「来店客の8割が外国人」アニメの街・秋葉原で中古ソフビ人形が倍以上急騰 人気の背景にはタトゥー文化も

外国人に人気ゴジラのソフビ人形 撮影/編集部

「1日にお店で買い物をするお客さんは70組ほど。そのうち8割は、外国人観光客の方ですね」

弊サイトの取材にそう語るのは、電化製品のみならずアニメやゲーム、フィギュアなどの街としても知られる東京・秋葉原で、ソフビ人形(ソフトビニール人形)の販売を行なう『まんだらけCoCoo』の藤田哲平店長だ。

現在、ウルトラマンやゴジラといった人気キャラクターのソフビ人形は空前絶後の大ブーム。お笑いコンビ・バットボーイズの佐田正樹(45)やイジリー岡田(59)といった人気芸人もこぞって、自身が配信するYouTubeチャンネルでソフビ人形を特集している。だが、なぜ外国人観光客の間でもソフビ人形熱が盛り上がっているのだろうか。

「コロナ禍が明けて、マニアの方が来日しやすくなったのが1番の理由でしょう。そこに円安の追い風が吹いて、購入意欲が高まっているのだと思います。海外でもソフビ人形は売られていますが、取り扱われている種類が少ない。安くて良質なソフビ人形が数多く扱われている日本のお店は外国人の方には魅力的に映るようです」(藤田店長)

秋葉原でも家電量販店を中心に、外国人観光客の間では爆買いがブームだ。高級家電が飛ぶように買われていくというが、『まんだらけCoCoo』でも同じような現象が起きているのだろうか。

「1番多いのは1万円〜2万円をお店で使っていくお客さんですね。こういった方々は投資対象としてソフビ人形を“爆買い”しているというわけではなく、好きなキャラクターの人形を購入しているという方ばかり。鉄板で人気があるのは、海外でも映画やアニメが放送されているゴジラやウルトラマンの人形ですね」(前同)

外国人観光客に人気のウルトラマン 撮影/編集部

来店客の出身地域により、興味を示すソフビ人形のジャンルにも違いがあるという。

「アジア圏から来るお客さんは、インディーズと呼ばれる分野のソフビ人形を購入されることも多いです。インディーズとは、製作者がオリジナルで作った空想のキャラクターを形にしたソフビ人形のこと。

人気製作者の方はBEAMSなどのアパレルブランドともコラボ商品を発売していますね。独特のデザインが人気を集めてか、商品によっては1体100万円を超える価格で中古市場にて取引されることも珍しくありません」(同)

アジア圏からの観光客に人気のインディーズ系ソフビ人形 撮影/編集部

■欧米圏から『まんだらけ』へと来店する“アーティスト”とは

アジア圏から店舗を訪れる来店客が独自のデザインのソフビ人形を探し求めるのに対して、特定の職業に就く人が欧米圏からの来店客には多いという。

「目立つのは彫り師の方たちですね。デザインを体に描くという仕事ですから、異国のキャラクターカルチャーに興味を持ちやすいのかもしれませんね。先日もウクライナからタトゥーアーティストの方が来店されました」(前出の『まんだらけCoCoo』藤田店長)

国内のフィギュア収集家のみならず、国外の来店客からも熱い視線が注がれる中古ソフビ市場。高価格で取引がされるのは、どういった商品になるのだろうか。

「今、店舗の在庫にある商品で1番価格が高いのは、1970年代に売られていたオマージュ商品のガラモン(『ウルトラシリーズ』に登場する怪獣)です。発売価格はまだ決めていませんが、30万円超えでしょうか。

当時売られていたオフィシャル商品のガラモンは人気があり過ぎて、手に入らない。そんな人がオマージュ商品を購入していたんでしょうね。当然ですが中古市場に出回るガラモンの数はオフィシャル商品に比べてオマージュ商品の方が圧倒的に少ない。マニアの方はレアリティ(希少性)が高い商品を欲しがりますので、人気商品の場合はオマージュ商品の価格も中古市場では跳ね上がりますね」(前同)

一方で、現在、市場で進むソフビ人形の高価格化の波に藤田店長は疑問も感じているようだ。

「お店にある商品は4〜5年前に比べると、すべて倍以上の価格がついています。今の価格は少し過熱しすぎかなと……。ソフビ人形は日本の文化ですし、高価格化したタイミングで海外のお客さんだけが買っていってしまうのは寂しいですよね。国内から1つも商品がなくなってしまうと、次に海外からお客さんが来日したタイミングでも楽しませることができません」(同)

円安の影響で現在、日本の都心部にある好立地のマンションは外国人投資家にどんどん買われているというが、ソフビ人形までも海外に流出してしまうのだろうか――。

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