ハリウッドの才人ジョン・クラシンスキーが明かす 映画『ブルー きみは大丈夫』誕生秘話!「“空想の友達”はあなたの希望や夢、野心のタイムカプセル」

ケイリー・フレミング、ジョン・クラシンスキー監督『ブルー きみは大丈夫』©2024 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

話題作『ブルー きみは大丈夫』もうすぐ公開!

子どものとき、おままごとや一人遊びの時に作り出した空想の友達が、もしも大人になった今でも、そばであなたを見守ってくれているとしたら……。ハリウッドの新進気鋭クリエイター、ジョン・クラシンスキーが贈る最新作『ブルー きみは大丈夫』が、2024年6月14日(金)に日本公開となる。

このたび監督のクラシンスキーが本作についてたっぷり語る、彼の真摯な人柄も伝わってくる濃厚オフィシャルインタビューが到着した。

まさに才人! ジョン・クラシンスキーが最新作を語る

幼い頃に母親を亡くした12歳の少女ビーは、ある日、おばあちゃんの家で、”子どもにしか見えない不思議なもふもふ”のブルーと出会う。ブルーが友達だった子どもはもう大人になって彼のことを忘れてしまい、居場所が無くなったブルーは、もうすぐ消えてしまう運命にあった。ビーは、大人なのにブルーのことが見える隣人の力を借り、ブルーの新しいパートナーになってくれる子どもを探すのだが……。

ジョン・クラシンスキーといえば、“音を出してはいけない”終末世界で暮らす家族を描いたシチュエーション・スリラーの傑作『クワイエット・プレイス』(2018年)で脚本・監督・出演・製作を務め、大ヒットシリーズに導いたことでよく知られている。人気ドラマ『トム・クランシー/CIA分析官 ジャック・ライアン』をシーズン4まで牽引した実力派俳優であり、あのエミリー・ブラント(『オッペンハイマー』[2023年]ほか)の公私にわたるパートナーでもあるクラシンスキーが最新作の題材に選んだのは、“想像力豊かな子どもにだけ見える不思議な存在”だった。

メインキャストには、『デッドプール』シリーズや『フリー・ガイ』(2021年)などでお馴染み、その端正なルックスとは裏腹なユーモアあふれるキャラで世界中に熱狂的なファンを持つライアン・レイノルズと、『ウォーキング・デッド』シリーズ(2010年~)のジュディス役で注目を集めた天才子役、ケイリー・フレミングが抜擢。さらにスティーヴ・カレルマット・デイモン、エミリー・ブラントら豪華俳優陣が声優を務める。

そんな『ブルー きみは大丈夫』について、ジョン・クラシンスキーが大いに語ってくれた。

「この映画が、皆さんの“かつて好きだったこ”とを思い出すきっかけになってくれたら」

―『ブルー きみは大丈夫』が生まれた経緯を教えてください。

アイディア(自体)は10年くらい前からあったんです。空想の友達を題材にしたいと思ってはいたのですが、どう扱うかが見えていなかった。でも、僕自身に子どもができたら、彼らが入っていく世界の完全な虜になってしまって。空想が本当に具体的なんです。お茶会とか、ドラゴンと戦うとか、ダンスパーティーとか、なんでも。何であっても彼らにとってはものすごくリアルで、説得力があるんですよね。

そうしたら(コロナの)パンデミックで、子どもたちの輝きがなくなっていくのを目の当たりにして。現実世界に入り込まれてしまった。子どもに「僕たち(私たち)大丈夫なの?」と聞かれるようになって。そこで思ったんです。「それだ。それが映画になるべきだ。彼らに『ぜんぶ大丈夫だよ』と伝えるラブレターを書くべきなんだ。君の後ろには必ず誰かがいて支えるからね、と。今は楽しくなかったとしても、あの喜びと幸福感にあふれた世界にいつ行っても良いんだよ」と。それが、より大きなコンセプトに展開していきました。

僕たちはいつ、子ども時代が終わったと判断して新しい自分を受け入れるのか? 人は変わってしまうのか? それとも、いつまでも子どもでいられるのか? ――それは、例えば子どもの頃に好きだったレコードを聴くことだったり、好きな映画を観ることだったり、当時の友達と会うことだったり、それともただ、少しストレスの少ない生活を選ぶことだったりするのかもしれない。僕たちは、いつでも人生を変えられる。だから、この映画が、皆さんのかつて好きだったことを思い出すきっかけになる、なってくれたら、と思うんです。

―本作では本当にマルチにご活躍されていますね。脚本に製作、監督、俳優として出演も。どの役割が一番楽しいですか?

