浩歌、『光る君へ』朱仁聡役で放つ只者ではない雰囲気 為時との駆け引きが見どころに

吉高由里子主演のNHK大河ドラマ『光る君へ』。公式サイト内には出演者の撮影現場からのコメントが聞けるキャストインタビュー動画「君かたり」が公開されている。第23回「雪の舞うころ」の放送後には、周明役の松下洸平、朱仁聡役の浩歌が登場した。

宋の人々は、宋の言葉を話せる為時を歓迎していたが、彼らの真意を掴むのは難しい。第22回で初登場を果たした朱(浩歌)は、厳しい顔つきを崩さぬまま、宋の言葉で「あなたはどなたですか?」と尋ねた。その顔つきは、為時(岸谷五朗)がどのような態度で自分たちと向き合おうとする者なのかを見極めようとするものだった。その後、朱は為時を笑顔で出迎え、宴の席を設けるなど友好的に振る舞う。だが、朝廷に品物を献上したいと言い出したり、為時が体調を崩すと即座に見習い医師である周明(松下洸平)を呼びつけ、治療させたりと、朱の行動力には抜け目なさを感じる。

朱を演じている浩歌は、朱仁聡は非常に洞察力がある人物だとコメントしている。インタビューにて浩歌は、朱は見返りに朝廷へ品物を献上したいという要求には強い意志を持っていること、為時がぬれぎぬを着せられた朱を解放した際には感謝の礼を伝えつつも良い機会だと捉えていたことを明かしている。強気な姿勢を見せたり、情を持って伝えたりといった朱のやりとりについて、浩歌は「為時と朱の間で、ときには手綱を緩めたり、ときには手綱を引いたり、ときには手綱を振るわせたりという緩急つけたといいますか、そういう駆け引きを繰り広げているという部分がありますね」と話した。浩歌は落ち着いた声色で「朱というのは非常に策略家というか、人心掌握術にたけているというのか、そういうものがありますよね」とも語っている。

“正解”というわけではないが、浩歌のインタビューを通じて、浩歌の演技から漂っていた朱が単なる商人ではない、只者ではない雰囲気に合点がいく。為時と初めて言葉を交わす場面での、厳しい顔つきから笑顔になるまでの心情も明かされた。

「この人(為時)は中国語を話せる。そこで朱はスイッチ切り替わりましたね。これは利用価値はあるなという。なんとか目的達成のために利用できる、非常に大事なキーマンとなる、そういう存在だなというふうには、朱は思ったと思うんですよね」

朱が道長(柄本佑)とまひろ(吉高由里子)が深い関係にあることを察した周明と交わしたやりとりや浩歌のインタビューを聞く限り、もしかすると朱は、光雅(玉置孝匡)が推測した通り、朝廷をも取り込む企みを持った人物なのかもしれない。朱を始め、宋の人々が越前国を脅かすのではないかという疑念が優位に立つが、朱を演じる浩歌のどっしり構えた佇まいや相手を見る際のまっすぐなまなざしには筋の通った人物という印象もうかがえる。そのことで、為時に対する友好的な態度のすべてが嘘のようには見えず、ますます謎が深まるばかりだ。浩歌がまとうミステリアスな様相が宋人と越前国との間に走る緊張感を際立たせているように思う。越前編では、朱と為時の駆け引きも見どころの一つとなるだろう。

(文=片山香帆)

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