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【経済ニュースの核心】
「バブル期を彷彿とさせる光景だ」
金融庁関係者がこう懸念しはじめている市場がある。銀行が融資を急増させているアパート・マンション向けローンだ。
日銀が4月に公表した「金融システムレポート」にも、不動産関連市場について「価格の面では、全国の『商業用不動産価格・賃料比率』がミニバブル期の水準を上回っている。こうした傾向は、都心の商業地区において顕著である。局所的に高額帯の取引が増えており、一部に割高感が窺われる」と警鐘が鳴らされている。にもかかわらず、銀行はバブルと知りながらアパート・マンションローンに突っ込んでいるのだ。
とくに1億円を超すマンションが飛ぶように売れる首都圏に越境参入しているのが地方銀行だ。「地銀は人口減少から地元で融資が伸びない中、富裕層を中心とした旺盛な資金需要を求めて、都心の不動産市場に進出している。アパマンローンはその主戦場だ」(メガバンク幹部)という。
地銀がアパマンローンに恋々とするのには理由がある。「近年、低金利を利用してアパート・マンションの投資に乗り出す富裕層が増えている。資産形成と相続対策を目的とするものだ。地銀が主ターゲットとしているのもこの層だ」(同)というのだ。賃貸用の不動産は相続時の節税効果が見込めるため、銀行から資金を借りてでも賃貸用物件を購入しようとする富裕層は後を絶たない。首都圏に進出している地銀では、こうした富裕層に相続対策のコンサルの一環として賃貸用物件への投資を勧めているのだ。
堅実経営で知られる静岡銀行もその一行だ。「静岡銀行は“シブ銀”とも呼ばれるほど、融資のヒモが固い銀行だが、相続対策向け融資、資産形成を目的とした融資に特化した専門部署を設け、県外の都市圏に住む富裕層向けアパマンローンで攻勢をかけている」(関東の地銀幹部)という。富裕層の中には、医師や弁護士、公認会計士らがピックアップされているようだ。
■スルガ銀行の二の轍を踏まなければいいが…
だが、静岡の地銀では、2018年にスルガ銀行が同じ首都圏の富裕層をターゲットにシェアハウス投資を積極的に働きかけ、不適切融資が横行したとして金融庁から業務改善命令を受けた事例がある。「静銀が同じ轍を踏むことはないだろうが、これから金利が上昇局面入りする過程で、借り手が返済に苦慮し、不良債権化するリスクは付きまとう」(メガバンク幹部)との指摘も聞かれる。
いつか来た道にならないことを祈るばかりだ。
(小林佳樹/金融ジャーナリスト)