叫びたくもなるわ!厳しい自然とフィヨルドの絶景に打ちのめされる

ごきげんよう!
憧れの地形は「フィヨルド」のソロトリライター、ヤマダイクコです。

今回は2014年7月のノルウェー、フィヨルド観光(という名のちょっとした修行)の思い出をお届けします。
一人旅でしたが、スーツケースとずっと一緒に移動していたので、気分は二人旅!
※一人旅です。

フィヨルドは、氷河の浸食作用によるU字谷に海水が入り込んだ複雑な地形の湾。
ノルウェー語で「fjord」、ノルウェーに多く見られます。

フィヨルド→氷河が浸食→底の形(断面)がU字状→U字谷
リアス式海岸→河川が浸食→V字状→V字谷

「試験に出ますよ!」と、高校の地理の授業で教わっている時に、どうしても理解できないことが。
「氷河が地面を削るってどういうこと?」

どうやら地球上で、ものすごい時間をかけて、ものすごい現象が起きた結果、ものすごい地形になったようなのですが、ものすごすぎてイメージできない。
しかし、だからこそフィヨルドに憧れるようになったのかもしれません。

やがて、仕事に忙殺される荒んだ社会人になった私は、精神の自由と潤いを取り戻すため高飛びすることにしました。
フィヨルドが呼んでいる。


オスロからベルゲンへ13時間強の旅

ノルウェーには大小様々なフィヨルドがあり、楽しみ方は人それぞれ。
例えば、拠点とする町に連泊して、毎日違うフィヨルドを見に行くこともできますが、私は目的地ベルゲンまで移動しながらフィヨルド観光を楽しむことにしました。

ベルゲンはノルウェー第二の都市、ハンザ同盟繫栄の地です。
世界遺産「ブリッゲン」(ハンザ商人が建てた機能的な木造倉庫群)や、北欧最大級の美術館「コーデー(ベルゲン美術館)」があります。

それから、作曲家エドヴァルド・グリーグの出身地。
国内線・国際線が利用できるベルゲン空港もあります。

鉄道、フェリー、観光バスの切符がセットになった周遊チケットをインターネットで予約しました。
朝8時頃にオスロ駅を出発、夜9時過ぎにベルゲン駅に到着、13時間強所用。

ちなみに、飛行機の場合、オスロ・ベルゲン間は約1時間です。

複雑な地形により水運が発達。バイキングの時代(8~11世紀頃)も、ハンザ同盟の時代(12~17世紀頃)も、現在も、船は人と物資を運ぶ重要な乗り物。(1/6)

(1)ベルゲン鉄道:約4時間半

ベルゲン鉄道の指定席は4人掛けのボックス席で、ムキッとした父、ニコニコ優しそうな母、小学生(推定)の少年の3人家族と一緒に座りました。
気まずい。

通路側の席だったので、車窓を見ていると家族の様子も目に入ります。
うたた寝をする父をこっそりデジカメで撮る母、後で液晶モニターを見ながら笑い合う3人。

なんという、ハートウォーミング北欧家族!
沈黙を守り、無害な人を演じつつ、存在感の透明化を試みるという私の努力は実を結んだのです。

素敵な情景に出会えました。
ノルウェーに来てよかった!

ミュールダール駅で下車、フロム鉄道に乗り換えます。
ホームで1人、約50分の待ち時間を耐えるという試練。

雨が降りそうな空模様、そして寒さ。
これ、なんの修行?

スーツケースの持ち手をにぎっていると、心細い時は手をつないでいるような気がしました。置き引き防止にも。(2/6)

(2)フロム鉄道:約1時間

フロム鉄道はレトロな内装が素敵でしたが、乗客が多かったので車内の撮影は断念。
山岳鉄道は、緑豊かな山間を進みます。

大迫力のショースの滝で停車した時には、写真撮影のため列車を降りる人もいました。
突然音楽が始まり、遠くの岩(?)の上に一人のダンサーが登場。

驚きと、困惑と、心配とで、ただただ見守ることしかできませんでした。
ダンサーが去ると、何事もなかったように発車しました。

あっという間のできごとだったので、残念ながら妖精を撮影することはできませんでした。(3/6)

(3)フェリー(フィヨルドクルーズ):2時間強

フロム駅で下車、乗船の開始を待っていると強めの雨が降ってきました。
折りたたみ傘を使いましたが、スーツケースはずぶ濡れ。

お金がかかっても、荷物別送サービスを利用すればよかったかも、と考えました。
※オスロのホテルから、ベルゲンなどの目的地のホテルへスーツケースなどの荷物を送るサービス(有料)。

フェリーに乗船すると、大きな荷物は預けるよう指示されました。
朝からずっとスーツケースと一緒に行動していたので、保育園にわが子を預けるような気分、いや、保育園に預けられた子どもになったような気分になりました。

