犬や猫の糖尿病は1型と決めつけず、インスリン投与量を調整する【ワンニャンのSOS】

のど渇いたワン

【ワンニャンのSOS】#65

生活習慣病で悩むヒトが増えているように、生活習慣病を患うペットも増えています。先日、飼い主さんが連れて来られた10歳のワンちゃんもそうでした。

「水をガブ飲みして、すぐオシッコするんです」

この連載でも紹介した多飲多尿の症状で考えられる病気はいくつかありますが、糖尿病もその一つ。小型犬で下腹部が膨れていたこともあり、内分泌系のトラブルも考慮して血液検査をすると、コレステロール値と血糖値が検査限界を振り切れていました。脂質の異常については確定でも、糖尿病についてはまだ確定ではありません。

糖尿病には、インスリンが完全に分泌されない1型と、その分泌が不十分だったり効きにくくなったりする2型があります。いずれか判断するためです。

ネット情報だけでなく、専門誌にも、ワンちゃんやネコちゃんの糖尿病は1型が多い、ほとんどが1型と記されていて、すぐにインスリン療法に取り掛かるケースが多いように思われます。ところが、私の臨床経験からは2型も意外と少なくありません。受診時に一時的にインスリン分泌が不十分でも、その後、分泌が十分に改善されることもあります。

そこで当院では、糖尿病=1型と決めつけず、2型の可能性も踏まえ、インスリン投与量を細かく調整するのです。最近、ネコについてはネコ用インスリンも承認販売されましたが、当院ではヒト用を使用します。ネコ用はヒト用の3倍と高く、慢性疾患で長期使用を前提とすると飼い主さんの負担が重い。一方、ヒト用は効き目が強く投与量を誤ると、低血糖のリスクが高まります。慎重に投与量を調節するのは、低血糖のリスクを下げて経済的負担を少なくする意味もあって、ワンちゃんでも同様です。

追加の検査では、まず空腹時の血糖値を測定。次に食餌とインスリン注射をしてもらい、注射直後から8時間後の数値をチェック。詳細は省きますが、入院せず飼い主さんの注射の練習もした上で、半日検査で仮の投与量を調べ、その日に帰宅した夜から注射がスタート。2、3日で正確な投与量が決まります。

ワンちゃんは基本的に食後の注射を朝と夜に2回。ネコちゃんは一日を通して食餌することが多く、朝だけ、朝多めで夜少なめなど投与量を変えることで留守番が長い生活スタイルでもうまくいくことが多いです。

当院の場合、糖尿病の診断が早期だと、インスリン治療によって、不十分だった分泌が回復。インスリン療法を休薬したり、完全に離脱できたりするケースも複数経験しています。離脱例では、食餌管理のみです。

インスリンの分泌が回復してくると、そのままの投与量では低血糖気味になりますから、そうなれば投与量を減少しながら、不要になるケースもゼロではありません。そうでなければ、やはり1型でインスリン療法が続きますが、いずれにしてもヒトと同じような細かなチェックが重要です。

(カーター動物病院・片岡重明院長)

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