【エプソムC】距離延長歓迎&上昇気配のタイムトゥヘヴンを推奨 久々も実績断然のヴェルトライゼンデにも期待

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高速馬場で、ある程度の位置が必要

春の東京開催16日目。この時期は例年、馬場の内側が悪化し、パンパンの良馬場ならば内を空けて走ることが多いが、今年はそこまで内側が悪化しておらず、内も頑張れている。ただ、それでも外が伸びているのも確か。超高速馬場の時計勝負では外々を回るとロスが大きくなることから、内から2頭分ほど外を通すのがベストだ。

また、このレースは外差し有利のイメージが根強いが、過去10年で、差し、追込馬が優勝したのは、断続的な雨の影響でやや時計が掛かった昨年のみ。逃げが1勝、先行4勝、中団4勝と、馬場が高速過ぎるとある程度は前の位置にいないと勝ち切れないので注意したい。2着を見ても6頭が逃げ、先行馬である。

能力値1~5位の紹介

【能力値1位 ニシノスーベニア】
前々走の中山芝1600m戦・幕張Sで圧勝した馬。この日は稍重発表だったが、連日の雨の影響でしっかり時計が掛かる馬場状態。2番枠から五分のスタートを切ったが、外から前2頭が飛ばしていくのを見ながら控えて4列目の最内を追走。そこからじわっと上がって3列目の最内で3角へ。3~4角でペースダウンすると、2列目の最内まで押し上げ、4角では一気に差を詰め、出口で逃げ馬の外2番手に誘導。直線序盤で一気に抜け出して2馬身半差つけ、ラスト1Fでそのまま差を広げて5馬身差で圧勝した。

前々走は2回中山開幕週でC→Aコースに替わり、内有利馬場の最内を立ち回る競馬。ペースが上がった前半で控えて、ペースが落ちた3~4角で仕掛けたことで展開にも恵まれた。しかし、準OPで常連の2着馬ニシノライコウに5馬身差をつけたことは、それらを加味した上でも評価できる。また良い脚を長く使ってラスト1F11秒8でまとめた辺りに、豊富なスタミナを感じさせた。

稍重発表ながら高速馬場だった前走ダービー卿CTは、好位で進めていた8番人気のエエヤンが自然な形でハナに立って2着に粘ったように、前と内が有利な展開。ニシノスーベニアは11番枠からやや出遅れて、中団の内目を追走。3~4角で進路がなく、直線序盤でも馬群を捌くのに苦労する場面が見られた。しかし、進路を見つけてからのラスト1Fではしっかり伸びて4着を確保している。

超高速馬場だった4走前の東京芝1600m戦では6着敗退。同レースではやや出遅れから逃げ馬を突いていく競馬で、前半から脚を使わせたことも敗因のひとつだが、東京よりも上がりの掛かる中山が好ましく、前々走のように時計が掛かる馬場がベストである。

エプソムC当日は春の東京開催16日目ながら、晴れ予報で高速馬場が予想される。高速馬場のマイル戦では追走に忙しい面を見せていることから、前走から1Fの距離延長は好ましい。セルバーグが逃げてレースがタフな流れになればチャンスはありそうだ。

【能力値2位 ヴェルトライゼンデ】
2歳時のホープフルSではコントレイルの2着。3歳時にはダービー3着、神戸新聞杯2着と三冠馬コントレイルには歯が立たなかったが、世代を代表する一頭だった。その後は故障に悩まされたが、2022年の鳴尾記念では約1年半の休養明けながら優勝。同年のジャパンCでも3着に好走している。

3走前となる前記のジャパンCでは、3番枠からまずまずのスタートを切って、コントロールしながら好位の内目を追走。道中は超絶スローで流れる中、内からひとつ外の2列目と絶好位だったが、3~4角で包まれ、直線の進路を作り切れずに仕掛けを待たされた。ラスト2F目で狭い内から抜け出して、外のダノンベルーガに並びかける。ラスト1Fで先頭に立ったが、外からシャフリヤール、さらには中目を捌いて上がってきたヴェラアズールにかわされての3着だった。

