21歳・内田ことこが88試合目で初の首位取り “隠れ飛ばし屋”がひそかに狙う全英切符

内田ことこが初優勝に向け首位で最終日を迎える(撮影:福田文平)

<宮里藍 サントリーレディス 3日目◇8日◇六甲国際ゴルフ倶楽部(兵庫県)◇ 6545ヤード・パー72>

6位から出た内田ことこが5バーディ・2ボギーの「69」で回り、トータル8アンダーで単独首位に立った。2021年6月の最終プロテストに合格し、プロデビューから88試合目で初めて首位に立った21歳は「きょうはアプローチ、パットが良かった。調子自体はずっと悪くなかったので」と“大躍進”を冷静に受け止めた。

初めてシード選手として臨むプロ4年目のシーズンはここまで苦しんできた。開幕から前週の「ヨネックスレディス」まで14試合すべてに出場して6度の予選落ち。3週前の「ブリヂストンレディス」の23位が最高で、メルセデス・ランキングは74位に低迷していた。

「練習での感覚はいいのに、試合ではいいショットが打てない。今週はいけそうだなぁと思い続けて、毎週毎週やっていた。試合になると練習では出ないミスが出ていた。今週良くなった理由は自分ではよく分からないんです」

結果が出ない焦り。救ってくれたのは、プロ仲間の山路晶と橋添穂の2人だった。「毎日のように一緒に食事して、いろいろ話を聞いてもらったり、私も聞いたりしている。ゴルフ以外の話もするし、結果が悪くても、楽しくやれているのは2人のおかげです」。今年から師事するプロコーチの井上透氏も背中を押してくれた。「技術的なことより、言われているのは、どういう気持ちでショットに挑むかとかですね。基本は自分で考えるタイプで、どうしても分からないときに教えてもらっています。考え込んでしまうほうなので、『リズムを大切に』とも言われています」。

東大ゴルフ部の監督も務める井上氏はデータ解析などを得意とする理論派コーチだが、授かったのはメンタル重視のアドバイス。「少しずつ試合でのミスが減った」と今大会は初日に今季ベストタイの「68」で回り、2日目は「71」、この日は安定したショットを武器に5バーディ。1番パー5の残り90ヤードの3打目、10番パー4の残り150ヤードの2打目など5バーディのうち、4つはピンそば1メートルぴたりとつけるショットで奪ったバーディだった。

初めて首位に立ち、初めて最終日最終組から初Vを目指す。今季のドライビングディスタンスは10位で、計測ホールのこの日の17番は2位の269ヤードを記録するなど、知る人ぞ知る飛ばし屋は「オフのトレーニグで少し伸びました。平均で10ヤードくらい」と笑った。最終18番パー4のボギーはティショットが池のある左サイドのレッドペナルティエリアに入ったのが原因だった。ティイングエリアからは32ヤードの打ち下ろしホールとはいえ、池までは317ヤード。「たぶん緊張すると思います」という最終日は飛びすぎに注意だ。

プロデビューから88試合目で初めて首位に立った。2位以内に入れば8月の「AIG女子オープン」(全英)への出場権を手にする。「行けるものなら…」。今季の目標に掲げるツアー初優勝に王手をかけた最終日。英国行きの切符は優勝のゴールに飛び込んで手にしたい。(文・臼杵孝志)

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