面白いことに、いっぺんにやっていると、全部が混ざり合っていく感じがあるんですよね。明らかに、監督が一番楽しいですよ、色んな仕事に関われるから。ストレスもすごいけど、その過程があってこそ、様々なクリエイティブな世界へ招き入れてもらえる。VFXからストーリーボードまで。僕はストーリーボードは描けないし、キャラクターの世界に関われるのはこれが初めて。VFXもしかり。自分は2つ、もしかしたら3つの作品を同時に作っている、と思えるほど信じられない(体験)だった。

なので、映画を撮る、それを編集する、それからVFXが入る。これが全く違う映画を作るくらいの状況になる。その2つの世界をつなげたものが第3のバージョンになる、というか。スティーヴ・カレルのキャラクター(ブルー)を入れると、(実写部分の俳優たちで)別のテイクを撮らないと、それぞれの芝居のバランスが取れないことが分かる。オタク的な側面だけど、それが一番楽しいんです。いわゆる砂場で、これまで思いもしなかった数のオモチャで遊ばせてもらえる感じ。

「アフレコは基本、“自分は気が狂った”と思いながらやる」

―本作に登場する“空想の友達”は、いずれも素晴らしいですね。どこから着想を?

空想の友達は、ほぼ全員、脚本を書きながら考えました。悠長に「どんなキャラクターにしようかな?」なんて先送りにする自信がなかったので。ブルー(カレル)、ブラッサム(フィービー・ウォーラー=ブリッジ)と、ルイス(故ルイス・ゴセット・ジュニア)は俳優と最も共演するメインの3人だから最初に書かないと、と思って。その後、インタビューのシーン(※フレミング演じるビーと、レイノルズ演じるカルヴィン、そしてルイスが、様々な空想の友達にインタビューを行う)を書くにあたって、「ここでは思い切り楽しめる」と思いました。そこで、自分の周りのものを入れだしたんです。

実は、僕らの2人の娘たちの、実際の空想の友達も映画に登場します。マーヤ・ルドルフ演じるピンクのワニは、7歳の娘の空想の友達です。「どうやって思いついたの?」って聞いたら、「私のベッドの下に住んでるだけだよ」と。「それ怖くないの?」と言ったら、「ううん。私の部屋に入ってくる悪い人を食べてくれるためにいるんだよ」と。「そりゃすごく良いな……」と思いました。

そして、溶けているマシュマロは長女の友達。彼女はとても感受性が豊かなんです。ある日、スモア(※焼いたマシュマロとチョコをクラッカーなどで挟んだお菓子)を作っていて、マシュマロに火がついてしまったら目に涙を浮かべていて。「このマシュマロはどうなっちゃうの?」と聞いてきたので、「心配ないよ。これが今の彼なんだ。燃えるマシュマロくんになったんだよ」と答えたら、それが気に入ったみたいで。それで彼は、彼女の空想の友達になったんです。

―娘さんたち以外のご家族も、この作品に関わっています。エミリー・ブラントがユニコーン誕生に協力したとか?

笑えるんですけど、ユニコーンは僕が考えたことはそうなんですが。デザインがあがったら、本当にぶっ飛んだキャラクターで。一番最初に作り出したキャラクターのひとりですね。ただエミリーが演じるまでは、あそこまでとは想像していなかった。エミリーの、あの太い笑い声(笑)。あれをやったとき、本人は「私、メンタルおかしく聞こえると思う」と言っていたけど、僕はバッチリだと思ったんです。本人も本当に楽しんでいたし。

アフレコは、本当に一人で何かを(手品のように)創り出さないとならないから大変です。セットにいる俳優であれば、セットがあって、照明があって、カメラがあって――それらが合わさって自分の脳にも“映画を作っているよ”と伝わる。でもアフレコのブースに一人でいると、そういったものが一切ない。なので基本“自分は気が狂った”と思いながらやるんです。

―キャストがとても豪華ですね。どうやって実現したのでしょう?

いや、本当に幸運でした。こんなに良いキャストは二度とないと思っています。また、友人と仕事ができるというのも間違いなく役得です。なので、全員に承諾してもらったのは大きかった。でも、もうひとつ僕にとって重要だったのは、みんなが本当に作品の核の部分と呼応してくれたというか。子どもがいてもいなくても、この作品の芯にあるものが、僕らがこの業界に入る理由そのものだったんです。

というのは、僕らはみんな空想(イマジネーションの力)を信じている。人生ずっと子どもでいられると思っているし、人生ずっと遊んでいていいと思っている。そのメッセージと、それを如何に大切だと思っているか? で全員、参加を決めてくれたんだと思います。僕のキャリアで、こんなに「イエス」をもらったことはない。二度とないでしょうね、絶対に。

―誰が、どの空想の友達を演じるかで競い合ったりは?

いいえ、あえて他の友達のことについて教えなかったから。画を1枚送って、「彼/彼女を演じてくれませんか?」と聞いたんです。最高でしたよ、映画のあらすじも何もまだ言っていない状態で、やりたいようにやってもらったから。キャラクターを見ただけで自然と出てくる声を出してもらったんです。

その後、製作が進んでVFXが入ってきた辺りで、どういうキャラクターなのかを見せていきました。例えば、スティーヴは最初にブルーを演じたとき、彼がどういう存在なのか全く分かっていない状態で。手描きの画を見せただけだったので。そして、シーンを見せるごとに彼の声がどんどん変化していくのが分かりました。俳優たるもの、そのシーンで彼が何をするのかを把握しだしたら、魔法を見ているようで。明らかに彼は「(役を)つかんだ」んです。めちゃくちゃ楽しかったですね。

「娘たちの評価だけが心配。小さなサムズアップ2つだと良いのですが」

―セットでは、実写部分の俳優たちの参考用にキャラクターのパペットを持っていました。どれが遊んでいて一番楽しかったですか?

