鹿島×横浜FM戦 アンデルソン・ロペスに出て鈴木優磨に出なかったイエロー【サッカー「レフェリー問題」の元凶】(2)

連戦の疲れがたまっていた横浜FM。先制ゴールを挙げたアンデルソン・ロペスは、報復ともとれる反則でイエローカードをもらったが…。撮影/原壮史(Sony α1使用)

6月1日土曜日のJ1リーグ第17節、横浜F・マリノスVS鹿島アントラーズ戦で、またも悲劇が繰り返された。レフェリーの判定にまつわる問題である。プレーする者にも、見る者にもストレスを与えるレフェリング問題の根源は、どこにあるのか。サッカージャーナリスト後藤健生が探る。

■最後まで戦い続けた「横浜FM」

試合は、攻守が入れ替わりながら両チームが90分にわたってアグレッシブに戦い、点を取り合った素晴らしい内容だった。ともに狙い通りの形も作ったし、中盤でのボールを奪い合う攻防は、極めて激しいものだった。

横浜F・マリノスはちょうど1週間前にアラブ首長国連邦(UAE)のアル・アインでACLファイナルを戦って、やはり厳しい判定でPKを取られたり、GKのポープ・ウィリアムが退場処分を受けたりして大敗を喫した。そして、長距離移動を経て帰国した後、水曜日には柏レイソルと戦って勝利。そして、中2日の6月1日土曜日に鹿島アントラーズと戦ったのだ(なぜ、ACL決勝を戦ったチームが翌週の日曜日でなく、土曜日に戦わなければならなかったのか!)。

そんな疲労をため込んだ状態でも、横浜FMは最後まで戦い続けた。

一方、このところ好調の鹿島は前線で鈴木優磨が奮闘し、後半はさらにワントップにチャヴリッチを投入。中央で相手守備陣を食いつかせてサイドを使った。左サイドのスペシャリストの仲間隼斗とサイドバックの安西幸暉に鈴木が絡んで左でチャンスを作り、右にできたスペースを濃野公人が走るというのが一つのパターンだった。

そして、右からの名古新太郎のクロスが逆サイドに抜けたボールを鈴木が決めて同点とすると、74分には中央をドリブルで持ち上がった知念慶に横浜FMのセンターバックを食いつかせ、さらに右サイドにいた名古が知念のドリブルに交差するように走って横浜FMの左サイドバック永戸勝也をつり出して右サイドにオープンスペースを作り、そこに走り込んだ濃野が決めて鹿島は逆転に成功した。

そして、84分に関川郁万のゴールが決まって2点差とした。

どれも、まさに狙い通りの攻めとゴールだった。

■激しい試合を物語る「直接FK」の数字

こうして、鹿島アントラーズと横浜F・マリノスの伝統の一戦は白熱した、見ごたえのある90分となって、東京・国立競技場に集まった5万2860人の観客を喜ばせたのだが、同時にレフェリーの判定についてはストレスがたまる試合だった。

試合が激しいものになったので、反則や小競り合いも増えた。直接FKは鹿島が14本、横浜FMは15本。極端に多い数字ではないが、合計30回近く反則があったのだから、激しい試合だったのは間違いない。

そして、両チームが勝負にこだわったため、カウンターの場面で相手に抜かれそうになると、反則気味のプレーで相手を止める場面も何度かあった。

そんなプレーに対して、警告のイエローカードが出される場面もあったが、警告なしの場面もあった。もちろん、主審としては一定の基準を持って判断しているのだろうが、観客の立場からは細かいことが分からないだけに、基準が一貫していないような印象を受けてしまう。

69分にはこんな場面があった。

中盤でボールを持った鹿島の鈴木に対して、横浜FMの渡辺皓太がファウルを犯す。レフェリーの笛は鳴ったものの警告は出されず、それに対して鈴木が激しく抗議。その直後の71分、中盤でボールを持ったアンデルソン・ロペスに対して鈴木がファウル気味の激しいチャージをして、アンデルソン・ロペスが倒される。鈴木による報復とも思える行為だったが、この場面では反則も取られなかった。

■分かりにくい「イエローカード」の基準

正当なショルダーチャージという判定だったのだろうが、鈴木のプレーは相手の体を目がけて強く当たるチャージングのように見えた。そこで、怒ったアンデルソン・ロペスはさらに次のプレーで鹿島の選手に対してラフ・タックルをお見舞いしたのだ。

結果として、アンデルソン・ロペスは警告を受け、さらに異議を唱えたエドゥアルドにもイエローカードが提示されることになった。そして、きっかけを作った鈴木はおとがめなしだった。

1つひとつの判定には誤審はなかったのかもしれない。だが、イエローカードが出される基準が分かりにくかったため、見ていて非常にストレスがたまるレフェリングとなってしまった。

そんなイライラが積み重なったからこそ、ハリー・キューウェル監督は“些細な”判定に対して異議を唱え続けたのだろうし、勝利したランコ・ポポヴィッチ監督まで「ジャッジに影響されなかった」ことに、わざわざ言及したのだろう。

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