蔵前・両国・浅草橋の小さな名酒場6軒。店主の世界観・距離感も絶妙!

蔵前のおしゃれバルや浅草橋の大衆やきとんも素晴らしい。でも今回は一歩踏み込んで、店主の世界観を感じる小さな酒場を探訪。
酒の品揃えを見れば、ワイワイがやがやより、じっくり腰据えて飲(や)りたくなるはず。

『562_colony』宮城の酒肴と、店主偏愛の燗酒と。[両国]

カキのオイル漬けほか、おまかせおつまみ5種盛り1500円。「阿部勘」かすみ酒800円など。

冷蔵庫には、「蔵王」や「宮寒梅」など宮城の地酒がずらり。「地元のお酒と郷土料理の魅力を伝えたく、2023年春開業しました」と米澤大輔さん。主に妻の悠子さんが手掛ける肴は、なめろうや鶏と根菜のクリームチーズ和えなど、ちびちびやれるTHE酒どろぼう。大輔さんは無類の燗好きで、和歌山の「菊御代(きくみよ)」や新潟の「鶴の友」などその土地土地の晩酌を支えてきた一升瓶も。BGMに流れる80~90’SのUKロックの熱気がまた、燗酒のいい肴になるのだ。

「地酒の飲み比べもぜひ」と店主の米澤さん。店主夫妻の人柄にひかれ、銭湯帰りに寄る常連も。
ふろふき大根の唐揚げ600円、南三陸ホヤ串セット800円。
お見送りまでうれしい。

『562_colony』店舗詳細

562_colony 住所:東京都墨田区亀沢1-6-7 松喜ビル1F/営業時間:17:00~23:00/定休日:火(不定休あり)/アクセス:地下鉄大江戸線両国駅から徒歩1分

『酒の店 ななや』驚がく魚介を目当てに酒の通人が集う[両国]

刺し盛りと、ミニ穴子めし350円。燗映えする「加賀鳶」「香住鶴」各600円など日本酒は7種ほど。

刺し盛りは天然サバを締めたものから、イクラ、スミイカなどその日の気分で四、五種盛り。これで650円って! 店主の井下広一さんいわく「妻の祖父から付き合いが続く豊洲の仲卸に、高級寿司店や天ぷら屋に行くような魚介を安く卸してもらえるんです」。話しながらさばくアナゴも、手で触れるとまだ動くほど新鮮な東京湾の一本釣り。こんなに良質な鮮魚を肴に、立ち飲みで一杯やれる幸せときたら。

大衆というより大人の立ち飲み。2階には座り席も。
「毎日豊洲に通ってます」と井下さん。井下さんは人形町の名酒場『笹新』の出身。
この日は「蓬莱泉 空」大吟醸の酒粕を使った、ブリのあら酒粕煮350円。

『酒の店 ななや』店舗詳細

酒の店 ななや 住所:東京都墨田区両国3-23-6/営業時間:16:00~22:00頃/定休日:水/アクセス:JR総武線両国駅から徒歩1分

『日本ワインバー AXIS』は、日本ワインのストーリーテラー[浅草橋]

鯛のカブト煮600円、温かいポテサラチーズ添え650円。右から北海道「奥尻ワイナリー」のピノ・グリ1200円、山梨「共栄堂」K22AK-AK1100円ほか。

「生産者の想いを伝え、消費者の声を生産者に届けやすい、日本ワインを専門に提供しています」と店主。グラスの価格帯は1000円前後で、愛情に裏打ちされた説明は「イチゴキャンディのような甘み」「ヤクルトのような酸味」と分かりやすい。料理も白ワインを使ったカブト煮など一工夫ありつつも、どこかほっこりする品揃え。「日本ワインも地酒と捉え、肩肘張らず楽しんでほしいんです」。

若鶏もも肉とハーブソーセージのトマト煮込1500円。
国産の食後酒も豊富。
店内はひと席ずつにゆとりがあるカウンター7席。

『日本ワインバー AXIS』店舗詳細

日本ワインバー AXIS 住所:東京都台東区浅草橋2-2-6/営業時間:17:00頃~翌3:00/定休日:火(不定休あり)/アクセス:JR総武線・地下鉄浅草線浅草橋駅から徒歩4分

