愛車はちょっと残念なスープラ? 三菱のレア過ぎる1台 「こんな形で残っているのは本当にない」

左ハンドルの愛車、真紅のボディーが美しい【写真:ENCOUNT編集部】

「これスープラじゃね?」と間違えられるが… 世界の知名度は抜群

貴重な車が集まるカーイベントはオーナー同士や自動車ファンとの交流も大きな楽しみの一つだ。車が珍しければ人だかりができ、会話も弾む。中には納車翌日にイベントに参加したという強者も……。いったい、どんな車なのか、詳しい話を聞いた。

5月下旬、栃木で行われた「第1回オールジャパン旧車・希少車ミーティング in モビリティリゾートもてぎ」。駐車場にずらりと並んだのはおよそ130台の貴重車だ。場所柄、自動車好きの外国人客も見学に訪れるなど、熱気に包まれた。

その中に、前日に車を納車したばかりという参加者がいた。東京都の40代男性、おまつさんだ。愛車は赤いボディーの三菱1996年式エクリプススパイダー。米国製の左ハンドル車だ。

「土曜日に群馬で納車するので、日曜日に近くでイベントあるかなと思ったら、ここがあったんです。無理やりお願いして入れさせてもらいました。昨日は納車後、ドライブついでに宇都宮に泊まりました。このイベントに出てから帰ります。ちょうどいいタイミングで出させていただくことができました」

まだ、自宅にも帰っていないというから驚きだ。

車はまさにレアな1台だ。

すでに販売停止になっており、なじみのない人も多いかもしれない。おまつさんも「今の人からすると、パッと見、『これスープラじゃね?』って思われるんですけど、なんとなく似ていますよね。ちょっと残念なスープラみたいな感じになっています」と苦笑する。

だが、世界の見方は違う。

2001年公開のハリウッド映画『ワイルド・スピード』では、ポール・ウォーカー演じるブライアン・オコナーの愛車として登場。国際的な知名度が急上昇した1台だ。

もともと日本での販売台数は数百台と少なかった。さらに現存していても映画の影響で改造されている車がほとんどという中で、フルノーマルというプレミアつきだ。「こんな形で残っているのは本当にないんじゃないですか。全然ないと思います。イベントでも見たことないし」。欲しくても巡り合えなかった車との出会いを引き寄せた。

もともと大の三菱愛好家。現在は32のスカイラインGT-Rと米国仕様のジムニー・サムライを所有しているが、以前はランサーエボリューション6やアイなどを乗り継いできた。ミニバンのデリカを運転していたこともある。

「三菱が大好きで、ちょっとマニアな三菱車が欲しいなと思っていたんですよ。4駆にするかクーペにするか悩んでいたんですけど、人とかぶりたくない、あわよくば左ハンドルと思っていたらこれが出てきた。これしかないなと即決でしたね。誰も乗ってない感じがいいかなと思って」

三菱のGTOやFTOも候補に挙がったが、かぶる可能性があるため断念。東京では単身赴任中で、どうせならと理想の車に思い切り、振り切った。

「32のスカイラインとかランエボと言ったら、まあまあメジャーじゃないですか。でも、こういうイベントに来て、皆さんと仲良くなって見ていると、やっぱり自分で個性出すのは、かぶらない車じゃないかなと思って。大満足ですね。ここまでフルノーマルでワンオーナーで、5万キロみたいな。出てこないです」

ハンドルの感触も上々だという。

「もうアメ車ですよね。サスペンションは柔らかいし、ボディー剛性はないし、これ本当90年代のアメリカな感じだなって。何か目を三角にして走ろうとは全く思わなくて、これはこれで気に入っていますね」

よくよく見れば、クーペなのに車高が高いところも気に入っている。「ちょっとダサかっこいいというか、このダサさがすげえいいなと」。オフの日のドライブは肩の力を抜いて楽しめそうだ。

三菱愛にあふれるオーナーのおまつさん【写真:ENCOUNT編集部】

ユニークな車で“自動車外交”人脈はビジネスにも オーナーの矜持

車を移動の足として購入する人は多い。一方で、おまつさんのように、とことんこだわる人もいる。その矜持(きょうじ)とは?

「ジムニーに乗り始めて今、10何年たちますけど、人とかぶらない車、かぶらないジムニーを探して、ようやく日本にも何台しかないというサムライにいきましたし、スカイラインもスカイラインでちょっといじってあるとみんなとかぶっちゃうから、フルノーマルを貫いています。本当は足回りとかタイヤ、ホイールとか全部家に用意してあるんですけど、換えないように我慢しながら乗っていますね」

車で個性を出すことはビジネスにもつながるという。

「仕事につながるようなヒントがいっぱいあったりします。今の若者はネオクラ(ネオクラシックカー)に乗っている人もいる。自分の勉強、知識向上も含めて、見聞や交友を広めることができると思います」

不安があるとすれば、故障時の修理だ。「部品がないんですよ。たまに解体屋あさっていると出てくるみたいな感じですけど、やっぱり外国から輸入しないとですね。友達が部品輸入商をやっているので、何かあったら目星はつけといてはくれるんですけど」

大切に維持しつつ、可能な限り、愛車を満喫するつもりだ。

「せっかく見つけたし、もう2度と買えないじゃないですか。だから満足いくまでは乗りたいですね」と結んだ。ENCOUNT編集部/クロスメディアチーム

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