鯉のエースが歴史的偉業を成し遂げた。広島・大瀬良大地(32)が7日のロッテ戦(マツダ)で史上90人目、102回目となるノーヒットノーランを達成。打者31人に対し、129球、5つの四球を出しながらも最後まで「H」マークを記録させず同球場では初の金字塔を打ち立てた。球団では2012年の前田健太(現タイガース)以来、史上5人目の快挙となった。ここまで紆余曲折あった〝不死鳥右腕〟の「モチベーション」とは――。
背番号14の雄姿と快投に、本拠地スタンドに詰めかけた鯉党が酔いしれた。4点リードの9回二死一、二塁。2者連続の四球で思わぬピンチを招いたが、最後の力を振り絞って打者ポランコを右飛に仕留めると、大歓声が一斉に湧き上がった。
駆け寄ったチームメートから次々にウオーターシャワーの祝福を受けた大瀬良は「まだ信じられない。自分のことじゃないような気持ち」と歓喜を爆発させた。
昨季まで5年連続で開幕投手を務めるなど「エース」と言われながらも2年連続で2桁勝利を達成できず、オフには右ヒジを手術。今季は文字通り「復活」を期すシーズンだ。大卒1年目の2014年から鯉の先発陣を支え続けてきた右腕も今季でプロ11年目。今月17日には33歳を迎えるが、これまでの〝勤続疲労〟や年齢的な「衰え」にも徹底的にあらがう覚悟を決めて臨んでいる。
中でも強い使命感を持っているのが「自分の(投げる)姿で、これからも見せていけたら」と言い切るように、プロの投手として右ヒジにメスを入れても「なお、第一線で活躍すること」だという。実際に自らは3度も右ヒジにメスを入れた。その上で大瀬良は次のように言う。
「最近は若いアマチュアの子とかも、よく手術する子が増えているという現実を聞くので。手術をしないのが一番ですけど、仮にそうなったとしても『頑張れているぞ』という道しるべじゃないですけど、こういう人間もいるよと」
「手術」という選択に踏み切った投手が、その過程を経て「進化」する――。その先駆者でありたいという強い思いだ。
快挙達成後にエースは「(手術からの再起は)なかなか簡単ではない。本当にいろんな方の支えがあってマウンドに立てていますし、そういう方たちが、喜んでくれているんじゃないかなと思います」と述べ、あらためて周囲のサポートに感謝の意を示した。今季9試合目でのベストパフォーマンスにより規定投球回にも到達し、同僚の森下を抜いて防御率も1・07とリーグトップに躍り出た。
今後のキャリアでも、球界の不死鳥投手としてトップランナーであり続けることが、鯉のノーヒッターの最大かつ最高のモチベーションだ。