「コウノトリに愛称つけません」…野外ひな21羽が巣立った福井県越前市が方針転換した理由とは 継続求める声も、意見交錯

親鳥の足元で巣から顔を出すコウノトリのひな。福井県越前市は地元への愛称考案の依頼を取りやめた=4月16日、同市安養寺町(市提供)

 福井県越前市は、市内で今年生まれた国の特別天然記念物コウノトリのひなの愛称について、これまで行ってきた地元への考案依頼をしない方針を決めた。「ペット化するのは本来目指す野生復帰に反する」との考え方が根底にある。成長を熱心に見守る住民からは「コウノトリへの愛着が自然環境への関心につながる」と愛称継続を求める声が上がる。野外繁殖によるひな誕生が定着化してきた中、コウノトリとの距離感を巡って意見が交錯している。

 コウノトリは1971年に国内野生種がいったん絶滅したが、全国の野外個体数は約370羽にまで増加。ひな誕生時に割り当てる個体番号とは別に、自治体の下で愛称を決めるケースは県内を含めて多く見られるようになった。

 越前市では2020~23年に野外ひな計21羽が巣立っており、その全てに愛称が付けられている。市が地元の小学校や認定こども園などに依頼し、子どもたちが考案した「いそべくん」「きなこくん」「笑ちゃん」「勇くん」などの名が採用されてきた。

 だが、市内3地区で今年誕生したひな計7羽の愛称については、「こちらから考案を求めることはしない」(市農政課)と従来の対応を転換した。地元から要望があった場合にのみ、愛称を付けてもらうとの方針だという。

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