仕事の意欲低下?多すぎる〈貯金〉はかえって人生のマイナスに…幸せになれる「貯金額の目安」【税理士が解説】

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26歳は、大卒なら社会人4年目、高卒なら8年目。仕事に慣れて余裕が出てくる時期です。投資に挑戦したり、副業を始めたりする人も多いでしょう。また、結婚や出産といったプライベートの大きな決断をする機会も増えます。しかしこの時期に、お金の知識をしっかりと持っている人はどれほどいるでしょうか。20代の税理士は0.6%しかいない中、23歳で税理士となった安江一勢氏の著書『26歳の自分に受けさせたいお金の講義』(すばる舎)より、一部を抜粋して紹介する本連載。安江氏が、人生における重要な選択の際に後悔しないためのお金の知識について解説します。

お金は「貯めれば貯めるほど、使えなくなる」?

あなたはいま、貯金がいくらありますか? そして、その貯金はいつからその金額ですか? 増え続けていますか? 変わらないですか?

なぜ、この質問をしたかというと、貯金の性質には、ひとつ厄介なものがあるからです。それは、お金は「貯めれば貯めるほど、使えなくなってしまう」ということです。

あなたも経験がありませんか? 貯金が10万円になったとき、50万円になったとき、100万円になったとき、区切りのいい数字になったときに「お金を使おう」ではなく「お金を減らしたくない」と思ったことが。この「お金を減らしたくない」という考えは、危険を選択しない人間らしい考え方であり、お金で幸せを買うという面においては、厄介な考え方でもあります。

多くの人が、この「減らしたくない」という考えから、なんとなく貯金をしてしまい、お金がある(貯金をしている)のに、お金がないと思ってしまうのです。

私も新社会人のころ「貯金をするのは偉いこと」と思っていたので、稼いだ給与や賞与のほとんどを貯金にまわしていました。そして節約をしながら、仕事終わりや土日は家にこもってゲームをするという生活をしていました。

すると確かにお金は貯まりましたが、到底、理想的で幸せな人生だと思うことはできませんでした。そんな状態では、何のために仕事をしているのか、何のために難しい勉強をして資格を取ったのかがわからなくなり、仕事へのモチベーションも著しく低下をしました。

このままだとマズいと直感的に思った私は、あえてお金を使い、いろいろな出会いの場に顔を出すことにしました。すると、いいご縁に恵まれ、その出会いから「お金を使う大切さ」や「お金で幸せを買う感覚」を学び、そういうものにお金を使っていくと、劇的に人生が充実をしました。いまでは毎日が幸せだと思えるほど充実をしています。

貯金だけをしても、幸せになることはない

もしかするといまは、当時よりも貯金(流動性貯金)はできていないかもしれません。でも、そのぶんお金には変えられないものを得ることができ、貯金をしていたころの自分とは比べ物にならないほど、人生の充実感を手にしています。

貯金だけをしても、幸せになることはありません。過度な貯金をしても、あなたの人生が充実することはないのです。だからこそ、貯金をする際には目安を決め、それ以外の貯金は過度な貯金と捉え、使うか運用するかでお金をまわしていきましょう。

貯金のうち、計画性貯金や幸せ還元貯金については、目的や目標金額があるため過度な貯金になることはありません。自分で決めた金額を自分で決めた期限まで、コツコツと貯金をしていくだけです。

ただ、流動性貯金については、その性質上、どれだけでも貯金をすることが可能となってしまいます。「何かあったときのため」という抽象的な目的では、どれだけでも備えておくことができてしまうからです。そこで、流動性貯金には目安金額が必要です。

※1:流動性貯金…いつでも引き出せる、何かあったときのための貯金

※2:計画性貯金…将来必要なお金のために計画的に積み立てていく貯金

※3:幸せ還元貯金…自分自身や家族などの自身のまわりの人を幸せにするための貯金

貯金は、いくらに設定しておくべきか?

では、いくらに設定しておけばいいのでしょうか? 100万円? 200万円?

ここで考えたいことは、キリのいい数字ではなく「必要な数字」です。何か起こったときの最悪のケースを想定したうえで、目安を決めておけば安心です。

流動性貯金は、多すぎてもよくないもっとも大きなリスクとして挙げられるのが「病気」や「事故」で働けなくなることです。ただ、これは保険で保証をしておけばいいので、何かあったときとは考えず、別のケースで考えます。

すると、あり得るケースとしては、勤めている会社をクビになったり、会社が倒産をしたり、精神的な理由で働けなくなったりしたときではないでしょうか。こうなったときも補償が下りたり、すぐに手を打てば次の道が見つかったりする可能性が高いため、流動性貯金の目安は、だいたい「月収の3か月分」くらいあれば十分です。家族が多い場合や固定費が多い場合にはもう少し増やしてもいいかもしれませんが、それでも「6か月」まででしょう。それ以上は流動性貯金としては、多すぎます。

貯金をしておけば、一時的には安心かもしれません。何かあってもそのお金を頼ればいいですから。一方で、その貯金をしているお金は使うことができないという事実もあります。せっかくがんばって稼いだお金を使っていかないと、いつまで経ってもいま幸せになることはできません。貯金は増えても、幸せが増えることはないのです。

そのため、貯金額を増やすことを目的にするのではなく、貯金できる金額を増やしていけるように収入を高める工夫をしたり、運用をしたりしていきましょう。そうすることで幸せ還元貯金を貯めていったり、幸せ還元貯金を取り崩して幸せを買ったりすることで、幸せを感じ、あなたの人生がより充実していくことでしょう。

安江 一勢

税理士

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