左目を失明した2児の母「子どもの姿も見れなくなってしまう…」右目も徐々に視野が欠けていく恐怖の中、母がとった選択とは

いつか子どもたちの姿も、家族の笑顔も完全に見えなくなる日が来るかもしれない。そうなったとき、あなたは後悔しない人生を送っていますか?

そう私たちに問いかけるのは、SNSでとして発信している山岸はるな(@baby_hana)さん。山岸さんは今年の5月にベビーマッサージ&資格取得スクールHANAをオープンし、講師として活動しています。

山岸さんは先天性白内障という病気で幼少期から治療していましたが、その後緑内障を併発。左目を失明してしまいます。そして現在右目も緑内障とわかり、目薬、内服、通院治療を続け進行を遅らせながら生活しています。

6月7日は「緑内障を考える日」。
2児の母でもあり、3人目のお子さんを妊娠中の山岸さんが、病気に対してどう向き合っているのか、そしてなぜベビーマッサージ講師という仕事を選んだのかを聞きました。

徐々に視野が欠けていく恐怖

緑内障により左目の視力を失った山岸さん(@baby_hanaさんより提供)

先天性白内障とは、生まれて間もなく目の中の水晶体という部分が白く濁り、視力低下をもたらす病気です。

対して緑内障は目の奥にある視神経に異常が起こり、見える範囲が徐々に狭くなったり、視野の一部分が欠けて見えなくなります。現在の緑内障治療は進行をゆっくりにすることはできるのですが、完治するには至っていません。

山岸さん自身も白内障という病気が緑内障を併発することを知っていたので、いつかそうなるかもしれないという心の準備はできていたそうです。

しかし、自身が失明するとは思いもしなかったそう。当たり前に見えていたものがある日を境に徐々に見えなくなっていくという恐怖は計り知れません。完全に視力を失ってしまったときは、とても悲しく辛かったと山岸さんは話します。

現在、左目の視力を失い、右目で見える範囲で生活している山岸さんですが、やはり片目だけでは、物や壁との距離感がうまくつかめなかったり、狭い視野での車の運転は人一倍気を使ったりと生活の中で神経を張りつめる場面も多いと言います。

また、見えない左側から声をかけられても気づけないことも多く、危険を察知できず人に助けてもらう機会が増えたといいます。

前向きに生きる姿を見せたい 考え方を変えてくれた子どもたちの存在

現在は右目の視力低下を治療により遅らせながら生活している山岸さんですが、以前は「両目とも見えなくなったら人生終わりだ」と思っていたそうです。

しかし、緑内障の診断がおりた今「なってしまった事実はいくら嘆いても変えられない」「自分が今、できることをやる!」と前向きな姿勢でいます。そのように思えるようになったのは、お子さんたちの存在が大きく影響しているようでした。

山岸さんはもともとマイナス思考で何事も考え込んでしまうタイプだといいます。自分自身のことや病気のことをなかなか受け入れられず、悩んでいた時期が長かったそうですが、お子さんが生まれたことをきっかけに考え方が変わってきたといいます。

「後ろ向きな発言ばかりしていると自然と上手くいくことも上手くいかなくなるんです」
「マイナス思考でクヨクヨ悩んでいる姿より、病気でも人と違う見た目でも前向きに生きている姿を子どもたちに見せたい」

そんなふうに考えられるようになり、山岸さんはある大きな挑戦をします。

1分1秒でも長く子どもたちの成長を見ていたい

家族とお出かけを楽しむ山岸さん(@baby_hanaさんより提供)

山岸さんはもしかすると、他の人より早い段階で子どもたちの姿を目で見ることができなくなってしまうかもしれません。そんな不安と日々戦う山岸さんに、家族や子どもたちとやりたいことを聞きました。

「旅行したり、おいしいものを食べたり家族と楽しい思い出をいっぱい作りたいです」と答えてくれました。現在は家族でディズニー旅行に行くためにがんばっているのだそう。

不安を抱える中でも、クヨクヨせずとても前向きな回答に勇気をもらえますね。

視野が狭いことで遊び場で走ってきた子どもとぶつかってしまったり、保育園の掲示板の中のお子さんの名前が見つからず一苦労したりと子育てをする中でも度々神経を使うそうです。

母親の病気について、子どもたちはどう感じているのでしょうか。

最近になって、4歳の息子さんが「ママ、こっちの目、どうしたの?」と、自分の目の様子と違うことに気づいて尋ねてくることが増えたそうです。そんなとき山岸さんは、病気のこと、視力がなくて見えないことをしっかり伝えるように心がけているのだそうです。

そうすることで幼いながらも自分なりに理解し、階段を降りるときに何も言わなくても手を貸してくれ、助けてくれることもあるそうです。

「大好きなママが困っているなら助けたい」お子さんのその気持ちが自然に生まれてくるのは、山岸さんがお子さんとしっかりと向き合って気持ちを伝えあっているからなのでしょうね。

育児と仕事の両立 自分のやりたい!をあきらめない生き方

練習用人形でベビーマッサージの練習する山岸さん(@baby_hanaさんより提供)

山岸さんは、眼の病気の他にも適応障害などの精神的な疾患があり、家事と育児、そして仕事の両立が難しく感じることが多かったそうです。専業主婦として家庭のことに専念していた時期があったそうですが、次第に収入0の自分とやりたいことを我慢している自分に不満を感じるようになりました。

在宅で自分のペースでできる仕事はないかと探していたところ、ベビーマッサージ講師という仕事と出会い、資格取得に踏み切ったのだそうです。資格取得までの道のりは、楽なものではありませんでした。

このとき山岸さんは子育て真っ最中。2人目のお子さんは自宅保育だったそうです。家事と育児で手一杯だったところにベビーマッサージの勉強時間を組み込まなければならないとなると、1日が24時間では足りないくらいですよね。

足りない時間は、朝1時間早起きをして勉強時間にあてたり、ベビーマッサージの練習用のお人形に1日1回はふれるようにし、スキマ時間でコツコツ勉強したことで乗り越えたのだそうです。

ベビーマッサージ講師の仕事とSNS発信

ベビーマッサージ講師という仕事を選択した山岸はるなさん(@beby_hanaさんより提供)

山岸さんにとって、ベビーマッサージ講師という仕事は『子どもとの時間』『家族との時間』『自分の時間』『収入』『心の余裕』そのすべての理想がつまった仕事だといいます。

山岸さんが最初にSNSでの発信を始めたきっかけは、開業するベビーマッサージ教室をお客さんに知ってもらうためでした。

当初は病気により両目左右の見ためがかなり違っていることや、眼瞼下垂があることでSNSで顔出しして発信するには抵抗があったそうです。

しかし、ベビーマッサージ講師という職業に出会い、勉強していく中で、自分のように病気で思うように働けない方や、見た目に悩んでいる人に少しでも勇気を与えたいという気持ちへ変化していったといいます。

山岸さんは今後も働き方や病気について悩みを抱えている女性のサポートや緑内障についての理解が広がっていくよう発信し続けたいと話します。

大切な子どもたちのため、家族のため、自分を大切にするため。それを叶える働き方を見つけ、自ら切り開いた山岸さんの生き方は、多くの女性やママたちの希望があふれているように感じました。

ベビーマッサージHANAおうち教室(@baby_hanaさんより提供)

ほ・とせなNEWS編集部

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