この年のジャパンCは前半、中盤とペースが上がらず、上がりの速い展開。仕掛けを待たされたのは痛かったが、3~4角の内目を立ち回った馬が有利な展開を、ほぼロスなく立ち回れていた。この年のジャパンCは例年と比べるとレベルが高いとは言い難かったが、それでもGⅢのここなら実績断然。能力の最高値はNo.1である。今回も1年以上の休養明けで、追い切りの動きは及第点といったところだが、この馬ならば……と思わせる。対抗評価だ。

【能力値3位 トゥデイイズザデイ】
前々走の佐渡Sでは、のちのダービー卿CT勝ち馬であるパラレルヴィジョンを降して勝利した馬。同レースでは14番枠から五分のスタートだったが、じわっと先行して2列目の外まで持っていく形。道中は逃げるルドヴィクスを見ながら2番手を追走、3~4角ではひと息入れて、ルドヴィクスから3馬身差で直線へ。序盤でもまだ仕掛けを待って2馬身差。ラスト2Fで仕掛けてルドヴィクスに並びかけると、ラスト1Fでこれを捻じ伏せて3/4差で勝利した。

前々走は前後半4F47秒3-45秒5のかなりのスローペースで、行った行ったの展開。トゥデイイズザデイは展開に恵まれての勝利だったが、先行すると崩れないのは同馬の強みである。長期休養明けとなった前走の谷川岳Sでも2着。13番枠からやや出遅れたが、そこからやや離れた好位まで挽回し、最後の直線でもジリジリ伸びて2着に善戦している。

ただ、ゲートも速い方ではないし、スピードもそこまでないので、近2走のように外枠からじわっと、ゆっくり先行するのがベストの馬。今回は1番枠で出遅れた場合に先行できないリスクはあるが、好位でレースの流れに乗れれば当然チャンスはある。

【能力値4位 シルトホルン】
デビュー3戦目の未勝利戦では、2番手を追走して6馬身差で圧勝。その後のひいらぎ賞でも逃げて2着に善戦するなど、キレよりも、前から良い脚を長く使ってこその馬。昨夏のラジオNIKKEI賞でも逃げたグラニットにプレッシャーをかけていく競馬で2着に好走。重馬場で行われた6走前のオクトーバーSでは逃げるヤマニンサルバムに2番手から食らいついて2着に善戦している。

前走はメイSで3着。9番枠から好スタートを切って先手を主張し、楽にハナを取り切った。道中はスローペースを刻んで3角へ。3~4角でじわっとペースを引き上げ、3/4差で直線に。序盤でもその差を維持し、ラスト2Fで追われるとややリードを広げて1馬身差。ラスト1Fでやや甘くなったところで、外からプレサージュリフトに差されてアタマ+クビ差の3着となった。

前走は同型馬不在により、マイペースで逃げたが、それでもラスト1Fで甘くなっての3着。シルトホルンはゲートが上手でスピードもあるのでハナへ行く気になれば逃げられるとは思うが、今回は同型馬のセルバーグやアルナシームが出走する。2頭ともゲート次第の面はあるが、前走ほど楽な立ち回りはできないはず。ここは評価を下げたい。

【能力値5位タイ アルナシーム】
デビュー2戦目の東京スポーツ杯2歳Sで出遅れ後、最序盤で掛かって制御不能となる、衝撃的な大暴走をした馬。その気性から芝1600mを使われることもあったが、マイルではややスピード不足。5走前のオープン、カシオペアSを含む全5勝中4勝を芝1800mで挙げている。

