疾病が原因の事故では自動車保険金が払われない? 補償の対象外となるケースとは

他人にケガをさせた場合は「対人賠償保険」、他人の物を壊したら「対物賠償保険」、自分の車両の損害は「車両保険」、自分のケガは「人身傷害保険」と自動車事故で起こった様々な損害は自動車保険でほとんど補償されますが、特別な疾病が原因で起きた事故は例外なのはご存知でしょうか? どのような場合に対象外となるのか、詳しく解説します。


人身傷害保険とは?

自動車保険には、相手に対する賠償の他に、ご自身のケガを補償する人身傷害保険という補償がセットされています。対人賠償保険はその名の通り、人に対する賠償なのでわかりやすいですが、人身傷害という名称はなんとなくわかりづらいかもしれません。

人身傷害保険は、自動車事故で、事故があった車に乗車中の自分・家族・その他の乗車中の人が死傷した場合、損害を補償する傷害保険です。

支払対象となる損害は、ケガの治療費・仕事を休まなければならなくなった休業損害の他に、死亡や後遺障害の場合はその事故が起こらなかったら当然得られた逸失利益、事故による精神的損害などです。

人身傷害保険の設定金額は各社最低金額が異なりますが、2000万円~無制限補償まで可能な場合が多いです。大事故でなければ、5000万円程度の設定額でケガの治療費・休業損害の補填は充分です。ただし、死亡事故の場合は本来請求できる金額が設定額を大幅に下回ってしまうケースもあります。

保険会社の試算によると、35歳扶養家族なしの人が死亡した場合の損害額の目安は7000万円。扶養家族が2名の場合は9000万円という数字が出ています。保険金額の設定が5000万円だとすると、請求できる金額は9000万円でも、設定金額が5000万円だと、支払いは5000万円までです。4000万円を受取り損ねてしまうわけです。万一のことを考え、対人・対物賠償の金額と同様、無制限補償の設定が安心といえるでしょう。

疾病が原因の自動車事故は補償できるか?

自動車保険には保険金を支払う際の指針となる約款という決まりがあり、各補償項目別に保険金を支払わない場合、という条項が記載されています。

人身傷害保険の支払わない場合には、
1.戦争・内乱などの事変または暴動
2.地震・噴火またはこれらによる津波
3.核燃料物質の放射性、爆発性、その他これらの特性に起因する事故
などが挙げられ、これらの損害は支払えません。

他にも
1.被保険者の故意または重大な過失により本人に発生した傷害による損害
2.被保険者が麻薬・大麻・覚せい剤等の薬物使用で正常な運転ができなかった場合の本人に発生した傷害による損害
3.被保険者が道路交通法に定める酒気帯び状態で運転した場合の本人に発生した傷害による損害
4.被保険者の脳疾患、疾病または心神喪失によって、本人に発生した傷害による損害
などが、支払わない場合に挙げられています。

上記の1~3の要因は、運転者本人に大きな責任があり、当然支払対象外と納得できます。4の疾病が原因の事故による傷害は、突然起こる事であり、想定外の場合が多いですから、支払えないというのは意外ですが、心筋梗塞で意識を失い、電信柱に衝突し死亡、といったケースでは人身傷害保険金は支払えないということになります。

では、健康に起因する事故はどのくらい起きているのでしょうか。個人のデータではありませんが、事業用自動車のドライバーについて、報告されている健康状態に起因する事故データを紹介します。

国土交通省の調べによると、平成25年から令和元年の7年間で健康起因事故を起こした運転者は1891人。そのうち、死亡した運転者は327人で、心臓疾患53%、脳疾患12%、大動脈瘤および大動脈解離14%という結果でした。

一般ドライバーに比べ事業用ドライバーは、雇入れ時の健康診断実施や、乗務前点呼時の健康管理が義務付けされているにもかかわらず、これだけの健康起因事故がおきているのは驚きです。疾病を原因とする事故が、私たち一般ドライバーにいつ起こってもおかしくないといえます。

保険金を支払わない場合には、「本人に発生した傷害」と記載されていますので、同乗者は支払対象です。また、相手がいる場合の対人・対物、自身の車両損害などは補償の対象となります。ですが、本人死亡の場合、人身傷害で払われるはずだった逸失利益等が支払われませんので、残された遺族には経済的に大きな痛手となります。

生命保険で補填

先のデータから見てわかる通り、突然意識を失って事故に至る原因として、心筋梗塞・心不全などの心疾患、くも膜下出血・脳内出血等の脳血管疾患などが約8割を占めています。

死亡後経済的に助けが必要な家族がいる場合、特に子育て中の家計を支えている世代は、ある一定期間、特定疾病に備える保険に加入しておくのもひとつの方法です。

教育費のかかる10年間、特定疾病1000万円のような保険にスポットで加入すれば、35歳男性、保険料月約5000円で加入できる保険があります。毎日自動車通勤をしているような人には必要な保障かもしれません。

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