アップルのAIは「Apple Intelligence」か。 オンデバイスとクラウド処理を使い分け?

Image:T. Schneider/Shutterstock.com

ここ最近の生成AIブームに後れを取るアップルは、まもなく開催する年次開発者会議WWDC(日本時間11日午前2時~)にて、iOS 18など次期システムソフトウェアでのAI機能を発表すると見られている。同社はそれらにAIならぬ「Apple Intelligence」というブランド名を冠すると、米Bloombergが報じている。

アップルの内部情報に精通するMark Gurman記者は、このApple IntelligenceがiOS、iPadOSおよびmacOSの新バージョンに搭載されると主張。新たなAI機能はWWDC基調講演の約半分を占めるとともに、ChatGPTで知られるOpenAIとの提携も明かす予定とのことだ。

Apple Intelligenceは画像や動画の生成のような尖った技術には重点を置かず、「ユーザーの日常生活を理想的に楽にする」方法で「できるだけ多くのアプリに技術を統合する」ものだという。

その具体的な新機能は、複数の情報源から何度か伝えられてきた。AIによる通知やSafariに表示したウェブページの要約、電子メールやメッセージに対する返信の自動的な作成、メールの削除や写真の編集を音声で個別のアプリに指示できる、といったところだ。

これらはまず、アップル純正アプリ向けに提供。いずれはサードパーティ製アプリにも拡大し、複数のコマンドを繋げて1つのリクエストにできる予定だが、2025年以降になりそうだとGurman氏は述べている。

ほか、新たに予想される「Apple Intelligence」の機能は次の通りだ。

  • アップル純正のアプリ開発環境XcodeにもAI機能が導入。マイクロソフトのGitHub Copilotのようにコードを自動的に完成させる。ただし一般公開は2025年以降
  • AIがカスタム絵文字を作成。入力中のフレーズや単語に基づき、その場で絵文字を生成する
  • ボイスメモに、録音内容を自動的に書き起こす機能が追加
  • 写真アプリの編集機能にもAI搭載。簡単に画像を強調したり、フレームから人物や物体を削除できる

注目すべきは、Apple Intelligenceがタスクに応じてオンデバイス(端末内で処理を完結)とクラウドサーバーを使い分けるとの予想だ。手元のタスクの高度差に応じて、どちらかを切り替えるアルゴリズムも導入。また、特定の機能ではOpenAIの技術も使うとのことだ。

これまでアップルはプライバシー保護に重きを置くとして、データ処理はiPhone内部で完結し、デバイス内に保存する方針を打ち出してきた。そのためAIをクラウド依存にすることは矛盾をはらみかねないが、同社は懸念を封じる予防措置を用意しているという。

まず第1に、データセンターで使うチップのセキュリティ機能などに焦点を当てる。アップルは約3年前から自社製チップによるクラウドAI処理を計画していたが、AIブームを受けて前倒しを迫られたと報じられたこともあった。

第2に、顧客データに基づいたユーザープロファイルを作成せず、ユーザーに対して個人情報が保護され、他社に販売したり読まれることがないと説明するレポートを作成すると伝えている。

アップルとOpenAIは「iOS 18にChatGPT搭載」で合意したとみられている。では、WWDC基調講演にOpenAIのサム・アルトマンCEOは登壇するのか?

最新のニュースレターでGurman氏は「登場しない」と予想している。アルトマン氏の登場は「アップルが生成AIでいかに後れを取っているか」「OpenAI との提携がいかに必要であるか」を強調してしまうからだという。

アップルとしても、OpenAIとの提携は「その場しのぎ」に過ぎず、少しでも早く依存を断ち切りたいのかもしれない。

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