【ペルー日記】現地の人の異常な食欲

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人生初の中南米一人旅の真っ最中に、新型コロナウイルスが蔓延。
国境は封鎖され、飛行機はキャンセルになり、異国の地でのロックダウン生活。
街中がパニック、一人心細く、早く帰国したいと願う毎日……になるかと思いきや、
彼女は「いっそのこと、ここに住もう!」と決め、ペルーで生活を始めた。

ペルーで暮らして、早4年。
現地からお届けする、予想外で刺激的な日々。


クスコのお祭りで私が一番「嘘でしょ!?」と言いたくなるのが、毎年3月末にあるキリストの復活を祝うセマナ・サンタこと、聖週間だ。この時期は、ペルー人の正気の沙汰じゃない食べっぷりを目の当たりにする。

祭りの時期になると、一人暮らしの私を慮ってか、毎年大家さん一家の食事会に招待される。慣例に基づいた12品のコース料理で、肉料理は一切出ず、魚料理と野菜とデザートで構成されている。富士山と同じ標高に位置するこの街では、普段は鮮魚といえば鱒くらいしか手に入らないのだが、この時期は冷凍だけど様々な種類の魚介類が出回るので嬉しい。

近所に住む大家さんの妹の家に3家族が集合し、各家族が料理を持ち寄る。私は特大サイズの1.5Lの赤ワインを持参した。
コース内容は次のようになっている。

:セビーチェ(魚のマリネ)、イカフライ、茹でたさつまいも、トウモロコシ
:スープ(スパゲッティー、カニ、ムール貝入り)
:スープ(お米入り)
:スープ(じゃがいも、魚卵、かぼちゃ入り)

:カウサ(じゃがいも、アボカド、シーチキンが層になっている)
:野菜のパイ
:アマゾン川の魚の蒸したもの、チューニョ(乾燥したいもを戻したの)
:ライスプディング
:杏のコンポート

10:ゼリー
11:甘いスープ
12:チョコレートケーキ

昨年は残しては申し訳ないという思いから、限界を超えるまで食べていたので、今回は持ち帰るための容器を持参して行った。案の定3品目を食べ終える頃にはお腹いっぱいになり、一口食べては持ち帰り容器に詰めていく。だが、私以外の人は誰もそんなことをしておらず、ペースは落ちるものの、ペロリと全部平らげていた。

私はペルー人女性にはいない身長164cmの大柄で、よく食べる方だと思っていたけれど、ペルー人の食べっぷりには到底及ばないと痛感した。
高地ゆえの低酸素で暮らしていると肺が丈夫になると聞いたことがあるけれど、胃まで特別なんじゃないかとさえ思う。

食べ過ぎのまま翌朝を迎えると、外から生演奏が聞こえてきた。これも祭りの一部かと思って外に出てみると、どうやら大家さんの奥様への誕生日サプライズらしい。部屋に移動して、生演奏でのダンスパーティーが始まった。朝8時に突如始まったので、髪はボサボサでパジャマ姿のまま。参加するのが恥ずかしかったが、気にしてなどいられない。

大家さんの奥様は、こんなふうに誕生日を祝ってもらうのが初めてだったようで、涙ぐみながらお礼のスピーチをしていて、もらい泣きしそうになった。4人の子どもと義理の娘とママが大集合し、ドラマのような理想的な家族のあり方を見て、幸せをおすそ分けしてもらった気分。
両親の仲が良くなかった私は、多くのことを逃してきたのだろうなと、複雑な気持ちにもなったが、誰のせいにもしていられない。前を見て、自分の人生を楽しむしかないのだ。

今月のスペイン語

*次回は7月5日(金)更新予定です。

イラスト・写真/ミユキ

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