休養明けの前走は、芝1800mオープンの都大路Sで2着。4番枠からやや出遅れたが、そこから押して最内から中団まで挽回。道中は1番人気のダノンティンパニーを見ながら進めた。3~4角でもそのまま我慢し、4角で同馬が外へ行くのを待って最内を狙う。その間に早々と先頭に立ったセオに差を広げられ、直線序盤では2馬身差の2番手。ラスト1Fでじわじわ差を詰めたが、1馬身1/4差までだった。

このレースは前後半4F47秒6-45秒0とかなりのスローペース。後半勝負となった中、3~4角の最内で包まれ、4角時点でも前のダノンティンパニーの手応えが悪く(この後に競走中止)仕掛けが遅れたが、それでもラスト1Fではしっかり差を詰めている。前有利の展開で出遅れたことが致命的ではあったが、折り合いがつくようになってからは後半型の競馬にも対応できている。

また、昨年6月の垂水Sでは外枠から五分のスタートを切り、じわっとハナを奪って、トゥデイイズザデイやパラレルヴィジョンを撃破して勝利したように、逃げることも可能な馬。しばしば出遅れるところはあるが、鞍上は1着しか興味がない横山典弘騎手。五分のスタートを切った場合には、ハナを狙う奇襲攻撃を仕掛けてきそうだ。近走のレースぶりからは楽に前には行けないと見ているが、前に行って展開に恵まれた場合は怖い。

【能力値5位タイ ラケマーダ】
ここへ来て地力をつけ、前走で3勝クラスの分倍河原Sを勝利した馬。前走は7番枠から好スタートを切って、最序盤は逃げ馬の外2番手だったが、大外からシェルビーズアイが一気に先頭に立つと、一列下げて好位の中目を追走した。3~4角で外から進出して行ったが、4角では外に張られる場面も。フラフラしていたが大勢に影響なく、直線で追われるとじわじわ伸びて2番手まで上がり、ラスト1Fで先頭のカナテープを捉えて半馬身差で勝利した。

前々走の春興Sでは逃げてサイルーンの決め手に屈する形となったが、前走では脚を溜めて自身の指数を上昇させた。ラケマーダはゲートが速く、スピードもあり、脚を溜めれば前走時のようにメンバー最速の末脚が使える。序盤で力む面こそあるが、すぐに折り合いもつくタイプで目立った弱点はない。しかし、重賞のここは相手が強く、前走からさらなる成長がないと厳しい結果になりそうだ。

距離延長が吉と出そうなタイムトゥヘヴンを推奨

3歳春の京成杯では逃げて2着に善戦したが、その後は瞬発力が強化され、短い距離で末脚を生かす競馬にシフト。古馬になってダービー卿CTを優勝した。その2022年ダービー卿CTは当日の7Rまでが稍重発表でしっかり時計が掛かる馬場で、逃げと2番手の馬がブービーとシンガリに失速する激流となった。

3番枠から五分のスタートを切ったが、促されても進んで行かずに下がって後方。そこで下げ切って、道中はかなり後方から前にスペースを作って進めた。3角ではじわっと最内から進出して、4角では中目を通して出口で外に誘導。序盤の伸びはジリジリとだったが、ラスト1Fでグングン伸びて最後はフォルコメンをアタマ差で捉え切った。

このダービー卿CTは長く良い脚を使っての勝利であり、久々の1800mとなった中山記念で6着と善戦したあたりからも、中距離でこその感がある。というより、近走1600mだと出遅れてテンに置かれ、追走に忙しい競馬となっているので、適性が1800mに傾いてきているという評価が正しそうだ。

前走のダービー卿CT(2024年)は好位で進めていた8番人気のエエヤンが自然な形でハナに立って2着に粘ったように、前と内が有利な展開。タイムトゥヘヴンは4番枠から出遅れて序盤は後方からだったが、最内から中団まで挽回。3~4角でも最短距離を上手く立ち回り、最速の上がり3Fタイムで追い込み、6着に突っ込んできている。ここへ来ての上昇気配もうかがえるだけに、ここでの一発を期待したい。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ニシノスーベニアの前走指数「-18」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.8秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。



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