【6月8日付社説】教員の長時間労働/定数を抜本的に見直す時だ

 長時間労働が教員の疲弊と、イメージ低下によるなり手不足の悪循環を招いている。子どもたちが生き生きと学び、力を発揮できるよう、教員の働き方を抜本的に見直す契機とする必要がある。

 中教審の特別部会が教員確保や働き方に関する提言をまとめた。柱の一つは、残業代の代わりに上乗せしている月給4%相当の教職調整額を、10%以上に引き上げる処遇の改善だ。文部科学省は来年の通常国会に教員給与特別措置法(給特法)の改正案を提出する。

 現在の調整額は、給特法が施行された1972年当時の月平均約8時間の残業に見合う額として定められた。2022年度の文科省の調査では、国が残業の上限とする月45時間超の教員が小学校で6割超、中学校で7割超に上った。過労死ラインの月80時間超に相当する教員も少なくない。

 子どもたちの成長を導く学校教育の重要性や、半世紀前と全く異なる長時間労働の現状を踏まえれば、調整額の引き上げは妥当だ。処遇改善を教壇に立つ人材の確保につなげることが重要だ。

 中教審の提言には、各教員が専門教科を分担する教科担任制の導入範囲を現在の小学校5、6年から、3、4年に拡大する方向性が盛り込まれた。教員が受け持つ授業数の削減や、授業準備の効率化などにつなげる狙いがある。

 一方、教科担任制は時間割の調整が複雑になる、教員が少ない小規模校では負担が増すなどの課題が指摘されている。学級担任が子どもたちに目配りする時間が減り、教科を横断した学びを提供することが難しくなる面もある。

 学校の実情はそれぞれ異なり、教科担任制の拡大にはメリットとデメリットがある。文科省や各教委には、実情に応じて専門教科を担当する教員を増員配置するなど、支援強化が求められる。

 教員が担う業務の取捨選択や校内の業務を補助する支援員の配置など、中教審が提言する多くの対策に学校は既に取り組んでいる。デジタル端末を活用した文科省の「GIGAスクール構想」や小学校での外国語教育の導入など、少子化で子どもの数は減っても教員にしかできない仕事の量は増えている。いじめなど効率化にはなじまない問題にも対応している。

 教員定数の大幅な増加が図られぬまま業務量だけが増えている。定数などに関する制度と学校現場の実態の乖離(かいり)が、長時間労働の是正が進まない大きな要因となっている。国は、働き方改革を現場任せにせず、制度面から改善していくべきだ。

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