人気漫画「柚木さんちの四兄弟。」ドラマ化 原作者にインタビュー 伝えたい「きっと誰かとつながってる」

パソコンやモニターが並ぶ作業机で執筆する藤沢さん

 広島市在住の漫画家藤沢志月さんによる人気漫画「柚木さんちの四兄弟。」が、NHK夜ドラ(総合、月―木曜夜)でドラマ化された。2年前に突然両親を亡くした兄弟4人が支え合い、成長する物語。ご近所さんや学校を巻き込んだドタバタ劇からは、こんなメッセージも伝わってくる。「あなたはひとりじゃない」―。

 長男の隼は2年目の高校教師。中1の尊と湊、小1の岳の親代わりとして奮闘している。夜中にテストを作り、早朝から家事に追われる日々。兄の負担を軽くしたいと、3人の弟たちはあれこれ思考を巡らせて…。

 ドラマの制作統括を務める映像制作会社テレパック(東京)の三本千晶プロデューサー(29)は「どの登場人物にも共感できる」と話す。例えば末弟の岳が忙しい隼に気を遣い、参観日があることを隠す回。「人に頼れずに『自分で解決しなきゃ』と思う人はいる。子どもでも、大人でも。それは私自身の性格とも重なる」と三本さんは振り返る。

 岳が参観日を隠している理由を知った尊と湊が、岳の気持ちを推し量りながら策略を練る。隼の同僚たちもサポート。コミカルな展開に笑いながら、気づけば目の奥が熱くなる。「家族に友達、恋人、ペット、SNS。人はきっと誰かとつながっている。誰かに頼ることは恥ずかしくない、と見る人に伝えたい」

 連載は2018年から小学館の月刊少女漫画「ベツコミ」で始まり、20年度には小学館漫画賞を受けた。23年にはアニメ化され、コミックスの累計発行部数は160万部に上る。担当編集者の梶夏実さん(30)は「みんないとおしくなるキャラばかり。毎回何かしらの学びがある」という。

 恋愛系を多く描いてきた藤沢さんのキャリアでは初の家族もの。読者に受け入れられるか、連載当初は緊張もあったという。それでも、どのキャラクターにも感情移入できるような丁寧な心理描写が、幅広い読者を引きつけてきた。梶さんは「ドラマになることで、これまでリーチしていなかった層にも届いてほしい」と期待を寄せている。

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