ユニコーンで遊ぶのがすごく楽しかったですね。エミリーが彼女にたくさん魔法をかけてくれたから。でも、遊んでいて一番好きだったパペットは、今では作品で多分、僕の一番のお気に入りのキャラクターになっていて、それはコスモ(※クリストファー・メローニ演じる、50年代の一連のノワール・スパイ小説から来た私立探偵)です。

僕が肉付けしていく中で、すでに何かエネルギーを感じていました。「彼は普通のスピードでは機能できない。光速のような素早い動きをしないと」と思ったんです。彼はスパイなので、パッと現れたかと思うとパッと消える。だからパペットもライアンに飛びかかれるから、すごく楽しくて。(彼の)背中とか、肩とかね。

ある日セットで、ライアンから「一緒に仕事できて嬉しいよ。それと、コスモを操るのがすごく上手いから、脅威とみなしてる」なんて言われて。誉め言葉として受け取りましたけど。

―この作品は、ご自身の娘さんたちにインスピレーションを受けて誕生しました。が、子どもたちというのは、時に最も厳しい批評家です。彼女たちの感想は?

面白いのは、娘たちは本当に最初の段階から関わっていたんです。キャラクターの初期のスケッチも見せましたし、セットに連れて行って現場を案内して回りましたし、ケイリーがキャスティングされたらすぐに会わせました。僕にとって、この作品が素晴らしい経験になったのは、作品を娘たちと共有できただけじゃない。映画製作の世界を共有できたことなんです。だってもちろん、『クワイエット・プレイス』は共有なんてしなかったですから! なので、娘たちは初めて僕が何をしているのか見られたわけです。そして、どうしてこの仕事が大好きなのかも。

で、質問にお答えすると、娘たちがこの作品を観ること以上に、自分の作品を誰かに観られることに恐怖を覚えることはありません。実際、感情があふれかえってしまうかも。自分の心も魂も注ぎ込みましたから、“好きじゃない”となったら、どうしたらいいんでしょう。娘たちの評価だけが心配です。小さなサムズアップ2つだと良いのですが。

「“空想の友達”は、あなたの希望や夢、野心などのタイムカプセルです」

―『ブルー きみは大丈夫』を作るにあたって、児童心理学など、空想の友達が子どもにとってどういう役割を果たしているかリサーチされたそうですね。その学びのなかで驚きはありましたか?

いかに子どもたちが鋭いか。僕たち(大人)は子どもを過小評価している気がします。僕らが思う以上に、子どもたちは非常に(情報の)処理能力が高い。リサーチする中で、児童心理学では、“子どもたちは空想の友達を、最も必要としている事柄のために生み出す”と学びました。学校で虐められていたら、より大きな空想の友達を生み出して、守ってもらうか、抱きしめてもらう。子どもたちの空想の友達には、その子の生活の中で、実際に意味を持つ側面があるんです。

もし両親が離婚することになって、お父さんがいつもあるネクタイをしていたら、空想の友達もそのネクタイをしている。空想の友達は、子どもの実人生の延長線上にあって、だからこそ、僕も真剣に取り扱うことを目指しました。空想の友達は、ただ可愛いクリーチャーなのではなく、あなたの希望や夢、野心などのタイムカプセルです。それは僕らが断固として守りたいもの。この作品はたくさんの楽しさが詰まっていますが、僕にとっては、軽んじないということも大切でした。

―空想の友達は我々の一部が投影されている存在だとしたら、あなたが子どもの頃の空想の友達はどんな感じでしたか? そして、あなたのどういった部分を反映していたのでしょう?

サム・ブレイス(Brace)という空想の友達がいました。当時、兄が歯の矯正(braces)をしていたんです。僕としては、それが最高にクールに見えて。実際には全くクールじゃないと分かるんですが、でもそう思っていた。

ビデオショップが歩いて行けるところにあって。僕はそこに歩いていくとき、サムと一緒にアクション映画に出ている空想をしていました。一緒に色んな悪者をかわしたり、それからホラー映画に出ている空想も。小さすぎてホラー映画は観たことがなかったんですが。でも、狼男を想像しました。“悪い怪物”といえば狼男だと思っていましたから。

僕とサムで、たくさんのクレイジーな大冒険をしました。誰と話していたんだっけな……エミリーかも。あるときハッとなって、「なんてことだ、僕が映画(の世界)に入ったのは空想の友達の影響? それが回りまわって今につながったということ?」って。

『ブルー きみは大丈夫』は2024年6月14日(金)より全国公開

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