理不尽な上司にイラッとしたときや何かにムカついたときに読むと「スカッとできる1冊」中瀬ゆかり絶賛、青崎有吾の「地雷グリコ」とは?

TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。5月30日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

【"中瀬親方”による2024年5月のおすすめ作品】

◆関脇
ノンフィクション「死の貝―日本住血吸虫症との闘い―」
著 小林照幸(新潮文庫)

昔、山梨の甲府盆地を含む6地域で流行った、お腹に水が溜まって妊婦のように膨らんで死に至る「日本住血吸虫症」と呼ばれる地方病と闘った医師たちの記録を綴った、小林照幸による傑作ノンフィクション。

<注目ポイント>
引き込まれること間違いなし! 「Wikipedia三大文学」

中瀬親方のコメント「"Wikipedia三大文学”とは、Wikipediaのなかでも引き込まれるくらい秀逸な3つの記事のことで、本作はそのうちの1つで、ある地方病についてのノンフィクション作品です。

この三大文学の残り2つである、吉村昭さんの『羆嵐』と、新田次郎さんの『八甲田山死の彷徨』も新潮文庫から刊行されているので、ぜひ読んでもらいたいんですけど、本作が文庫化されたことで遂に"Wikipedia三大文学”がコンプリートされました。今回の文庫では、新しい章が加えられていて、Wikipediaにも載っていない情報も満載なのが魅力です。

日本では、1996年にこの地方病の終息宣言をしているんですけど、実は今でも中国やフィリピンなどで存在する怖い病気なんです。かつて(日本で流行していた当時)は、その地域に嫁に行くときは『棺桶を担いで行け』と言われたぐらいすごく恐ろしく、みんな何が原因かも分からなかったこの病のことを、(医師たちが)どんどん原因を暴いていくんです。

(タイトルの)死の貝というのは、『ミヤイリガイ』という米粒ぐらいの小さい貝で、その貝が寄生虫の媒介となって流行したことが(後に)分かるんですけど、今もこうした病気に苦しむ人がいることを知ってもらうためにも、医師たちの奮闘記を若い人にもぜひ読んでいただきたいです。本当に小林さんの取材はすごくて、よく描かれたノンフィクションだと思います!」

◆大関
コミック「モンちゃんと私」
著 おぷうのきょうだい(小学館)

32歳の冴えない派遣社員・ミキが人間の言葉を話す不思議な猫・モンちゃんとの出会いを通じて、人生が変化していく物語。

<注目ポイント>
自分にとって大切なものは何か? 教えてくれるかわいい猫たち

中瀬親方のコメント「以前、このコーナーでも紹介したことのある、累計発行部数50万部を突破した大ヒット漫画『俺、つしま』の作者・おぷうのきょうだいさんによる最新の猫漫画です。

ミキは会社でこき使われていたり、家にはヒモでDV気味の最悪の彼氏がいたりと、あまり幸せではなかったんですけど、ひょんなことからモンちゃんを含む3匹の猫と謎のホームレスのおいちゃんと一緒に住むことになって、ミキの人生が大きく変わっていくなかで、自分にとって本当に大切なものを見つめ直していくところがとても面白いです。

猫のモンちゃんは詩を作るのが上手くて、『言い訳するのは、ほんとうは悪いと思ってないからじゃないかな』とか『人生はビデオデッキのようなものだ』といった数々の言葉を出していくんですけど、それらの言葉がすごく胸を打つんです。

そして、ミキの内面も成長しているところも必見で、(彼氏の)最低なヒモ男すらもちょっと変わっていくというか。人生における優先順位について深く考えさせられる作品になっています。

『俺、つしま』でも色鉛筆の繊細なタッチで丁寧に描かれていましたけど、モンちゃんとチョモちゃんが爆裂かわいいです。この2匹も超最高なんですけど、ナゾちゃんっていう不思議感満載の猫ちゃんが最高で、ラストもめちゃくちゃ好きで、何度も読み返してしまいました。上下巻完結で読みやすい厚さになっているので、みなさんぜひお楽しみください!」

◆横綱
文芸書「地雷グリコ」
著 青崎有吾さん(KADOKAWA)

第24回本格ミステリ大賞(小説部門)、第77回日本推理作家協会賞〈長編および連作短編集部門〉、第37回山本周五郎賞を受賞し、見事3冠に輝いたミステリ界の旗手・青崎有吾が仕掛ける、全5篇からなる本格頭脳バトル小説。

<注目ポイント>
馴染みのある昔遊びをアレンジ! 頭脳戦なのに読みやすい1冊

中瀬親方のコメント「本作は、勝負事に強い生意気でちょっとキュートな女子高生がさまざまなゲームに挑んでいく頭脳バトル小説です。

タイトルのグリコって、昔(ジャンケンの)遊びがあったじゃないですか。あの遊びからきているんですけど、例えば、第1話の『地雷グリコ』は、ジャンケンで勝ったほうが階段を上る"ジャンケングリコ”に、(仕掛けた)『地雷』の段を踏んじゃうと10段下がるというペナルティを加えたゲームで、地雷を何段目に設置すればいいかなど、実は単純なように聞こえるかもしれないけど、読んでいて"これ、どうしたら勝てるの?”とかいろいろ思うし、相手の仕掛けた地雷も読まなきゃいけないし、駆け引きが加わる勝負展開はひねりが効いていて最高に面白いです。

その他の章でも"坊主めくり×神経衰弱”とか、ジャンケンにオリジナルの独自手を作って7回勝負(する"自由律ジャンケン”)とか、誰もが子どものときに親しんできたゲームがベースとなっているので、非常に入りやすいです。

コミックの『嘘喰い』や『賭博黙示録カイジ』などが大好きな人は絶対ハマること請け合いの作品です。山本周五郎賞の売れっ子選考委員5人(伊坂幸太郎さん、江國香織さん、荻原浩さん、今野敏さん、三浦しをんさん)全員がその面白さに本当に唸って"めちゃめちゃ面白い”と認めたほど。

本当に面白い本格頭脳バトル小説の爆誕に大拍手しました。早く続編が読みたいので、青崎さんぜひお願いします(と言いたい)。持ち前の頭脳と生意気さで敵を翻弄する主人公の姿がとても痛快で、会社で理不尽な上司にイラッとしたときや何かにムカついたときに読むと、かなりスカッとできる1冊ですので、ぜひお楽しみください!」

中瀬さんが推す3作品、ぜひチェックしてみてください! 毎月最終木曜日に発表するこのコーナー、次回6月のエンタメ番付は、6月27日(木)にお届けする予定です。お楽しみに。

※この番組の記事一覧を見る

<番組概要>
番組名:5時に夢中!
放送日時:毎週月~金 17:00~18:00 <TOKYO MX1>
「エムキャス」でも同時配信(地上波放送エリアを除く)
メインMC:垣花正(月~金)
アシスタントMC:大橋未歩(月~木)、ミッツ・マングローブ(金)
番組Webサイト: https://s.mxtv.jp/goji/
番組X(旧Twitter): @gojimu
番組Facebook:https://www.facebook.com/5jinimuchuu

© TOKYO MX