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サッカー日本代表が、ワールドカップ・アジア2次予選を戦っている。6月6日のミャンマー戦は、5対0の完勝に終わったが、その結果だけではなく、大きな収穫があった。11日のホームでのシリア戦も含めて、この2試合をどのように活用すべきか、サッカージャーナリスト後藤健生が考察する。
■消化試合を活用して「3バック」に挑戦
すでにワールドカップ・アジア2次予選突破を決めている日本代表は、6月6日のミャンマーとのアウェー戦でも5対0で完勝。北朝鮮との不戦勝を含めて5戦全勝とした。
チーム力に大きな差があるミャンマーとの試合は評価が難しいところだが、内容的にもほぼ完勝で、しかも無失点を続けたので及第点の付く試合だった。雨や蒸し暑さ、そして滑りやすいピッチ・コンディションの中でもしっかりした戦いができたことは確かな収穫だ。
森保一監督は、この“消化試合”をうまく活用して3バックに挑戦。今後も使えるオプションとなる手応えをつかんだことだろう。
その日本代表のスリーバックだが、左右非対称の面白い形だった。
左のウィングバックの位置にはスタッド・ランスで進境著しい中村敬斗が先発で起用され、結果も出した。
18分には左サイドで早いタイミングで動き出して鎌田大地からスルーパスを引き出し、そのまま一気に抜け出して一瞬、切り返すと、ニアサイドに鋭いシュートを決めた。いつものことながら、中村のシュート技術の高さを示した素晴らしいゴールだった。
62分には前田大然が左ウィングバックに入り、その後、中村はシャドーストライカーとしてプレー。後半のアディショナルタイム(90+3分)には、小川航基の落としたボールを受けて、ペナルティーエリア外からコントロールショットを決めた。
前半からウィングバックというポジションで上下動を繰り返し、蒸し暑い中で90分戦って疲労をため込んでいた(はずの)時間帯にあれだけのシュート技術を発揮したのは驚くべきことだ。
あれだけのシュート力があれば、大きなチャンスが作れなくても、いつでも得点が狙えることになる。今後も、日本代表の得点源として大きな期待がかかる。
■攻めが少ない右サイド「求められる」伊東純也
一方、右のウィングバックでは菅原由勢が先発した。
前半から中村が入った左サイドには勢いがあったが、右サイドからの攻めは少なかった。一つの原因は、菅原が本来はサイドバックの選手だったからでもある。
右足からのアーリークロスが特徴の選手だけに攻撃面でも期待できるし、4バックの右サイドバックよりも、ウィングバックのほうがその特徴を発揮できるかもしれないが、やはり本来がアタッカーである左の中村と比較すると、右サイドの攻撃は十分に活性化できていなかった。
左サイドにはミャンマー戦で起用された中村、前田のほかにも三笘薫というウィングバックとしての適性を持つアタッカーがいる。サイドバックの長友佑都や伊藤洋輝もウィングバックをこなせるだろう。
だが、右サイドでウィングバックとして起用できる選手はそれほど多くない。
日本代表の右サイドといえば、ミャンマー戦で起用された堂安律やミャンマー戦はベンチ外となった久保建英がいるが、彼らはウィングバックではなくサイドハーフやシャドーストライカーだ。
その他、62分から右のウィングバックに入った相馬勇紀も、サイドハーフとしてより高い位置を取ってからドリブルに移ったほうが効果がありそうに思える。
週刊誌報道の影響で今回も招集外となった伊東純也はウィングバックにはうってつけかもしれないが、左サイドに比べると右のウィングバック候補は少ない。
■左サイドを活性化した伊藤洋輝の「位置取り」
左サイドが活性化したもう一つの理由は、伊藤の位置取りだった。
日本代表のスリーバックは右から橋岡大樹、谷口彰悟、伊藤という並びだったが、左の伊藤は攻撃の局面では中盤に上がっていることが多かった。
ボランチは右に守田英正、左に旗手怜央だったが、伊藤が1列前に上がることによって、旗手はトップ下で鎌田と並んでプレーする時間も長くなった。その伊藤に押し出されるように、ウィングバックの中村も前めのポジションでプレーすることが長くなったのだ。
それに対して、橋岡が最終ラインから前に出ていく場面は少なかった。
左右のウィングバックのタイプの違いを考えて、あるいは右ボランチの守田をアンカー的にプレーさせようという意図があって、橋岡にはあえてポジションを上げないようにプレーさせたのか、代表チームでのプレー経験が浅い橋岡が遠慮してしまったのか原因は分からないが、ミャンマー戦の日本代表の左右の攻撃力が非対称的だったのは、単に中村と菅原の差によるものでなく、最終ラインやボランチの構成などチーム全体が絡んだ現象だった。
左右はアンバランスではあったものの、左ウィングバックとしてプレーした中村と前田が良いプレーを見せたこと。右ウィングバックとして入った相馬のクロスが小川の得点を生み出したことで、3バックという試みは(初めてとしては)十分に機能したといっていいだろう。
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