伊藤あさひ、演技とは「役を通して自分の本質を見せること」 俳優としての転換点を語る

“絶対BLになる世界”で、BL恋愛フラグに必死に抵抗するモブの愉快な(?)日々が帰ってきた。

これまでにドラマ『絶対BLになる世界vs絶対BLになりたくない男』は2シーズン放送され、BLジャンルにおける“あるある”がファンの共感を呼んだ。4月23日よりLeminoにて独占配信が開始された『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男 2024』は原作の第4巻をドラマ化したもので、モブ(犬飼貴丈)に恋する菊池(伊藤あさひ)の前に、ライバルとなる旗野(世古口凌)が現れる。

リアルサウンド映画部では菊池を演じる伊藤あさひにインタビュー。『絶対BL』の前作から2年が経ったいま、伊藤に訪れた変化を聞くと、『下剋上球児』(TBS系)の出演が大きなターニングポイントだったとの答えが。そんな伊藤が考える、“今の自分自身”について迫った。

■「(芝居は)その場の瞬間を大切にするようになりました」

ーー今作は、モブと菊池の関係性にとって大きな転換点が生じるシーズンでした。どのようなことを考えて演じられましたか?

伊藤あさひ(以下、伊藤):『絶対BL』のシーズン1とシーズン2のときは菊池のかわいい部分を意識して、モブにどう好きになってもらえるか、どう視聴者の方々に応援してもらえるキャラクターにするか、常に考えていました。今作は菊池のライバルとなる旗野が登場するのですが、菊池は旗野にすごく嫉妬してるんだなと感じ、その強い部分を少しずつ出していけるように意識をしました。

ーー演技の上で何を意識したのでしょうか?

伊藤:シーズン1とシーズン2に加えて、今作も犬飼(貴丈)さんと一緒に撮影を行ったので、心強かったです。でも、旗野へのジェラシーのようなものをどこまで出していくかが難しかったです。台本を読んでいたときは、旗野と一緒にいるときや声をかけるシーンを、どのくらいのテンションで演じるべきかを考えていたのですが、実際現場に入った時に改めて考えてみると「このタイミングで声かける菊池はだいぶやり手だな」などいろいろ感じて(笑)。そうした部分から気持ちが少し強くなりました。

ーーコメディ感が強い本作の中でも、菊池は1番リアリティを感じるキャラクターだと思いました。

伊藤:そうですね、作品自体コメディ要素は強いですが、菊池自体はシリアスなキャラクターだと思って演じています。

ーー前シーズンから2年ほど経ちましたが、犬飼貴丈さんとは現場でもいろいろ話されましたか?

伊藤:犬飼さんとはこの『絶対BL』がない期間にも『ひともんちゃくなら喜んで!』(ABCテレビ)で共演させていただきました。ご一緒させていただく機会が多く、仲良くさせていただいていて、今回もいい雰囲気の中、撮影に臨むことが出来ました。『絶対BL』の撮影はスタッフさんも含め、毎回温かい現場です。

ーーこの2年間でも様々な作品に出演されていた印象があります。俳優として、この2年で変わったと感じていることはありますか?

伊藤:昔よりも、お芝居をするとき、その場の瞬間を大切にするようになりました。以前は自分発信といいますか、どういうキャラクターにしようという考え方が強かったように思います。今は相手との“瞬間”を大事にしようと思うようになりました。お芝居を固めたりする事などははしなくなった気がしています。

ーー転換点となる出来事は何だったのですか?

伊藤:自分が感じたことを大切にしようと思ってきたこともあり、徐々に変化していきました。その中で、『下剋上球児』(TBS系)の撮影では塚原あゆ子監督がそのやり方を大事にしてくださる監督だったので、「もっと自分の好きなように演じてみよう」という思いで演じました。結果としてその事を受け入れられる瞬間がたくさんあり、成長する事が出来た作品になったと思いました。

ーー受け入れられるというのは、自分の演技そのものが?