『有限会社 大塚工務店 ワイン事業部』赤コーンの向こうに絶佳なる赤ワイン[浅草橋]

工事標示板に品書きや値段が。

入り口の三角コーンには「作業中」の文字、棚には工事用ヘルメットで箸置きがボルト。これは一体? 「亡き父の工務店の屋号を継ぎ、車庫を改装しました。この屋号でいくなら内装もソレ風にしたいなと」と大塚雅則さん。都内フレンチの名店で20年近くギャルソンを務めており、ポルトガルの緑ワインや赤の微発砲まで珠玉のワインセレクト。チャージ・サービス料無しで気軽に一杯飲めるのも◎。

特定の産地やナチュールだけに偏らず、店主の大塚さんがおいしいと感じたワインを、グラスで10種、ボトルで50種ほど用意。「日替わりでパスタも!」と大塚さん。
骨付鶏もも肉のコンフィ1100円、おまかせ5種盛り1430円。
カレーにゅうめん880円などシメの料理も。

『有限会社 大塚工務店 ワイン事業部』店舗詳細

有限会社 大塚工務店 ワイン事業部 住所:東京都台東区浅草橋4-3-1/営業時間:15:00~23:00(祝は~22:00)/定休日:日/アクセス:JR総武線・地下鉄浅草線浅草橋駅から徒歩3分

『蔵前 木由無(きゆな)』一人客にもやさしい深夜食堂[蔵前]

鮮魚3種盛り1450円、ふわふわの鶏純レバ750円。刺し身は利益度外視の値付け。「遊穂」純米650円など。

この日の鮮魚3種盛りは松前の本マグロに氷見の寒ブリ、青森の天然ヒラメ! しかも熟成で旨味がのっており、旨口中心に約15種揃う日本酒や、芋感どっしりの「六代目百合」、黒糖焼酎の「龍宮」とも好相性。「豊洲仲卸での修業時代、1日200匹近く魚をさばき、血抜きや保冷の仕方を学びました」と浅野大輔さん。カツサンド800円や帯広豚丼700円などシメも豊富で、食堂使いする客も。

カウンター6席に加え、テーブル2卓。「ウイスキーからクラフトジンまで幅広く揃えています」と店主。
胡麻カンパチ900円、「六代目百合」お湯割り650円。
「魚は築地仕入れです」。

『蔵前 木由無(きゆな)』店舗詳細

蔵前 木由無(くらまえ きゆな) 住所:東京都台東区蔵前3-20-12 1F/営業時間:18:00~24:00(金・土:~翌1:00/木・金:11:30~14:00でランチ営業あり)/定休日:日・月/アクセス:地下鉄大江戸線蔵前駅から徒歩1分

『NOMURA SHOTEN』濃厚な下町で出合う極上スピリッツ[蔵前]

「クラフトビールやワインも用意しています。店内奥でお酒も販売中!」と、店長のヨシさん。

紙屋の倉庫を改装し、開業。立ち飲みの客も多く、角打ちのラフな空気を纏(まと)いながら、お酒は日本各地から厳選されたスピリッツが100種以上も。「ラムやジン、メスカルまでクラフト系のお酒が中心。個性ある蒸留酒の味を楽しめるよう、カクテルではなくロックやソーダ割で提供しています」と店長のヨシさん。牧草感のあるアメリカのワイルダージンを楽しんでいたら、向かいの銭湯帰りの男性や下校途中の小学生が顔を出す下町具合も最高。

ラム焼売550円、マグロのタルタル酒粕クリームチーズ トルティーヤチップス800円。「虎ノ門蒸留所」とコラボしたARŌMATA GINソーダ割1600円など。
焼酎や泡盛も。
火曜限定でタコス2種各700円を提供。
2022年開業。軒先にも立ち飲みスペースあり。

『NOMURA SHOTEN』店舗詳細

NOMURA SHOTEN 住所:東京都台東区三筋2-5-7/営業時間:17:00~23:00(金は16:00~、土は15:00~、日は15:00~22:00)/定休日:水/アクセス:地下鉄浅草線蔵前駅から徒歩9分

取材・文=鈴木健太 撮影=丸毛 透
『散歩の達人』2024年2月号より

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