木村拓哉×塚原あゆ子の“映画力”ならば間違いない? 『グランメゾン東京』映画化は納得

木村拓哉主演ドラマ『グランメゾン東京』(TBS系)が、スペシャルドラマに続き、映画化されることが発表された。映画の舞台となるのはフランス・パリ。ドラマ第1話の始まりの場所なだけに、これ以上ふさわしい舞台はないだろう。

映画『グランメゾン・パリ』では、主人公・尾花夏樹を演じる木村を中心に、ドラマのキャスト・スタッフが再集結。詳細はまだ発表されていないが、果たしてどんなスケールの物語になるのか。ドラマ放送時、毎週楽しんでいたというライターの木俣冬氏は、『グランメゾン東京』の魅力を次のように語る。

「『グランメゾン東京』が放送されたのは、2019年10月期でコロナ禍に入る直前のタイミングでした。“レストランで食事を楽しむ”という行為は、コロナ禍でしばらく禁じられるような形になってしまったこともあり、本当にギリギリのタイミングだったんだなと今振り返ると感じます。木村さんをはじめとした脇役までピッタリなキャスト陣が魅力的な本作でしたが、主役はなんといっても料理。品川のフレンチレストラン『カンテサンス』の岸田周三シェフが料理監修に入られていることもあり(※『グランメゾン・パリ』では「Restaurant KEI」の小林圭シェフが監修)、美しく美味しそうな料理の数々を観ているだけで満足してしまう部分がありました。『半沢直樹』をはじめとした池井戸潤原作が多くこの枠でドラマ化されていたこともあり、企業もので巨悪を倒す男たちという漠然としたイメージが日曜劇場にはついていたと思うんです。そんな中で本作はレストランという近年の日曜劇場にはなかった場所を舞台に据えた。そして、鈴木京香さんが演じていた女性シェフ・倫子がとっても魅力的で、男たちだけの戦いの物語にしなかったこともあり、女性の視聴者からも高く支持されていた印象があります。群像劇を巧みに描ける黒岩勉さんの脚本力と役者の魅力を引き出す塚原あゆ子監督の演出、そして真ん中で作品を牽引できる木村さんのスター力とすべての要素がカチッとハマっていた。今でもバラエティの食レポなどで尾花のポーズ(美味しいものを食べたときに上を見上げる)を真似する方がいますし、放送から約5年経ちましたが、まだまだ多くの人の記憶に刻まれている一作なのではないでしょうか」

テレビドラマの映画化作品はこれまでも多く作られてきたが、果たして『グランメゾン東京』も“成功”となるのだろうか。木俣氏は「映画化と相性がいい作品」と語り、その理由を次のように述べた。

「ドラマ放送時から本作の魅力はそのスケールにありました。“映画だからスケールを大きくしないといけない”という理由で海外ロケを実施したり、ゲスト俳優をたくさん加えたり、舞台を無理やり大きくするドラマの映画化作品が少なからずあります。でも、本作はそもそものスタート地点がパリ。物語が海外で展開される必然性がありますし、華やかな料理たちも映画の大スクリーンになることによってさらに映えると思います。また、塚原監督は叙情的な映像を切り取るのにも長けている方。ドラマだからといって役者の顔のアップばかりでつなぐことをせずに、水たまりや雪など風景を使って、キャラクターの感情を映像として見せてくれる。パリの風景も映画のスケールに落とし込んでくれるのではないでしょうか。塚原監督は2023年に放送された『下剋上球児』(TBS系)や、映画『わたしの幸せな結婚』でも際立っていたように、実はアクションの魅せ方もひじょうにうまいです。『グランメゾン東京』はアクションありきの作品ではないですが、各料理人たちの料理シーンもよりダイナミックにスクリーンに映し出してくれるのではないかと思います」

そして、主演を務める木村拓哉について、「その存在が“お祭りの中心人物”とよべる数少ない役者」と木俣氏は続ける。

「木村さんはいくつもの代表作がありますが、『グランメゾン』シリーズも今回の映画化によって、木村さんを象徴する一作になったと思います。木村さんは平成が生んだ紛れもない“スター”であり、この人が出演するなら映画館で観てみたいと思わせてくれる“お祭りの中心人物”のような存在だと感じています。スケールの大きい作品、かつ豪華キャストが揃う作品は、真ん中に立つ人が当たり前ですが重要です。演技が上手な俳優はいても、なかなかその役割を担える俳優は少ない。木村さんと“戦う”ような形で共演者はどんどん魅力的になるので、映画という場所で今度はどんな化学反応が起きるのかひじょうに楽しみです」

スペシャルドラマの放送、そして映画と、『グランメゾン』でお腹を満たす2024年の冬になりそうだ。

(文=石井達也)

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