フィヨルドに集中するため、ホールの一番奥、窓際の席に座りました。
待ちに待った出航、フェリーはアウルランフィヨルドを静かに進んでいきます。

水面からそびえ立つ山々が、次から次へと現れます。
雨で輪郭がにじんで見えるのが幻想的で、水墨画の世界に入り込んでいくような心地がしました。

溜息しか出ない。
たくさんの乗客が、それぞれのカメラで風景を撮り始めました。

そして20~30分もすると写真撮影に飽き……もとい、心から満足した人々が宴会を始めました。
様々な言語の「乾杯!」の掛け声と、笑い声がホールに響きます。

おいおい、静かにしてくれ。
頼むから、フィヨルドにひたらせてくれ。

旅+酒→開放感→超絶ゴキゲン
出身地や言語、身なり、習慣は違っても人類みなきょうだい、我らホモ・サピエンス!

フィヨルドと私の静かなる対峙の時間はぶち壊されましたが、これはこれでおもしろいのでよしとしました。
耳栓を用意すればよかった。

フェリー出発までの待ち時間は約40分、お金に余裕のある方は売店へどうぞ。(4/6)

(4)観光バス:1時間強

山道での車酔いを心配していましたが、バスはフェリーのホールよりも静かなのでむしろ快適。
運転手の流暢な英語のアナウンスが聞こえます。

しかし、語調が独特(ノルウェーなまり?)だったため、残念ながら私には聞き取れませんでした。
途中、運転手のゴキゲンなアナウンスに車内が軽くざわつきました。

近くに座っていたアメリカ人(推定)の少年が「今、何て言ったの?」、父親が「ジョークを言ったみたいだよ」とヒソヒソ話しているのが聞こえました。

英語のネイティブでも聞き取れない英語がある。
乗客のほとんどが運転手のジョーク(?)を理解できなかった可能性がある。

そのまま機嫌よく話を続ける運転手のハートの強さへの畏怖。
まさかマイクを使ったひとりごと?

このバスを支配しているのは運転手だという気づき。
カルチャーショックが押し寄せました。

突然停車することが何度かありました。
最初は車内が軽くざわつきましたが(ここで下車しろと言われても困る)、「撮影ポイントらしい」と気づいた人が写真を撮り、その様子を見た他の人も写真を撮り始めました。

一時的な集団内における勢力均衡と、非言語による情報伝達。
言語の垣根を越えろ、我らホモ・サピエンス!

撮影ポイントでは、旅の記念になる素敵な写真が撮れました。
ごつごつとした岩肌の山々、緑の草原や木々を太陽が照らす、ここでしか、今だけしか見られない景色。

巨人やトロルの伝説は、この環境が育んだのだと理解しました。

奇跡的に青空に恵まれました!(5/6)

(5)ベルゲン鉄道:約1時間半

ベルゲン駅に到着、スーツケースを引きずり、やっとのことでホテルにたどり着いたのが22時前。
疲れ果てた私は、夕食抜きで眠りました。

朝から晩まで移動。
長く、濃密な一日でした。

翌日、ベルゲンの街を散策しました。
ベルゲンの街が一望できるフロイエン山(標高320m)に歩いてのぼりました。

山道は人気がなく、巨大なナメクジ(体長10cm前後)もいるので若干後悔しましたが、汗だくになりつつ約1時間で登頂!
安全・快適なケーブルカーを推奨します!(頂上まで約7分)

高いところにはとりあえずのぼってみたい(テントウムシと同じ)。(6/6)

オスロを出発してから曇天か雨、薄暗く冷えるので何度も心が折れそうになりました。
大自然が壮大で美しすぎて容赦ないので、ライフがゴリゴリ削られていく。

人間という生き物の小ささ、弱さ、孤独を思い知らされる。
それでも、山の上でさわやかな風を感じながら景色を見渡すと、胸がすっとします。

「ヤッホー!」と力いっぱい叫びたい衝動が湧き上がってきました。
「叫び」といえば、ノルウェーの画家、ムンクの絵。

あの絵の中の、叫んでる人の気持ち、今ならわかる。
叫びたくもなるよね、私も叫びたい!

ああ、白飯(しろめし)がほしい!
※ホテルの朝食のサーモンがとてもおいしかったため、白飯を渇望していた。半身のサーモン(塩焼き)を、皮を下にして大皿にのせたダイナミックかつ夢のような盛りつけ(添えられた大きなスプーンで各自取る)。

最後に一言。
移動中、車内販売等で昼食を買おうと考えていましたが、シャイな私に対面販売はハードルが高すぎて、持っていたパンやクッキーでしのぐことに。

食料調達は計画的に!

それではごきげんよう、よい旅を!


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