは日本女性に期待を寄せたのだろう(※)。そうした背景から、GHQは日本女性に参政権を認める政策を実施し、制度として「女性の解放」を進めていった。

『虎に翼』において、この考えに賛同していると思われる久藤は、寅子を司法省に採用し、彼女の意見をどんどん取り入れて、民法改正を進めたいと考えたはずだが、寅子は一度弁護士を辞めたことと、家族を支えるためにはもう失敗はできないと思っていることから、どうしても“スンッ”となってしまっていた。

久藤に謙虚だと言われて、落ち込む日々が続いていた寅子だが、立花たちとの出会いや、大学の学友である花岡(岩田剛典)との再会を通して、少しずつ自分らしさを取り戻したようだ。寅子が、立花たちのように堂々と女性としての自分の意見を口にし、久藤や桂場(松山ケンイチ)らを唸らせる姿を早く観たい。

参照
※ https://www.jawe2011.jp/publish/welearn/data/0603_640.pdf
(文=清水久美子)

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