伊藤:むしろ「お芝居をしない」という感じです。「切り取りたいところは私たち制作側が切り取るから」「君たちはそこにいればいい」というか。台本ももちろんありましたが、自分が思ったことは台本に書いていなくても演じて大丈夫、という現場でした。「いろいろやってみてもいいんだ」と感じたのは、恐らく僕だけではなく、他のキャストもそうだったと思います。勉強させていただくことができてとてもありがたかったです。

ーー本作は劇中劇も印象的でした。過去に学校で芝居をした経験の中で印象的な思い出を教えてください。

伊藤:小学生の頃に、転校した学校でやった『ルパン三世』の劇が1番印象に残っています。転校して2年目なのになぜか主役のルパン役に抜擢されました。その事が印象に残っていて。しかもその後『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(テレビ朝日系)でルパンレンジャーを演じて。ルパンには縁があるなと思います。

ーーそのときの舞台の光景を覚えてますか?

伊藤:ぼんやりと覚えています。自分の目線ではなく、体育館の1番後ろの高い視点からの、俯瞰した視点で……。自分が舞台に立っていた光景をとても覚えています。

ーーそのときから演技に興味を持っていたのですか?

伊藤:この仕事を始めたのは高校2年の頃なので、小学生の頃は演技のお仕事をしたいとは、考えてもいなかったです。

ーーちなみに俳優を始めたきっかけは何だったんでしょうか?

伊藤:きっかけはスカウトです。その後、演技の勉強するためにレッスンを受け始めました。当時は結構引っ込み思案だったこともあり、演技をすることが難しかったです。演技の勉強を続けていく中で、稀に役を通して自分の本質が出るというか、自分の本当の感情が役と繋がったりする体験がありました。人に見られたくない、見せたくないような自分の内側を、役を演じることによって表に出せた瞬間もありました。その気持ち良さを感じる事が出来てからは、演技が楽しくなりました。

ーー最近、そういう点で印象的だった役はありますか?

伊藤:『下剋上球児』です。球児として共演者の方々とずっと一緒に過ごしましたし、いろいろと恥ずかしい部分をも見せていたのかなと思います。自分の出せない部分を、役で演じているが故に出せたのかなと思っています。

ーー本作が配信されたタイミングは新生活が始まってきた時期になります。加えて『絶対BL』はキャストの人数がとても多いことも特徴的です。人間関係が大変なときもあると思うのですが、そういうのを“上手くやれる”タイプかどうかを教えてください。

伊藤:得意ではないです(笑)。ですが、挨拶はしっかりとします。1日だけ共演する方もいらっしゃるので、挨拶は徹底しています。他の現場でご一緒する機会があると、たとえ『絶対BL』で同じシーンがなかったとしても「『絶対BL』で一緒でしたね」と挨拶をさせていただいて、会話をするきっかけにもなったりするので。

ーー自分から行くタイプですか?

伊藤:自分が知っている方や共演者の方には積極的に挨拶に行きます。

ーー他に意識していることはありますか?

伊藤:一周回って、僕は自分が自然体でいることを大事にしています。 もちろん挨拶や、人として最低限守るべきマナーはしっかりした上で、本当ではない自分をずっと出していたとしても、どこかで息が詰まったりすると思うので。人の目を気にしすぎると、どうしても苦しい部分がいろいろ出てくると思います。なので、自分を大切にすることが大事だと思っています。

ーー最後に本作のおすすめポイントを教えてください。

伊藤:登場するキャラクターが多くて、毎回クスッと笑えるシーンもありまし、菊池が登場するシーンでは少しシリアスなドラマの雰囲気もあります。いろいろな要素が詰まっている作品なので、どんな方でも楽しめるのかなと。毎シーズン楽しんでいただいている方には、 キャラクター達がどうなっていくのかを含めて1人ずつ応援できると思います。1話完結で、気軽に観られる作品なので、たくさん観ていただいて、早く皆さんの感想を聞きたいです。
(文・取材=間瀬佑一)

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