福山市議選で「公選法違反?」の指摘 戸別訪問の線引きとは

福山市役所

 「これって公職選挙法(公選法)違反では?」―。4月の広島県福山市議選を巡り、複数の市民からそんな声が寄せられた。法に抵触する「戸別訪問」が一部の候補者側にあったのではないかとの指摘だ。何が違法で、候補者や応援する側はどんな点に注意すべきなのか。

 「告示直前、新人の候補者が自宅に来た」といぶかるのは市西部の70代男性。男性によると、それまで候補者と面識はなく、市議選に立候補すると告げられたという。近くの住民も同じ候補者が自宅を訪れたと証言。別の候補者の妻を名乗る女性があいさつに訪れたという声もあった。

 「戸別訪問」に当たらないのだろうか。市選管によると、目的によって違法かどうかの判断は分かれるという。

 投票の呼びかけや個人演説会の宣伝など、選挙運動で住居や会社を訪れたら時期を問わず誰でもアウトだ。一方、特定の選挙に関係しない政党の勢力拡大のための訪問や議員の活動報告会の宣伝などは政治活動とみなされ、制限はないという。

 今回の例はどうか。70代男性の声を踏まえると「特定の選挙に関係しない」とは言い切れないように思える。投票を期待する意図も感じるが、直接的に呼びかけなければセーフということだろうか。市選管の藤原研二事務局長は「個別の訪問については詳細が確認できず、コメントできない」とした。

 公選法に詳しい日本大の岩井奉信名誉教授(政治学)は「法に違反する行為とそうではない行為の境界は曖昧。一つ一つの行為の立証や立件が難しいケースもあるが、だからといって候補者が法律を守らなくていいはずがない」と指摘する。

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