『鬼滅の刃』“アメとムチ”な甘露寺稽古 不死川との一騎打ちにみる炭治郎の“成長”

柱稽古もいよいよラストスパートへ。TVアニメ『鬼滅の刃』柱稽古編第5話「鬼を喰ってまで」では、無一郎の稽古を突破した炭治郎が、甘露寺、伊黒、不死川の試練へと挑む。

これまでは丸々1話を使って、柱ひとりに焦点を当ててきたが、第5話では大きくペースアップ。甘露寺の稽古に至っては、ほぼ原作通りの尺となっており、甘露寺のパートを楽しみにしていたファンにとっては少々物足りなさもある回となってしまった。

甘露寺の稽古場へと向かった炭治郎。甘露寺が「炭治郎くん、あ~んして」と炭治郎にはちみつとバターがたっぷりと塗られたパンケーキを食べさせてあげるシーンは接写で描かれており、炭治郎と同じくドキッとした視聴者も多かったはず。しかし、これで終わるわけもなく……甘露寺の稽古はある意味一番苛酷なものだった。かわいらしいレオタードを身に着けさせられた炭治郎と隊士たちは、音楽に合わせてジャンプしたり、回転したり、まるでバレエのような柔軟に挑戦。甘露寺いわく、技のキレの向上を目的としたものらしいが、甘露寺の力技に炭治郎の叫び声がこだましていた。

続いては伊黒の稽古場へ。しかし、いつも以上に不機嫌な伊黒は「俺は甘露寺のように甘くはないからな」と言い放つ。それもそのはず、伊黒と甘露寺は文通を交わしている仲であり、(おそらく)両思いだからだ。『鬼滅の刃 公式ファンブック 鬼殺隊見聞録』では「蜜璃には一目惚れしました。かわいすぎて度肝を抜かれたそうです」と書かれていたり、「刀鍛冶の里編」第10話でも伊黒が甘露寺に靴下をプレゼントするシーンが描かれたりと、2人の関係性を匂わせる伏線はいくつもあった。

伊黒の稽古は想像以上の恐ろしいものだった。隊士たちが縛り付けられた障害物を避けながら、太刀を振るわなければならない。少しでも気が緩んでしまったら、縛り付けられている隊士に攻撃が当たりかねないため、炭治郎は意識を集中するが、わずかに聞こえる隊士の苦し紛れの声に精神が抉られる。

稽古は4日続き、ようやく正確な太刀筋で打ち込めるようになってきた炭治郎。ここまで来ると伊黒とは互角の勝負を繰り広げており、着実に炭治郎が力をつけていることがわかる。最後まで嫌われていた炭治郎だったが、これまででもっとも実践で応用が利く訓練だったことは間違いない。

次の稽古場である不死川邸へ向かおうとしていた炭治郎のもとにやってきた善逸だが、何やら様子がおかしい。善逸は不死川の訓練のあまりの苛酷さから逃げ出してきたらしい。不死川の「調子乗んなよ。俺はテメェを認めてねえからな」という挑発に対して、炭治郎が「全然大丈夫です! 俺もあなたを認めてないので! 禰󠄀豆子を刺したんで!」とあっけらかんと返していたのが良かった。

本当の試練はこれからだった。不死川の訓練は単純な打ち込み稽古。しかし、反吐をぶちまけて失神するまで休憩なしというあまりにも苛酷すぎる訓練だ。訓練が終わり不死川と玄弥が廊下で会話をするシーンが描かれたが、弟として認めてくれない不死川に対して、玄弥が「鬼を喰ってまで戦ってきた」と語ると、不死川が血相を変えて襲いかかる。間一髪のところで炭治郎が玄弥を救出し難を逃れるが、炭治郎と不死川の一騎打ちが始まってしまう。炭治郎は玄弥を殺そうとする不死川に対して、圧倒的な力に屈することなく「玄弥がいなきゃ上弦に勝てなかった」と玄弥を養護していたのが仲間思いな炭治郎らしい。

一騎打ちは不死川が圧倒的な力でねじ伏せるかと思いきや、炭治郎が思いのほか対等に渡り合うことができていたのには驚かされたが、これもこれまでの稽古の成果が表れていると言えそうだ。結局、夕方まで乱闘が続き、不死川との訓練は中止、さらに接近禁止が命じられた。炭治郎の願いは不死川兄弟に仲良くなってもらうこと。今回は残念ながらお預けとなってしまったが、炭治郎の思いが伝わる日は必ず来るはずだ。

次回はいよいよ岩柱・悲鳴嶼が登場。これまで登場シーンが少なかっただけに、炭治郎との絡みも楽しみだ。
(文=川崎龍也)

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