目に見える結果と目立たない効果的な仕事。ミャンマー戦で日本の全5ゴールに関与した1トップ小川航基の“引力”を読み解く

[W杯予選]日本 5-0 ミャンマー/6月6日/トゥウンナ・スタジアム

森保一監督が率いる日本代表はアウェーでミャンマーに5-0で勝利。すでに最終予選進出は決まっていたが、広島でのシリア戦を残して首位で2次予選突破を決めた。

第二次森保ジャパンで初めて3-4-2-1にトライしたなかで、主役級の働きをしたのは、左ウイングバックで先発し、17分に先制ゴールを決め、終盤には左シャドーのポジションでも5点目のゴールを挙げるなど、輝きを放った中村敬斗だ。

しかし、ここで筆者は1トップの小川航基に注目したい。1トップの仕事は4-2-3-1でも3-4-2-1でも大きくは変わらないが、後者では2シャドーがいるので、基本的にはあまり動き回らずに深みを取って、二列目やワイドにプレースペースを提供することが、主な仕事になる。

そのなかで必要に応じてポストプレーやシャドーとのコンビネーションも求められてくるが、基本は最前線で地味な仕事をこなしながら、最終的に来るチャンスを逃さないことが求められる。

この基準において、ミャンマー戦の小川はかなり効果的なプレーをして、勝利の流れを引き寄せたと言える。中村による1点目は右サイドでのボール奪取から中盤の守田英正、旗手怜央を経由して、この日は左シャドーに入っていた鎌田大地の見事な展開から中村が縦に仕掛けて、カットインから相手の股下を抜いた。

ボールの動きだけを追っていると小川は目立たないが、中村にボールが送られる流れで直線的に中央を駆け上がり、ミャンマーのディフェンスが中村に集まらないようにしている。そこに右シャドーの堂安律も連動したことで、戻った4枚のディフェンスのうち、2枚は彼らの側に分散されることとなった。

もちろん小川も堂安も、中村がクロスやラストパスも選択できるように、あるいはシュートがGKに弾かれた場合に詰めて流し込めるように意識していたはずだが、結果的に中村が決め切るシチュエーションを助けた形だ。

堂安によりもたらされた2点目でも、小川の“引力”がゴールに少なからず影響を与えた。日本がボールを持って押し込んだところから、左センターバックの伊藤洋輝による縦パスを起点に、左の中村が中に仕掛けて鎌田がシュートに持ち込むが、ポストに弾かれたボールを中央に詰めていた堂安が左足で流し込んだ。

ここで小川はゴール前の中央で中村のクロスに合わせにいく構えを見せ、センターバックのテッ・エイン・ソーとチョウ・ミン・ウーを押し下げたことで、鎌田がボールを持って前に向くスペースが与えられた。

そこで左から自分ではなく、インに向いた中村が鎌田にパスを出すと、小川はすぐ外側に開いて鎌田のシュートコースを広げる動きを見せている。それが結果的に、元々は右の外側だった堂安の方が中よりで、先にこぼれてきたボールを流し込むことになったが、少しズレていたら小川のゴールチャンスになっていたかもしれない。

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そこからしばらく追加点が決まらない状況で、森保監督は4枚を交代したが、システムは3-4-2-1のまま、しかも1トップの小川はそのまま出続けた。

3点目がもたらされたのは75分。小川によるゴールだった。後半途中から右シャドーに投入された鈴木唯人を起点に、右ウイングバックの相馬勇紀が中に切り込みながら左足でクロスを上げると、小川がタイミング良く相手マークを外して得意のヘッドで合わせた。

さらに83分、自陣のビルドアップから、アーリー気味に出した相馬のクロスが相手ディフェンスに当たると、小川がノートラップでターンしながら左足で捉えてゴール右に流し込んだ。

そして後半アディショナルタイム、左シャドーにポジションを移していた中村による、ダメ押しとなるゴールをアシストしたのも小川。ボランチに投入された板倉滉の楔のパスを受けた小川の粘り強い落としだった。

終盤はミャンマーも前半に比べると、やや間延びしており、小川が直接フィニッシュに関わりやすくなっていたのは確かで、3、4点目のゴール、5点目のアシストという数字に残る仕事をしたのは素晴らしい。

しかしながら、その前に3-4-2-1の最前線で、地味ながら効果的な仕事をこなしたことは、森保監督や代表スタッフの評価につながるはず。おそらく次のシリア戦は上田綺世が1トップで起用されると予想されるが、小川が目に見える結果、目立たない仕事の両面で価値を示したことにより、さらにFWの競争がハイレベルで、激しいものになっていきそうだ。

文●河治良幸

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